13 凛は助けを待つ

確か、私は大きな貝を見つけてそれを取ろうとしたらその貝が動いてどこかに行ってしまってその貝を追って泳いでたらいつの間にか結界の外に出ちゃってたの!

それで、戻らないとって思ったら上から網が降ってきてその網に捕まってしまったの。

それと同時に急に眠気が襲って眠ってしまった。

目が閉じてしまう瞬間、私は見てしまった。私を捕えた相手の顔を。

その相手とは神様だったの。

でも、なんか違う。同じ顔をしていたけどなんか雰囲気が違った。一体どういう事なんだろう?

もうどれぐらいあれから経っているんだろう?

確かあのあとどこか暗くてジメジメしたところにいた気がする。そしてそこで一晩過ごしたはず。だから少なくとも1日は過ぎてると思う。

で、そのあと目が覚めたらここに居た。

ここは一体どこなんだろう?

辺りを見渡してみたけどそこには森があるだけで、人はいないし動物もいない。

この島はどうやら無人島みたい。星ノ島より小さい島でここからでも島の全体が見渡せるくらい小さい。

こんな島が日本にあるのだろうか。でも、日本は島国だし日本かな?建物があるわけじゃないからどうなのかは分からない。

それにしても何が起きているんだろう。

私はどうして攫われたのだろう。目的は?一体誰が?

人魚と間違われて攫われたのだとしたら、私が今生きているのはおかしいよね。

人魚を攫う目的は十中八九、不老不死が目的だろう。自分が不老不死になるのが目的だとしても、人魚の肉を売るのが目的だとしても生かしていく理由がない。大抵、すぐ殺されてしまう。でも、私はもう2日は経っているはずなのに殺されていない。だとしたら、人魚と間違われて攫われた可能性は低い。

攫われた後の扱いも悪くなかった。独房のようなところに入れられはしたがお風呂にも入れたし、ご飯も食べられた。まあ普通の扱いだった。

常に水につかれるようにもしてくれた。

本当に何が目的なのだろうか。ひどいわけでも特別いいわけでもない扱い。

相手にとって私はそこそこ大切だったと言うわけですわね。最低限はちゃんと扱う必要があったと言う事。

それが意味するものとはなんだろうか?


ここは無人島で誰もいないし、ここには何もない。

私は砂浜の上に寝ていたの。ちゃんと水がかかるような位置に寝かされていた。

今はその波が掛かる位置に座ってるの。

私は一体どうしてここに連れて来られていつまでここに居ることになるのだろうか。

食べるものがないのだ。

そしてやることもなくて死ぬほど暇なのだ。

だからまあ考え事でもして暇を潰しているのだ。


これはなんか嫌な予感がする。

ある可能性に気づいてしまったの。

もしかしたら、私は餌なんじゃないかと。誰かをおびき寄せる餌。

だとしたらこの餌を垂らしているのは私を攫ったあの天海と同じ顔の男。

その男が狙っている獲物は誰だろうか。

可能性があるとすれば……。

神様、天海様だろうか。

だとしたら、神様をおびき寄せて何を企んでいるんだろう。

何がしたいのだろう?

あの神様と同じ顔をした奴は一体何者なのでしょう。

ん?私が、神様をおびき寄せる餌なのだとしたらここに神様が助けにくるってことだろうか。

だったら、私は待っていればいい。神様が来るのを。神様の事だからすぐに来てくれるだろう。

なら、安心だよね!


「凛。無事か」

やっぱり神様はすぐに来てくれた。私の後ろにいつの間にか瞬間移動で現れたの。そして、そうぶっきらぼうに言った。ジーパンのポケットに両手を突っ込んでそう私の事を見下ろして。後ろにいるから分からないけどきっとそうだろうな。

見えなくても簡単に想像出来ちゃう。

「うん。大丈夫!」

そう言って私は明るく笑って後ろを振り向いた。なんか涙が出そう。助けに来てくれて嬉しい。絶対来てくれるって信じてたんだから。

「なら、帰るぞ」

やっぱり神様は両手をジーパンのポケットに突っこんでいた。なんか神様焦ってる?気のせいかな?こんなに早く帰ろうとするなんて。どうしたんだろう。

「うん!」

私は溢れてしまった涙を右手で拭いながらそう言って笑った。

「いや、ちょっと待った。これ閉じ込められたな」

神様は何もない空間に手を当てそう言った。私には何も見えないけど神様には何か見えているみたい。

片手はポケットに手を突っ込んだまま右手で何もない空間に手を当てるとそこに透明な壁でもあるみたいに何かに触れていた。

「どうかしたの?神様」

神様が何をしているのか分からなくて気になってそう聞いた。

「あーどうやら悪魔に結界を張らたらしい。だから、この島から出られないな」

そう軽い調子で、「瓶のふたが開かなくなった」みたいに言った。なんかすごく大変なことのはずなのに。神様がそんな軽い調子で言うものだから、事の重大さが伝わってこない。

「……っえー!どうしよう?大丈夫なんですか!」

私は一瞬理解出来なかった。でも、そのあと理解した。理解してしまった。これが凄く大変なことだよね。たぶん。そうなんだよね。

「まあ。多分、こっちは大丈夫だが。問題なのは星ノ島だろうな」

またもあっさり神様はそう言った。

「えっ?星ノ島が問題ってどういう事?」

またも驚いた。知らないことだらけなんだけど、どういうこと?何が起こっているの?

「俺はこの無人島におびき寄せられて閉じ込められた。ってことは星ノ島が狙われている可能性が高い」

神様は私の隣の砂浜に座ってそう言った。海の果てを眺めながら。

「どうして星ノ島を狙うんですか?」

私も海の果て、地平線を眺めながらそう聞いた。

「まだ分からん」

「そうなんですね」

「あぁ俺たちの敵はおそらく悪魔だ」

「悪魔ですか。どうして悪魔が私たちを狙うんですか?」

「それも、まだ分からん。だが、最近悪魔は妖怪を狙っているという噂がある。だから星ノ島に目を付けたのかもな。星ノ島には妖怪もたくさん住んでいる。星ノ島なら一気にいろんな妖怪を捕まえられる。妖怪だけでなくいろんな珍しい種族も住んでいる。だが、どこからその情報を仕入れたんだろうな?外には漏れないよう情報操作をしていたはずだがな」

神様は顎に手を当て考え事をしている。

途中から話していて何か気づいたことがあるみたい。疑問を見つけたってことかな。

私にはそういう事はよく分からない。外に漏れないよう情報操作をしていたなんて初めて知った。

神様そういう事もするんだ。ちょっと意外。ずっと寝ているし、何もしていないと思ってた。

「どこからか漏れたってこと?」

「たぶんな」

「星ノ島が襲われる可能性があるってことだよね?」

「あぁ」

「襲われたらどうするの?」

「そうなったらどうにかするしかねえだろ」

「じゃあ、襲われなかったら?私たちこのままなの。ご飯とかどうするの?」

「俺は何も食べなくても大丈夫だ」

「私は大丈夫じゃないんだけど!」

「我慢しろ」

そう言うと神様は水の届かない所まで移動して横になって眠ってしまった。

のんきすぎない。大変なことなんじゃないの。それなのに寝ちゃうなんて。どういう事?本当に大丈夫なの?

神様の横顔を睨みつけてそう心の中で愚痴ってみたけど神様は変わらず腕を組んで横になって眠っている。

聞こえているはずなんだけどね。

まぁ私は何も出来ないし神様は寝ちゃってるし。

はぁどうしよう。

仕方ないから私も寝ようかな。でも、全然眠たくないんだよねぇ。

この島からいつになったら出られるんだろう?

閉じ込められちゃったみたいだし。

まあいざとなったら神様が何とかしてくれるだろうし。大丈夫だよね。






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