第2話

 何の絵を描くのか、こんなに考えたのは初めてです。リアちゃんは、いつも、好きな時に、描きたいものを、自由に描いていたからです。描いたものが現実になるなんて、ちょっと緊張してしまいます。けれども、クレヨンを使ってみたくて、仕方ありません。リアちゃんは、窓の外を見上げました。すると、真っ青な空に、白い雲が浮かび、そこを飛行機が飛んでいるのが見えました。その途端、リアちゃんにすてきなアイディアが浮かびました。

「あの空に、虹を描こう!」

虹なら、命あるものでもなく、人の気持ちを変えるものでもなく、人を嫌な気持ちにさせるものでもありません。むしろ、見た人を良い気持ちにさせます。きっと、飛行機に乗っている人が、空を見上げて喜んでくれるはず。そう思って、リアちゃんは、さっそくクレヨンを取り出しました。真っ白な画用紙を取り出し、ライトブルーのクレヨンで勢いよく塗っていきます。白いクレヨンを使ってふわふわの雲を、グレーのクレヨンで、小さく飛行機を描きました。そして、赤、青、黄、緑、橙、紫、藍色の七色のクレヨンを取りだし、大きく虹を描きました。

「描けた!」

さあ、何が起こるでしょう?リアちゃんは、描けた絵と、窓の外の空をかわるがわる見つめます。すると、銀の粉が吹き、絵がさーっと消えて、もとの真っ白な紙になりました。

「あ!」リアちゃんは大きな声をあげて、空を見上げました。

すると、あら不思議。リアちゃんが描いた通り、七色の虹が空にかかっていました。それは、虹の上を歩けそうなくらい、くっきりとしたアーチでした。飛行機も、白い雲も、リアちゃんが描いたとおりにちゃあんと、そこにありました。

リアちゃんは感激してしまいました。このクレヨンは本物だ……!そう思いました。

「すごいものをもらっちゃった」リアちゃんは、クレヨンをながめて、そうつぶやきました。その時のリアちゃんの気持ちは、驚いたということばでは、表現しきれません。にわかに信じられない出来事が、目の前でおこっていたからです。

ところで、飛行機から窓の外を見た人は、喜んでくれたでしょうか?突然虹がかかってびっくりしたのではないでしょうか。他にも、虹を見て、きれいだと思ってくれた人がいたはずです。そう思うと、リアちゃんは、わくわくしました。自分が描いた絵が、こんなにも大きくなって、いろんな人の目にとまると思うと、うれしくてしかたありません。このクレヨンを、たくさんの人を喜ばせたり、驚かせたりすることに使おう、とリアちゃんは心に決めました。






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