12 3日目 凛を見つける
そして、3日目の朝を迎えたのですわ。
みんなで朝ごはんを食べた後、空たちはそれぞれ行きたい場所に出掛けて行きましたわ。
さやこさんは昨日に引き続きまさむねさんに日本の家庭料理を教えているようですわ。海星は獣人村に行って子供たちと遊んでいるようですわ。夏海人さんは海岸で釣りをしていますわね。空は吸血鬼の館で本を読んでいますわ。吸血鬼の館にはたくさんの本があって図書館のようになっているみたいですわね。
それでわたくしはそんなみんなのことを見ているのですわ。大広間の窓から外を眺めながら。
タカの目を借りるように。超能力で言うと遠隔透視、千里眼とかかしら。
「おい。天翔。凛の居場所が分かった」
わたくしが1人空たちを見て楽しんでいたら後ろから急に天海に話しかけられたのですわ。いつの間にわたくしの後ろに居たのでしょうか。どこからか瞬間移動で現れたのかしら。
「どこにいたの?」
天海はわたくしの隣に胡坐を組んで座ったのですわ。わたくしは天海の方を見る事なく窓の外を眺めたままそう聞いたんですわ。
「この近くの無人島にいるらしい。昨日、この近くの島も調べた。だけど、いなかった。なのに今日、急に凛の気配が現れた。明らかにおかしい。罠の可能性が高い」
わたくしと同じで天海も窓の外を眺めて珍しく真剣な顔でそう言いましたわ。2人の間には重苦しい雰囲気が漂っていますわね。
「そうですわね。この島から天海を離れさせたいのかもしれないわね。どうするの?」
チラッと天海の顔を盗み見てそう聞いたのですわ。その顔はとても真剣で少し怖いくらいでしたわ。いつもの退屈そうでめんどくさそうな顔はそこにはなかったのですわ。
「俺は凛を助けに行く。凛を助けられるのは俺しかいない。この島から誰も出られなくなっているんだ。だが、俺だけは島の外に出られるらしい。さっき調べてきた」
「それって確実にあなたを誘っているじゃない。罠に決まっているわ」
「だが、行かないわけにはいかない。ほっておけば凛がどんな目にあわされるのか分からない」
「そうね」
「それで、お前に頼みがある」
「何?」
「俺がいない間、この島の事を頼む。必ずこの島で何か起こる」
「分かったわ。で、いつ行くの?」
「今から行くつもりだ。早い方がいいだろう」
「誰にも伝えずに行くつもり?」
「あぁ」
「そうなの。気を付けて行ってきなさいよ」
「あぁ。じゃあ、あとの事は頼んだ」
そう言うと天海は消えた。きっと瞬間移動でその凛ちゃんが居ると言う無人島に行ったんでしょう。
凛ちゃんが見つかったのは凄く嬉しい。でも、さっきの天海の表情が気になる。なんだか思いつめているような気がしたのですわ。
もしかしたら、天海は予知夢を見たのかもしれませんわ。一体どんな予知夢だったのだろうか。それとも、ただのわたくしの考えすぎでしょうか。だったらいいのですが。
わたくしは神憑きとなってしまって予知夢を見ることはなくなってしまったのですが、天海は予知夢を見ることが出来るはずです。自分の身に関する危機やこの島の危機になると予知夢を見ることがあるのですわ。だからもし予知夢を見たのだとしたら天海自身かこの星ノ島に危険が迫っていることになりますわ。
でも、なんでそれをわたくしにも言ってくれなかったのでしょうか?言えない事情があったということなのでしょうか。
まあ、わたくしがやることは1つだけなのですから考えても仕方ないでしわよね。
予知夢。悪魔がこの島に現れるとかでしょうか。その可能性は高いですが、そのあとどうなるのかが問題ですわよね。
天海は相変わらず勝手な人なのですね。はぁ。でも、これから一体どうなるのでしょう。
心配だけど、腹はくくれましたわ。もう覚悟を決めたのですわ。
「天翔さん。神様がどこにいるか知りませんか?」
大広間の扉が開き、まさむねさんが入って来たのですわ。そして、心配そうに聞いてきたのですわ。どうやら天海の姿が見えないから探していたみたいね。
「天海ならここにはいないわよ。……凛ちゃんを助けに行ったわ」
結局、わたくしはまさむねさんには話すことにしたのですわ。言わなくてもいつかはバレてしまうものですし、天海が居ないことで心配させてしまうのなら言ってしまったほうがいいと思ったのですわ。
「凛が居る場所が分かったんですか?」
まさむねさんはわたくしの隣に正座で座ってそう聞きましたわ。静かな声でそう淡々と聞いてきたのですわ。
「えぇ。ついさっき」
わたくしはまさむねさんの事を横目で見てそう返したのですわ。
「そうですか」
まさむねさんは真っ直ぐ窓の外を見つめてそう言うと、大広間を出て行きましたわ。静かに立ち上がりそのまま出ていたわ。
まさむねさんは何も聞いてはきませんでしたわね。
きっと天海のことを理解しているから何も聞かなくても分かったのでしょう。
もしかしたら他の住人もまさむねさんと同じように理解してくれて騒ぎになったりパニックになったりはしないかもしれませんわね。
でも、どうなのだろうか?本当に大丈夫なのだろうか。わたくしはまだこの島に来て日が浅い。だから、まだ信じられないのですわ。
天海がこの島のみんなに話すという選択肢をしなかった。
それにどんな意味があるのか分かりませんが、わたくしが独断で決めることは出来ませんわ。
ただ、時間がなかっただけなのか忘れていただけなのか分かりませんが。まあどちらの可能性もありますわね。
天海は帰って来られるのでしょうか?
天海が凛ちゃんを助けに行くことは罠の可能性が高い。
罠だとすれば簡単にこの島に戻ってこれるとは思えないのですわ。敵が悪魔だとすれば一体どうするだろうか。凛ちゃんがいるのは無人島だと言っていたからその無人島から出られなくするとかでしょうか。
天海がこの島に居ないと言うのはとても不安だ。この島の全員をわたくし1人で守り切れるでしょうか。神憑きとなった今のわたくしに。
心配でたまらないのですわ。前のわたくしなら可能だったかもしれませんが。
もしかしたら、空の力を借りなくてはいけなくなるかもしれないですわ。でも、出来ればそれはしたくないのですわ。わたくしの力を使ってしまえば存在が神に近くなってしまうのですわ。そうすれば今まで以上に異質な存在となってしまって今まで以上に周りから浮いてしまうことになるのですわ。それでは空に申し訳が立たないのですわ。だから、出来ればわたくし1人でこの島の全員を守って見せますわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます