第30話 悲しき玩具

《仕事が早いな、白馬》

「これぐらい、わけない」

無線で会話するダニエルと白馬。


《オブライエンも長く日本にいることは出来ない。ザイオンの監視が厳しいからな》

(またザイオンかよ・・・)


「俺の護衛対象が増えるってコトだな。ふぅ」

《ハッハッハッ、お疲れのようじゃないか》

メシヤの護衛は、精神に来る。


《いいことを教えてやろう。メシヤに妹がいるだろう》

食倉庫で白馬は藤原兄妹を目撃している。


《あの女の子も、お前んとこの組織と繋がっている》

白馬には、不思議と驚きは無かった。


「いわばメシヤに一番近しい存在だからな」

《メシヤの一日の行動を掴むには、彼女を頼った方がいい。メシヤは手帳アプリを使っていないからな。手書きの予定表を知ろうと思ったら、マナにコンタクトを取らざるを得ない》


 メシヤは気まぐれなようでいて、意外にもガチガチにスケジュールを組みたがる性格をしている。やろうと思っていたことを相手の都合で変更させられると、フラストレーションがたまるのだ。






 白馬は事務所に戻った。話し相手のPCスイッチを引っ張る。

早く終わらせてメインストリートに繰り出したいのを抑えている。


 白馬の事務所には大型スクリーンが壁掛けられている。手前にはピアノ型のキーボードが並ぶ。キーのひとつひとつが、スクリーンのアイコンに対応しているのだ。


 敵索モードのキーを押すと、エリアの選択に移行し、国・県・市町村・何丁目単位で、地図を表示させられる。


 北伊勢市内のめし屋フジワラ周辺地図は、もっとも注意しなければいけないゾーンだ。カーナンバーから運転手を特定出来ない車の接近や、ユア・ナンバーのデータ外である不審人物が通行することは、日常茶飯事だ。こうした衛星画像は、場所によっては靄が掛かっていて見ることが出来なくなっている。


 白馬がレファラを弾くとピアノガンが発動し、めし屋フジワラに向かう悪漢たちは進路を変えることになる。ピアノガンが気を逸らす方法は様々である。突然通行止めになったり、信号がなかなか変わらなくなったり、果ては動物や昆虫が駆り出されることもある。


通知の黄色いランプが灯った。

【白馬さん。明日のお兄ちゃんはーーー】

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