第23話 怒りをこめて、振り返れ
「マリアちゃん」
鳴海洋子が少女に声を掛ける。
「誰よ、あんた」
まだ小学校高学年の安倍マリアは、生意気盛りだった。
「驚かせてごめんね、私はあなたの味方よ」
諭すように話す洋子。
「説教なら聞きたくないんだけど」
マリアの周りに、7人の少女がうめき声をあげて倒れていた。
「ううん、あなたの大切なご家族のことを知らせに来たの」
ふてぶてしかったマリアが、目の色を変えた。
「ここはまずいわ。場所を変えましょう」
洋子が促すと、マリアはおとなしく付いてきた。
二人はタワー下にあるシックな喫茶店に入った。
洋子がカプチーノを頼むと、マリアは即決でクリームソーダを選んだ。
「あなたのお父さんのことなんだけど」
「ふん、あんなやつ、知らないわよ」
マリアは牙を剥く。
マリアが物心ついた時には、すでに父親はいなかった。洋子は父親の話は控えた。
「マリアちゃんがまだ小さかったころ、年の離れた中学生くらいのお兄さんがいたでしょう?」
洋子の言葉にマリアの記憶が呼び覚まされた。
「・・・どうしてそれを?」
マリアの声が上ずっている。
「安心して。彼は無事よ」
「会えないの?」
マリアは気持ちを抑えられない。
「いまはまだ遠くにいるわ。彼もマリアちゃんのことをすごく気に掛けてる」
「どこに行けばお兄ちゃんに会えるの?」
マリアは名前も覚えていない兄の背中をうっすら思い描いていた。
「ここに行けば、何か手がかりが掴めるかも知れないわ」
そう言うと、洋子は一冊のリーフレットを渡した。
そこには、「聖ヨハネ北伊勢教会」と印字されていた。
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