第25話 コンコードの鉄人

「白馬よ。本日の指令だ」

ピラミッド型ホログラフィーからいつもの声が聞こえた。


(ボス、ヨーコのことを聞いたらどんな反応をするんだろうな)

探偵は他のことに気を取られている。


「ここに飛んで欲しい」

詳細な地図データと屈強な男の顔が映示された。見覚えのある顔である。


「エフゲニー・オネーギン。フォローレンスから脱獄したばかりだ」

「オネーギンは、無実の罪をかぶせられたんでしたね」

白馬はシャワーを浴びたばかりであった。


「うむ。光子ロケットの開発に携わってな」

「!?」


白馬はタイミングが良すぎると感じた。オブライエン博士とボスが通じていることが容易に想像できた。

(ここはとぼけておくか・・・)


「光子ロケットはたしかオブライエン博士の手によるものでしたね」

事情を知っている者からしたら、下手な役者に見えたことだろう。


「ああ、そしてオネーギンはそのチーフエンジニアだった」

白馬は喉元までヨーコのことが出掛かっていた。


「彼なら警護など必要ないんじゃ無いですか?」

白馬は先手を打った。


「百戦錬磨の彼でも、ザイオン相手では多勢に無勢だよ」

ボスは肩をすくめる。


「それとな」

言葉を継ぐ司令官。


「フィットネス業界が彼を目の敵にしている」

白馬はその先が読めた。


「プロテインも要らず、ジムに通う必要も無いと言っていたオネーギンですからね。檻の中で鉄パイプにぶら下がって、またその説を証明してくれそうです」

自重トレーニング派の白馬も同類であった。


(オネーギンに会えば、ヨーコの消息がつかめるかもな)

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