9 2日目 空と天翔
外がだんだんと明るくなってきたのでわたくしは布団から出てベランダの方に向かって窓の外を見つめていました。
わたくしは一番窓側に寝ていてその隣は空が、その隣がさやこさん、夏海人さん、海星と川の字に寝ていたのですわ。
そうしてしばらく窓の外をボーっと眺めていたら空が起きてきましたわ。
「おはよう。天翔さん」
そう言ってわたくしの隣に立って大きく息を吸って猫のように気持ちよさそうに腕を天井に向かって伸ばしていますわ。
「おはよう。空」
そう言ってわたくしは空に向かって優しく笑いましたわ。
すぐにさやこさんや夏海人さんも起きましたわ。
起きるとみんなで布団と畳んで布団を片付けて机を2つ出して並べたのですわ。その間、さやこさんはキッチンに向かいまさむねさんを手伝いに行きましたわ。
わたくしと空はまさむねさんに頼まれて天海を起こしに行きましたわ。どうやら、天海は寝るんですわね。神に睡眠は必要ないはずですが。
それで起こしに行った後、みんなで揃って朝ごはんを食べたのですわ。
そのあとはそれぞれやりたいことをやりに向かっていたのですわ。
わたくしは空と一緒に凛ちゃんの昨日の足取りを追うことにしたのですわ。わたくしはいつでも空と一緒ですから。
そのあとわたくしと空は凛ちゃんの足取りを追っていろんな人に聞いて回ったのですわ。
「昨日凛ちゃんを見ませんでしたか?」
と、出会った人に聞いて回ったのですわ。
その結果、昨日の凛ちゃんの一日の行動が分かったのですわ。
凛ちゃんは海の近くのマンションに一人で暮らしていてそのマンションを出て行くのを同じマンションの住人に目撃されたのが一番最初でしたわ。そして、そのあとは海に行くの見た人がいて、海の中で貝を獲っているところを見たと言う人がいたのですわ。でも、そのあと島での目撃者はいなかったのですわ。
誰にも目撃されていないと言うことは海からあがっていないと言う事なのでしょうか?
「ってことで、凛ちゃんの家に行ってみることにしませんか?何か手がかりがあるかもしれません」
隣を歩く空に向かってそう提案したのですわ。
「そうですね。でも、どうやって入るんですか?」
「事情を話して入れてもらうことにしましょう」
「凛ちゃんが居なくなったこと言っちゃって大丈夫なんですか」
「そうねぇ。じゃあ、こうしましょう!凛ちゃんが忘れ物をして代わりに取りに来たんだって言えばいいのよ!そしたら凛ちゃんが行方不明だって言って心配させることはないわ」
「そうですね。それがいいと思います。まだ何も分かっていないのに不確実な事を言って心配させるのは良くないですもんね。でも、言ってみんなで探した方が早いんじゃないですか」
やっぱり空は優しい子ね。だからわたくしは空を好きになったのよね。この家族はみんな優しいもの。どこまでも優しくて慈悲深い。
「まぁそれは天海に任せましょう。とりあえず、本当に凛ちゃんが行方不明なのか確かめてからじゃないかしら」
「それもそうですね。では行きましょうか」
「そうね」
そう言うとわたくしたちは凛の家に向かったのですわ。
「ポンポーン」
とりあえず、わたくしたちは凛ちゃんの家のインターホンを鳴らしたのですわ。凛ちゃんの住んでいるマンションは2階建てのいちごミルクの色の可愛らしいところでしたわ。
しばらく待ってみましたが案の定、誰も出てくることはありませんでしたわ。だから、次はこのマンションの管理人が住んでいる部屋に行って凛ちゃんの家を空けてくれるよう頼みに行くことにしたのですわ。
そして、凛ちゃんが忘れ物をしたから代わりに取りに来たと言って開けてもらったのですわ。
管理人さんは30代ぐらいの人魚の優しそうな女の人でそう話すと凛ちゃんの家を空けてくれましたわ。
そして部屋に入って部屋を見渡してみましたが特に手がかりになるようなものはありませんでしたわ。でも、昨日から帰ってないことは確かなようですわ。
何も手がかりを掴めないままわたくしと空は凛ちゃんの家を後にしましたわ。
「これからどうしますか?」
凛ちゃんの家を出た後、わたくしたちはどこに向かうでもなく適当に歩いていましたわ。そしたら、空がそうわたくしに向かって聞いてきたのですわ。
「うーん。どうしよっか。そう言えば空たちが小舟でこの島に向かっていた時、誰かがわたくしたちの事を見ている人がいたの。もしかしたら、それって凛ちゃんだったのかもしれませんわ。それに、その時誰かとテレパスで会話しているのが聞こえたの。その相手はもしかしたら天海かもしれない。だから、天海に話を聞きに行かない?最後に凛ちゃんと会話したのは天海かもしれないわ」
ふとあの時の事を思い出したのですわ。
「その可能性はあるかもしれませんね。では、神様のところに行きましょう」
そうしてわたくしたちの向かう場所が無事決定したのですわ。
天海はきっとまた家の大広間で寝ているのでしょう。だから、天海の家の大広間に向かって歩き出しましたわ。
「天海、ちょっと話があるのだけど」
わたくしは大広間の扉を開けそう言ったのですわ。
「はぁ。まぁかまわんが。ノックをしろ」
案の定、天海は寝ていましたわね。いや、横になっていただけかしら。めんどくさそうに起き上がってこちらを向いて片膝を立てて座ったのですわ。
「どうせノックしても返事しないでしょ。だったらする意味ないじゃない」
そう文句を言いながらわたくしは天海の前に座ったのですわ。わたくしに続いてわたくしの隣に空が座りましたわ。
「それで、何なんだ?」
天海は少しイライラしたようにそう聞いてきたのですわ。
「凛ちゃんの昨日の足取りを辿ってみたのですわ。それで、昨日最後に凛ちゃんと会話を交わしたのが天海かもしれないの。昨日、凛ちゃんと何を話したのか覚えてる?」
「昨日、お前たちがこの島に侵入してきたときの事か?」
「えぇ。多分、そうですわ」
「あぁ。あのときか。あのときは凛がお前らの事を見つけて俺に連絡してきたんだ。で、お前らの様子を監視するように頼んで凛はお前らの事をずっと監視していたんだ。そのあと海岸に着いたあとはまさむねに任せて凛には帰るように言ったんだ。そのあとの事は俺は知らない」
「もしかしたら、そのあとに何かあったのかもしれません。海に行ったあと帰って来たのを誰も見ていないんです」
空は心配そうな顔で天海に向かってそう言ったのですわ。
「そうか。だが、どうやってこの結界の中に入ったんだ?悪魔がこの結界を通過するのは不可能なはずだ」
「空たちがこの島に入ったことで結界に亀裂でも入ったのかしら?それとも、凛ちゃんを結界の外におびき寄せて捕まえたとかかしら?」
わたくしたちは可能性のある事を言ってみましたわ。この大きさの結界をすべて管理して維持するのは大変だろう。どこかに死角が出来ることもあるでしょう。それにこれだけ大きいのですから、結界の分厚いところと薄いところが出来てしまっているのかもしれませんわ。なんにしても完璧と言うほどではないのかもしれませんね。これだけ大きい結界を維持していなければいけないのですから。
「結界を出た記録とか残っていないのですか」
空がそう聞いたのですわ。実に現代人らしい考え方ですわね。
「機械とは違うからな。記録が残るわけがないだろう」
天海は呆れたようにそう言ったのですわ。
「なら、凛ちゃんがこの島を出たのかも分からないってことですね」
「そうだが、この島に凛がいないのは確かだ」
天海は不機嫌そうにそう言いましたわ。
「凛ちゃんが昨日最後に会話をしたのは天海ですわ。ですから、海で攫われて可能性が高いですわ。それ以上のことは分かりませんでしたわ。凛ちゃんの家にも言ってみましたが、昨日から帰っていないようですし、何の手がかりもありませんでしたわ」
わたくしは、そう天海に報告したのですわ。
「そうか。ご苦労だったな。天翔、空」
そう言って天海はわたくしと空に向かってお礼を言ったのですわ。
外は日が暮れ始めていたのですわ。もうすぐ、夜ご飯の時間ですわね。
わたくしたちはこの大広間で夜ご飯の時間までゆっくりすることにしましたわ。空はこの部屋に置いてある本を読んで待っていますわ。空は読書が趣味で本なら何でも好きで読むのですわ。
わたくしは今回の件について考えていました。空たちはこの島に来ることになったこと、アマビエ猫の凛ちゃんが消えたこと、悪魔についてなど。
なぜ、空たち家族が選ばれてしまったのだろう。何か理由があるのだろうか。あるとしたら一体何なんでしょう。
まだまだ謎だらけで分からないことだらけ。
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