4 さやこさんと人魚
わたしはとりあえず、海の方に行ってみることにしたの。
だってこの島には人魚がいるって言ってたから!子供の事のわたしの夢はいつか人魚に会うことだったの。大人になってもうそんな夢も忘れてしまっていたけど、さっき人魚がいるって聞いてふとその夢を思い出したんだよね。
人魚姫を呼んでわたしも憧れた。
その夢がまさか叶う日が来るなんて夢にも思っていなかった。
はぁーこれは本当に現実なのだろうか。夢なんじゃないかとほっぺたをつねってみたけどちゃんと痛かった。
だからこれは現実なのだと分かった。でも、まだ人魚をこの目で見たわけじゃない。本当にいるのだろうか。人魚。
「あっ見えてきた」
いよいよ海が見えてきたわ。それまでの道で誰かに会うことはなかった。この島の人口は少ないのでしょうか?ここまでそこそこの道のりだったのだけれど。
「あっみ~つけたっ」
そう言ってわたしは子供の様に喜んでしまったの。だった、人魚を見つけてしまったから。宝箱を見つけた子供のように?それともお気に入りのおもちゃを見つけた子供のように?まぁ、とりあえずわたしは飛び上がらんばかりに喜んでしまったのよ。だってあの人魚が実在したのだから。
「あなたたち人魚だよね?」
わたしは人魚の子達に近づいて行くとそう話しかけたの。その子たちは輪になって何かしているみたいですわ。
どの子もキラキラしていてとても可愛くてわたしの想像よりも可愛いわね。
いいわね、やっぱり。
「はい。そうだけど。もしかして、この島に迷い込んだっていう人間?」
ピンクの髪の子が振り返ってそう警戒したように言いましたわ。ピンクの髪と鱗を持っていてくるくるカールした腰の当たりまである髪にピンク色の瞳。フリルのついたビキニを着ていて、首からは貝殻で作られたネックレスがかかっていますわ。もしかしたら、手作りなのかしら。とっても可愛いですわね。
「えぇ。そうですよ。わたしは天草さやこって言いますわ。これからよろしくお願いしますね。この島から誰も出られなくなってわたしもしばらくこの島にいますので」
わたしは人魚の子達の近くにしゃがみ込みそう言いましたわ。
「そうなんですね。こちらこそ、よろしくお願いしますわ。私は、れいかと申します」
ピンクの子の隣に座っている青色の子がそう言ってわたしに向かって会釈をして自己紹介をしてくれました。笑顔で優しく私に向かってそう言ってくれたれいかちゃんは落ち着いていて大人っぽくて綺麗な子ですわ。青色の髪と鱗、そして瞳を持っているの。その青い髪は腰まであるストレートでとてもつやつやしていて頭には天使の輪までありますわね。そして、清楚な白のレースのビキニを着てますわ。とってもイメージにぴったりでお似合いね。可愛い。
「じゃあ、次は私ねー。私の名前はみかん!よろしく!」
私の正面に座っているオレンジの髪と鱗と瞳の女の子が元気よくそう言いましたわ。名前と同じみかん色の髪は肩の上ぐらいのショートで、小さなみかんが散りばめられたビキニを着ているわ。
「なら、次は私が。私はあきら。よろしくな!」
みかんちゃんの右隣に座っている赤色の髪と鱗と瞳を持っている女の子がそう言って男前に笑った。燃えるように真っ赤な髪を後ろで束ねてポニーテールにしていますわ。そしてそのイメージに合わないスイカを三角に切った断面のイラストが左右に入ったビキニを着ていますわ。なんだかそのギャップに萌えるわね。見た目かっこいい感じの子がスイカの可愛らしいビキニを着ているなんて。いいね。そのギャップ。好きですわ。
「私はみなこですわ。よろしく」
あきらちゃんの隣、そして私の隣に座っている紫色の髪と鱗と瞳を持った子が優しく笑ってそう言ったのですわ。その女の子はゆるふわカールした髪を左右に結んでツインテールにしていますわ。ビキニはフリルが3段くらい重なった髪の色と同じ淡いパステルな紫色の可愛らしいやつですわ。
「あー。えっと。私は、さくらです。さっきはごめんなさい。これからよろしくお願いします」
最初のピンクの子がそう言って申し訳なさそうに笑ったのですわ。ピンクの髪と鱗と瞳を持った女の子ですわ。桜色の淡いピンクのゆるふわのカールした腰の当たりまである髪の可愛らしい子。そしてビキニはみなこちゃんとお揃いの桜色のフリルのビキニですわ。
どの子もとっても可愛い子ばかり。みんな顔はよく似ているから姉妹とかなのかしら?
「それは何しているの?」
彼女たちが手に持っているものを見て気になってそう聞いたのですわ。どうやら貝殻のようですが。あとはキラキラした鱗のようなものを持っている子もいますわね。
「貝殻や鱗でアクセサリーを作っているの。ほら、これ」
さくらちゃんがそう言って自分が首から下げている貝殻で出来たネックレスを見せてくれたわ。
「さやこさんも一緒にやるか?」
あきらちゃんがそう言って誘ってくれた。
「じゃあ、やろっかな」
私は一緒にやることにした。実はやってみたいと思っていたの。
そうして一緒に貝殻でネックレスを作っていたら空が来てアマビエ様のことを人魚の子たちに聞いてそのアマビエ様の家に向かった。それから、どうやら空は海猫ちゃんを探しているみたい。私たち家族全員が持っているアマビエ猫の仏像を作ったのがその海猫ちゃんらしい。だから、絶対その海猫ちゃんに会いたいらしい。
そのあと人魚の子たちとお話をしながらネックレスを作っていた。人魚の子たちにこの島についていろいろ教えてもらったり、この島で起きたことを話してくれたり、逆に私たちの生活について話したりしました。
そのあと、ネックレスを使い終わると私は神様の家に戻ることにしました。なぜなら今日は持ち寄りパーティーがあると人魚の子たちに聞いたからです。その準備をまさむねさん1人でしていると言うので手伝おうと考えたのです。この島に居る間は神様の家にお世話になることになっているので、少しでもお礼がしたかったのです。
神様の家に戻り神様の家のキッチンに向かいました。そしたら、そこには黒いエプロンを着けたまさむねさんが忙しそうに準備をしていました。
「まさむねさん。手伝わせてください」
忙しそうにしているまさむねさんに向かって笑顔でそう申し出てみました。
「さやこさん。いいんですか。助かります」
まさむねさんは私の顔を見てそう嬉しそうに言ってくれました。かすかに笑顔でそう言ってくれたのが私は嬉しかったのですわ。素直に私の申し出を受けてくれるのがこんなに嬉しいとは思っていなかったですわ。まさむねさんはそういう事を素直に受けてくれる人なのですね。中には大丈夫ですと断る人もいますけど、そこは遠慮しないで素直に人の手を借りるべきだと思いますわ。頼ってくれれば私も嬉しいですから。
「こちらこそ、ありがとうございます」
そう言ってまさむねさんに向かってとびっきりの笑顔でお礼を言った。ずっとお礼を言わなければ。と、思っていたから。言えて良かった。
「えっと?」
私にお礼を言われてまさむねさんは困惑した顔をしているわね。お礼を言うのは私の方なのに。って感じかしら。
「そうじゃなくて。私たちのこと助けてくれたのでしょう?だから、お礼を」
私はまさむねさんの勘違いにくすっと笑ってそう言った。なんだか、可愛かったから。つい。
「あぁ。でも、それは私ではないです。お礼を言うなら凛の神様にしてください」
まさむねさんはそう丁寧に否定した。真面目なのね。
「ううん。もちろん、凛って子と神様にも感謝しているけど。まさむねさんにも感謝しているから。それに、私はこの島の全員に感謝しているから」
私はまさむねさんの事を真っ直ぐに見つめてそう言った。まさむねさんは照れたように目を逸らした。
「あっあの。これ使ってください」
まさむねさんは話題を逸らした。そして照れたのを隠すようにそう言って私に黒のエプロンを渡してくれた。
「ありがとう」
そう言って受け取るとまさむねさんの手伝いを開始した。
まさむねさんが作る料理を手伝って、野菜を洗ったり包丁で切ったり、洗い物をしたりした。
持ち寄りパーティーだからそんなに多く作る必要がないものそこまで大変なことはなかった。私が普段作っている量と同じぐらいだった。でも、まさむねさんが作るのはほとんどが海外の料理だった。もしかしたら日本育ちではないのかもしれないわね。見た目も日本人らしくないし。髪の色は黒だけど瞳は灰色だし、顔だちも日本らしくない。目鼻が整っていて鼻が高く鼻筋が通っている。かなりのイケメンね。どこの国かしら?北欧系かな?
そのあとは大広間の準備があるらしい。これは男手が必要そうね。
「海星と夏海人さんがいれば手伝わせるんだけど……」
まさむねさんと私は大広間に来ていた。そして、その大広間の入り口に立って部屋を見渡して困ったように顔に手を当てそう呟いた。今は電波が無くてスマホが使えないのだ。それでは連絡して来てもらうことが出来ない。これを二人でやるのは骨が折れそうだわ。島の全員が来てご飯を食べるからここに机を並べなければいけないのだ。あの折り畳みの畳に座って食べるテーブルの茶色いやつ。よく町内会の集まりとかで使うやつ。あとは会議とかで使ったり?うーん。まぁとりあえずそんな感じの簡易テーブル?を島の全員が座れる数並べなければいけないの。それは凄く大変だと思う。だから、海星と夏海人さんに手伝ってもらいたいのだけど。
「連絡を取りたいなら1つ方法がありますよ」
私の声が聞こえたらしく、まさむねさんが窓の外を眺めてそう言った。私もまさむねさんと同じように窓の外を見てみた。
「固定電話でもあるの?」
「そんなものありません。そうではなくて、あなた方は神憑きですよね」
「神憑き?そう言えば、そんなこと言ってたけど。それって空ちゃんだけじゃないの?」
「いいえ。あなたたち、家族全員がそうですよ。もちろん1番力が多く流れているのは空さんですが、あなたにも多少力が流れてきているんです。だから、あなたにもテレパスと同じ力が使えるはずです。だから、それで連絡を取ってみてはいかがですか?」
「テレパスですか。それはどうしたら出来るんですか?」
「まずは心の中ではなく声に出してやってみるといいでしょう。連絡を取りたい相手をイメージして名前を呼びかければいいはずです」
「分かりました。やってみます」
そう言うと私は海星と夏海人さんの事を頭の中でイメージした。
「海星、夏海人さん。聞こえる?」
そしてそう声に出して話しかけてみた。本当にこんなんで連絡を取ることが出来るのだろうか?まだ半信半疑だった。でも、この島に来ていろいろ信じられないことを経験した。実在しないと思っていた人魚も実在した。それに神様だって吸血鬼だっていた。それはまだ本当なのか確信はないのだけど。でも、なんだかやってみようとって気になったのだ。きっとまさむねさんは嘘をつくような人じゃないと思ったから。
「えっ?さやこさんか?どこにいるんだ?どうして声が聞こえているんだ?」
夏海人さんの困惑した声が聞こえてきた。
「さやこさん?それに父さんの声も?どういう事?」
海星の驚いた声も聞こえてきた。やっぱり本当だったんだ。でも、今でもにわかには信じられない。2人の事をイメージして2人の名前を呼んだだけで2人に連絡を取る事が出来るなんて不思議ね。
「まぁそれはいいから。手伝ってほしい事があるの。神様の家の大広間に来てくれる」
そう言うと私は通信を切った。通信の切り方は教えてもらっていなかったけど、何となく2人のイメージを消したら通信が切れたみたい。だってもう誰の声も聞こえなくなったから。
「よし。じゃあ、2人が来るのを待ってましょう」
通信が終わるとまさむねさんにそう言って私は畳に座った。足を崩してお姉さん座りで。
「そうですね。でも、さやこさん凄いですね。初めてだと言うのに成功して。しかも2人同時になんて」
まさむねさんは私の隣に正座で座ってそう感心したように言った。
「えっそうなの」
私は驚いてまさむねさんの方を向いた。
「えぇ。そうですよ。だから、びっくりしました。あんなにあっさり成功してしまうのですから」
「そうだったんだ」
私はそう聞いて驚いてそう呟いた。まさかそんなに難しいことだったなんて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます