5 星ノ島に足を踏み入れる
どうやらずっとついてきていた子はどこかに行ってしまったようですわね。それにもう島の海岸について船が止まったみたいですわ。
船がこの島に着いた途端、空たちは電池が切れたようにパタンと倒れてしまいました。あっ大丈夫ですわよ。ちゃんとその瞬間に空気の層を作ってゆっくり倒れるようにいたしましたから、怪我はないはずですわ。
で、わたくしはどうしましょうか?
降りた方がいいんのでしょうか?
迷っていたら、どこかからバサバサと羽の音が聞こえてきて砂浜に誰かだ降り立ったようですわ。
「もしかして、あなたは神なのでしょうか?」
どこからか飛んできたのはどうやら吸血鬼のようですわね。黒いコウモリの羽をもっている。そして服装はザ・吸血鬼って感じの白のYシャツに黒のベスト、綺麗な青色のループタイ。それに、黒と赤のマントを羽織っていた。これぞ吸血鬼って感じのイメージ通りな感じですわね。
「ってあの見えてるんですの?」
「いえ。なんとなく感じるだけなのです。すみません」
確かに彼にはわたくしのことは見えていないようですわね。視点が少しずれているもの。でも、気配だけでも分かるなんてさすがですわね。吸血鬼さん。
「謝る必要はないわ。あなたは吸血鬼なのですわよね?」
「えぇそうですが」
紳士然とした彼はそう言って少し不思議そうにしていた。まぁそうよね。姿は見えないのに声だけ聞こえるのですから。
彼は黒髪に灰色の瞳のどこか神秘的な雰囲気をまとった男ね。
「ここには神がいたりするのかしら?」
「ええ。いますよ」
「なら、大丈夫かしら」
「はい。大丈夫だと思いますよ」
「そうですか」
そう言うとわたくしは姿を現すことにしましたわ。むやみに人に姿を見せてはいけない。それがわたくしたちの掟なのですから。
「よいしょ。これで見えるようになりましたわよね?」
認識阻害みたいなものを解いた感じかしら。もともと神様って存在は実態を持っているようで持っていないからね。
「はい。ちゃんと見えていますよ。でも、特に何か起こるわけじゃないんですね。ちょっと拍子抜けしてしまいました」
そう言って彼は少し残念そうにしていますわね。一体何を期待していたのでしょう?やっぱりそう言う演出は必要だったかしら?
ちなみに私の姿は白と赤の着物を着ていてそれをすごく着崩している。胸元が大きく開いていて、そこからは大きな胸は溢れ出す勢いなのだ。そして、足元も大きく開いていて太もものとこから開いているのよ。
腰辺りまであるゆるくカールした白い髪に赤色の瞳、そして真っ赤で艶やかな唇。妖艶で美しい。自分でいう事ではないですわね。
「ここにいる神はそんな演出をいつもしているの?」
「そういえば、したことありませんでしたね」
彼は無表情のまま顎に手を当てて一瞬考えた様子を見せてそう言った。少し空に似ているけどどこか違う気がする。空と同じで無表情なのだけれどね。
「それでこの子たち倒れてしまったみたいなの」
「そうですか。ちょっと待ってくれますか。神様に連絡してみますので」
そう言うと彼は少し離れて反対を向きましたわね。
「天海さま。どうやら気を失っているようなんですが、どういたしましょう?」
「うふぁー。あぁ?あーなんだったか?」
「この島に人間が入って来たことですよ」
「ぁぁそれか。まあとりあえず、こっちに連れてこい」
「わかりました。でも4人いるので私、一人では」
「そうか。分かった。ところでそこにいるのは女神か?」
「はい。そのようです」
「やっぱり、そうか。まぁいい。とりあえず、その女神と一緒にこっちに来い」
「でも、この人たちは?」
「あぁ。まさとたちを行かせる」
「まさとが。分かりましたすぐに行きます」
どうやらテレパスみたいなことかしら。彼の声は聞こえるけど相手の声は聞こえないわね。この島の神様の名前がどうやら天海というみたいね。あれ?どこかで聞いたことがある気がするんだけど。
「すみません。それで私と一緒に来ていただけませんか?」
彼はこちらを振り返ってそう言ったのですわ。
「それは構わないんだけど、その前にあなたの名前を聞かせていただけません?」
「あぁそうでしたね。失礼しました。私はまさむねと申します。あっこの名前は神様に付けていただいたものなのです」
「そうでしたか。わたくしは天翔と申します」
「では。参りましょう」
「そうですわね」
わたくしは一瞬空たちを振り返ったあとまさむねに促されて歩きだしましたわ。
「神様。お連れしたしました」
わたくしたちは歩いて島の真ん中にある神様の家に向かった。この島は小さく沖縄の小浜島という島と同じぐらいの大きさかしら。
神様の家はそこそこ大きく平屋らしい。その中の一番広い畳の部屋に今はいるのですわ。
その畳の部屋でその神様は頭を肘を立てた手に乗せて寝転んでいた。その後ろ姿を見たら思い出した。わたくしはこの男を知っている。
「やあ。もしかして天翔か。久しぶりだな」
天海は振り向きもせずぶっきらぼうにそう言ったのですわ。相変わらずなのね。
「えぇ。久しぶり。天海」
そう言ってわたくしは畳の上に正座して座った。その横の少し前にまさむねが座っていますわ。
「お二人はお知り合いでしたか。意外ですね」
「あぁ前に上でな」
「えぇ天界でちょっとね。それより空たちは?」
「あぁあいつらはここの医務室に運んでもらってる。そろそろついてるころじゃねぇか」
天海は起き上がってこちらを向いて胡坐を組んで座ってそう言った。
「医務室?家の中に医務室があるのですか?」
「あぁ。あそこには医者がいる」
胡坐を組んでその膝の上に肘を乗せて、顎をグーにした手に乗せながらめんどくさそうにそして適当にそう言った。
「あのそこを見に行ってもいいですか?心配なのです」
母親が子供を心配するような顔で頬に手を当てて心配そうにしていた。
「勝手にしろ。俺はまた寝る」
そう言ってまた天海は畳の上に寝っ転がってしまいましたわ。
「神様また寝るのですか」
天海は返事をせずそのまま反対、海の方を向いて横になって腕を枕にして寝てしまいましたわ。きっと寝たふりでしょうけどね。
それを見て呆れたように小さくまさむねがため息をつきましたわ。
「では、医務室に行きましょうか」
まさむねは気持ちを切り替えこちらを振り返ってそう言って立ち上がりましたわ。それに続いてわたくしも立ち上がりましたわ。音もなくすっと人間にはありえない感じでね。
「そうですわね」
天海の性格を承知しているわたくしもあきれたようにそう呟いたのですわ。
そして、わたくしたちは広間を出て行きましたの。
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