1 神の島に導かれる
愛しい愛しいあの子。
あの子は今日も高校で勉学に励んでいるの。
ほらあそこにあの子の姿が見えますわ。校舎の3階の窓際の席に座った綺麗な黒髪ロングな子が私の愛おしいあの子なの。
あの子の名前は
わたくしが空と出会ったのはあの子がちょうど表情を失ってしまった頃でしたわね。街をふらふらと歩いていた時、空とすれ違ったのですわ。第一に空の美しさに魅入られて無意識のうちにわたくしは空を目で追っていた。それはわたくしだけでなく誰もがわたくしと同じように空を目で追ってしまっていた。第2にわたくしは空の顔に何の感情も宿っていないことに違和感を感じてもっと知りたいと思いましたの。女神であるわたくしには人の顔を見るだけでどんなことを考えているのか手に取るように分かってしまうと言いますのに。
でも、空からは何も感じることが出来ませんでしたの。そういう人間を見たことが無いと言うわけではなかったのですが、いやそれは別に珍しい事ではないのですわ。この世にはいろんな人間がいますからね。
それでもわたくしはどうしても気になってどうしてもその理由を知りたくなってしまったのです。だから、わたくしは空についていくことにしたのです。
それがわたくしと空の出会い。
それからもう5年は経つでしょうか。早いものですね。
そろそろ学校が終わり帰るようですわよ。
空は学校の鞄に荷物をしまい、教室を出て行って玄関で靴を履きかえて校門に向かって歩いていますわね。空は学校の制服である黒に赤のラインの入ったセーラー服を着ていますわね。今は夏だからその黒い半袖の制服から白い肌が覗いていますわ。それから、学校指定のグレーの鞄を肩からかけ、大事そうに右手で鞄の取っ手の所を握りしめていますわ。そして白の靴下に黒のローファーを履いていた。
愛らしい猫のような目にすらっと鼻筋の通った綺麗な鼻に愛らしいぷっくりとしていて桜のような儚げな色をした唇。そしてまるでお人形のような白く透き通った肌。黒いセーラーがその白い肌を際立たせていてとても似合っていて、より儚さが増している。吹けば消えてしまいそうでわたくしはとても心配になってしまうの。
そんなあの子は学校帰りに商店街に寄って買い物をするみたいですわね。
「いらっしゃいませー」「安いよ安いよ。さぁ寄ってらっしゃい!」
商店街に入るといろいろな声が聞こえてくる。元気で活気あるれる、ついつい笑顔になっちゃう掛け声に話をする声や笑い声。でもそんな中でも空は一人、何の感情も読めない無表情で歩いている。
空はスーパーに入って行った。きっと母親のさやこさんに買い物を頼まれたのね。
空の母親のさやこさんはとてもおっとりしていて少し天然なことろがある人なのだけれどとても綺麗で可愛らしい人なんですわよ。空とは違って少し茶色っぽい髪の色で少しパーマがかっていてゆるふわな感じの髪でそれをいつも顔の横辺りで可愛いシュシュでまとめてあるの。
そのさやこさんに頼まれた買い物を終えてスーパーから出てきた空はどうやら福引券を一枚貰ったみたいですわね。その福引券を大切そうに両手で握りしめているもの。
福引抽選会をやっていることろまで行って、福引を引くみたいですわね。
空が福引を回すとそこから金色の玉が転がり出て、そしたら商店街中に響くような大きな音が響いたの。
「一等賞!おめでとうございまーす!」
それは一等賞が当たったことを知らせるベルの音だったの。
「ありがとうございます」
空は澄んだとても綺麗な鈴のような声でそう言ったの。
「一等は沖縄旅行ですよ!もっと喜んでくださいよ~!ほら~」
赤と白のハッピを羽織ったお姉さんが空に向かって明るく元気な声でとっても明るい笑顔でそう言ったわ。
「喜んでますよ。すごく」
喜んでと言われても空は上手く表情が作れないのだもの。空は困ったように無表情のままそう返した。
「そっそうなんですか」
無表情で空にそう返されたお姉さんは笑顔が引きつっていましたわ。まあ仕方ないですわよね。無表情で喜んでるって言われても。どう返したらいいのでしょう。
「はい。もちろん」
どうやら空は本当に喜んでいるみたいね。そう言えば、空は父の
それと同時にわたくしはとても嫌な予感がしてならないのですよ。空の身に危険が迫っているようなそんな予感がするのですわ。今、わたくしは
本当に何もなければいいのですか。
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