10 男のロマン
「あっそういえば。前に空から聞いたある都市伝説があったけど、もしかしてそれってこの島の事なんじゃないか」
僕は大広間の窓から朝日眺めて誰にともなくそう呟いた。
あの都市伝説って確か、2度と戻ってこれないとかじゃなかったっけ。
神の島ってことは当たっていたんだし、もしかしたらそれも本当なんじゃないか。だって現にこの島から出られなくなっているわけだしな。
案外、都市伝説って本当だったりするものだな。
都市伝説か。今まで信じていなかったが案外馬鹿に出来ないものなのかもな。
ほら、火のない所に煙は立たぬって言うからさ。
今、伝わっている都市伝説がすべて当たっているわけではないけど部分的には当たっていると言う事なのかもしれない。
なら、この神の島の都市伝説はどれぐらいが当たっているのだろうか。
神の島ってことが正解で2度と戻ってこれないってところが間違って伝わっていたことだといいがね。
まあこればっかりはどしようも出来ないしなるようになれって感じかね。
私と海星で今日は神様が気まぐれで隠したと言う宝探しをすることにしたんだ。なんたって宝探しは男のロマンだからな。
「よし!行こう」
そう言うと私は肩に青の帆布と黒の革で出来たちょークールでカッコイイ、ボンサックを担ぎ出掛けた。
限定だった私のお気に入りの鞄なのだ。
「あぁ。父さん」
息子の海星もそう言って私に続いて大広間を出て玄関に向かった。海星も私と同じ青と黒のボンサックを肩に担いで冒険に向かったのだ。
ちなみに海星の方のボンサックには青の帆布のところにたくさんの缶バッチが付けてある。あの有名な海賊のアニメの缶バッチが。海星も私もあの漫画が大好きなのだ。海賊に憧れたんだ。神様も好きだと聞いて嬉しかったし、勝手に親近感を覚えた。と言うか神様なのに漫画とか読むんだと驚いた。やっぱり男はああいうのが好きなものだよな。
まずは宝箱を隠した場所を示した暗号に着いて聞いて回った。
だが、暗号の事は誰も詳しく知らなかった。そのかわり、宝箱を隠した場所を知っている人がいた。
宝箱は、小さな洞窟があってその中に隠してあるらしい。
小さな島だから神様が宝箱を隠したのを誰かが見ていてその噂が広まったようだ。でも、この島ではお金は意味をなさないから興味を持つ者がいなかったと言う事みたいだ。それにみんなどこに隠してあるのか知っているから宝探しにもならない。それで今まで放置されていたらしい。
神様の興味も他にいき、そのうち忘れてしまったとのことだ。
その宝箱が洞窟に隠してあるということは島の人たちはほとんどが知っていたし。でも、せっかく考えた暗号の事を知っている人はいなかった。少し残念だ。一体どんな暗号だったんだろうか。
それで私と海星はその宝箱が隠してあるという洞窟に向かった。
洞窟に入るとすぐ宝箱が見えた。すごく分かりやすく置いてあって少し拍子抜けした。
そして、その宝箱を開けるとそこには1通の手紙が入っているだけだった。なかなか大きな宝箱なのに中にお宝は一粒も入っていなかった。
ガッカリしていると宝箱の底に手紙を見つけた。
その手紙を開けてみた。
すると、手紙には
「この宝箱を見つけるための過程そのものが宝物なのです。一生忘れることのない大切な宝物。一生の思い出と言う宝物。」
と書かれていた。
それは確かにその通りだな。息子の海星と一緒に宝探しをした時間は何物にも代えがたい大切な宝物だろう。
本当に楽しかった。神様にお礼を言わないといけないな。
日も暮れ、私たちは神様の家に戻った。
最高の思い出と共に。
男のロマンか。この島にはもっと面白いことがたくさんありそうだな。
まだまだ俺たちの知らない場所がたくさんありそうだしな。
この島は小さいが1日ですべてを知れるほど小さい島と言うわけではない。
だからまだ知らないことの方が多い。
この島を冒険するのは実に楽しそうなのだがな。
だが、いつまでこの島に居られるのか分からない。
この島から戻る時はちゃんと時間を戻して返すと天海殿が言っていたかが。
まあ、だから戻る時のことを心配する必要はないのだが。
それでも今は向こうの時間も進んでいる。
部下たちは今も日本を守るため必死に働いていることだろう。
そう考えると私も早く戻りたくなるな。
ホームシックだろうか?
私は仕事にやりがいと責任を持ちプライドを持ってやっていた。
だから、私は仕事が好きだった。いや、好きなのだ。
この島はとても楽しく、冒険心くすぐられる素晴らしい場所だが今までの日常が恋しいな。
やりがいのある好きな仕事、それに愛する家族がいて、私はとても幸せで満たされていた。
あの生活がすでに恋しい。
あの普通で当たり前だった日常。
それが今はない。
目が覚め、気が付いたらこの島にいた。
何が起きているのか今でも謎のままなのだ。
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