救いの楽園に迷い込んだ人の子

遥 かなた

第1話 プロローグ 

プロローグ

「海のかなたには神々が住むニラカナイがある」

沖縄にはそんな言い伝えがあるのでございますわ。

神様は年に一度、私たちの世界にやってきて、幸せや豊穣をもたらしてくれる。その「海の向こうの神様が住む世界」こそ楽園と言えるのではないか。

海に囲まれて暮らす沖縄の方々はずっと海を見つめて生きてきたのです。砂浜の上で美しい水平線に目を凝らしていると、海のかなたに存在するというニラカナイの姿が見えてくるような気が致しますわ。ロマン、ですわね。

ところで、あなたは楽園と聞くとどんなところを想像しますか?

私は、きっと皆が笑顔で皆が幸せに暮らす天国のような場所なんじゃないかと思いますわ。

そんな場所が本当に存在すると言うのならぜひ行ってみたいですわ。


そう言えば、空の学校でこんな都市伝説を聞いたことがありましたわね。

空とはわたくしの愛おしい人間の女の子ですわ。

黒髪ロングでお人形さんのような可愛くて綺麗な女の子なのですわ。

その空の学校でこの楽園によく似た都市伝説を聞いたことがありますわ。

その都市伝説とは「神の島に導かれたものは二度と帰ってこられない」と言うものなのですわ。

神の島ですか。神?わたくしの知っている神が造った島なのでしょうか。

その神の造った島が楽園と言う事なのでしょうか。

だとしたら、わたくしになら行くことは簡単だと思いますが。

でも、今のわたくしは神憑き。

神憑きとは1人の人間に憑いてずっと一緒にいる神のこと。

基本、神とはだれか1人に固執することはないものなのですわ。土地神はその土地を守るものであり、誰か1人を守るためにその人にずっとついている神は珍しいですわ。

それで、わたくしはその神憑きなのでわたくしだけがその島に行くことはできませんわ。


でも、わたくしにはなんだかその楽園に行くことになるような気がするのです。これはわたくしの女神としての勘なのですわよ。

わたくしの愛おしいあの子がその楽園に誘われて行ってしまうような気がするのです。楽園に行けることはとても楽しみなのですが、それと同時になんだか嫌な予感がするのですわ。

きっとあの子は近いうち沖縄に行くことになるのでしょう。

それはあの子が呼ばれるということ。沖縄か、もしくはその楽園に。

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