8 宝探しのこと

大広間に戻るとなにやら夏海人さんと海星がこそこそと楽しそうに話し合っていたのですわ。


「海星。明日、宝探しに行かないか」

「宝探し?なにそれ面白そう。絶対行く。で、宝探しって?」

「それが神様が気まぐれで宝箱をこの島のどこかに隠したらしいんだ」

「へえーあの神様がねぇ」

こそこそと身を寄せ合って話していた海星が天海のことを横目で見て意外そうにそう言ったのですわ。

「あぁ。なんでも、あの有名な海賊の漫画を呼んで宝探しをしたくなって宝箱を隠したんだけど忘れて放置されているらしい」

「はぁ。自分で隠して自分で探すつもりだったのか?」

「まあそういうことなんだろう。それでその宝箱を隠した場所を示した暗号があるらしいんだ」

「その暗号って?」

「さあ。まだ分からない。明日はその暗号のことから調べよう」

「それなら今、聞いたらいいじゃない?この島の全員が来ているんでしょ?」

「それじゃつまらないだろう。じっくり楽しまないとな」

「そうだね。ゆっくり楽しもう。いつまでこの島に居ることになるか分からないからね」


そう楽しそうに話すのがわたくしには聞こえてきましたわ。

そうこうしているうちにパーティーはお開きになり、島のみんなは帰って行ったのですわ。


空たちはこの大広間で布団を敷いて寝たのですわ。

わたくしは寝る必要はないので窓の外から島を眺めていることにしたのですわ。

この島の結界を見つめていたら不安でたまらなくなってしまったのですわ。後ろでは空たちの規則正しい寝息が聞こえてきてそれがとても日常的でわたくしを安心させてくれるのですが、それがより一層不安にさせもするのですわ。わたくしの愛しいこの人たちをわたくしは失いたくない。傷つけたくない。絶対に。

だから不安になってしまうのだ。

「心配するな。ここは俺の島だなんだ。勝手な真似をさせたりはしない」

いつの間にかわたくしの近くに天海が来ていてわたくしにそう話しかけてきたのですわ。ちょっとそれはカッコイイ。なんかずるいですわ。

それだけ言うと天海はどこかに消えてしまいましたわ。

おかげで少しは安心することが出来たのですわ。わたくしは睡眠を必要としませんがせっかく空たちはわたくしの分まで布団を敷いてくれていたので少し布団の上で横になることにしたのですわ。

横に並ぶ空たちを見ると空たちはいつもと何も変わらず幸せそうに寝息を立てて眠っていたのですわ。本当に何も変わらない。こんな状態だと言うのに。何もわからず誰かに操られてこの島にやってきて、みんな気絶してしまった。空たちからしてみれば目が覚めたら見知らぬ場所にいたわけで。その上この島には信じられないものがたくさんいたはずだ。

それをあっさりと受け入れて、その上彼らは楽しんでいる。その柔軟性?順応力は凄すぎる。子供ならまだ分かるけど大の大人のさやこさんも夏海人さんもなのだから。尊敬を通り越して呆れてしまうほどですわね。

でも、やっぱり凄いですわ。この人たちなら何があっても大丈夫な気もいたしますわね。

こうしてみんなと一緒に川の字で寝ていると本当に家族の一員になったみたいでとても嬉しいですわ。

わたくしは決意しましたわ。必ずわたくしがこの愛おしい家族を守ると。この身は消滅しようとも、必ず。


そうしてやっとこの島に来て1日目が終わったのですわ。実にいろんなことがありましたわ。

大変なこともありましたが、でも久しぶりに天海に会えたのはとても嬉しかったですわ

。彼は天界でわたくしの弟のような兄のような存在でしたので。それが急に下界に降りてしまって。それで会えなくなった。天海がどこに行ったのか誰も知らなかったのです。まあそれに探すのは違う気がしたのですわ。だって天海が自分で望んで下界に行ったのですから。だから、探すべきではない。そう思ったの。でも、ずっと気になってた。どうしているんだろうと。神なのだから心配することはないと分かっていたけど、わたくしは下界に行ったことがなかったのですわ。だから知りたいと思ってわたくしも下界に来たのですわ。

本当に天海に再び会うことが出来て嬉しかった。安心した。そして、自分の島を持っていると知ってとても天海らしいなと思ったわ。でも、意外でもあったかな。こんなに島の人たちと仲が良く慕われているとは思ってもみなかった。自分の島にするぐらいの力があるのは知っていたしそれぐらい大きな事をやるとは思っていたけど想像以上でしたわ。

本当に元気そうで良かった。

一体明日はどんな一日になるのかしら。わたくしも今を楽しむことにいたしましょう。空たちのように。

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