第5話

 次の日、リアちゃんは学校で「おはなしの会」を聞いています。今日は、席がとなりの今井カノちゃんの番です。カノちゃんは、すっと前にでると、

「夏休みに、家族でフィリピンに旅行へ行きました」と言って話し始めました。

「フィリピンでは、青い空と海がきれいな場所へ行きました。ココナッツジュースを飲んで、砂浜に寝転がると、視界いっぱいに空が広がっていました。太陽の光がさんさんと降り注いで、まぶしくて目があけられなかったです。ヤシの木がそよそよと揺れていました。フィリピンは、こうしたビーチとして有名ですが、実はフィリピンの土着のおとぎ話がたくさんあるのです。今日は、そのうちの一つ、マナナンガルについて調べたので、発表します。マナナンガルは、フィリピン全土に伝わる神話上の魔女です。昼間は美しい女性の姿をしているのですが、夜になると、上半身と下半身が切り離され、背中にコウモリの翼を生やして空を飛びます。そして、人間の血を吸うと言われています。ここに、マナナンガルの絵を持ってきたので、お見せします。世界には色々なおとぎ話がありますが、マナナンガルに似ている姿の魔女は、他の国にあまり見受けられません。フィリピン独自の、すごくユニークな魔女なので、皆さんにシェアしたいと思いました。発表は以上です」

リアちゃんは、マナナンガルの絵を見て、びっくりしてしまいました。上半身は、たしかにきれいな女性なのですが、下半身がありません。おまけに、大きな翼を生やしています。こんな魔女は、今までに見たことがありません。マナナンガルを生み出したフィリピンという国は、一体どんなところなのだろう、と興味をもちました。


帰り道ー。リアちゃんは、今日もマキちゃんと一緒です。

「カノちゃん、フィリピンに行ったんだって。青い空と青い海。良いよねー!私も行ってみたいな」マキちゃんが、うらやましそうにそう言いました。

「私、フィリピンって行ったことない。今日のカノちゃんの発表を聞いて、行ってみたいなあと思ったよ」とリアちゃん。

「ねえ、リアちゃん!魔法のクレヨンで、フィリピンの絵を描いてみようよ。そうしたら、その絵が本物になって、私たちの前にフィリピンの地が広がるかも……!」

「風景はまだ、描いたことないなあ。どんな感じになるんだろう?」

「今日はこの後時間ある?とりあえず、描いてみようよ」

そうと決めたら、行動が早いマキちゃんは、リアちゃんに積極的に働きかけます。

「うん、じゃ、そうしよう。5時に私の部屋に来てくれる?」

「了解!わあ、どうなるんだろう。楽しみだな。じゃあ、あとでね」











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