第22話 アモール・ファティ(運命の愛)

「コーラー!」

白馬は、髪のカールが特徴的な男を呼び止めた。


「おお、白馬! 何年ぶりだろうね?」

アトラント・コーラー。ボスの話によると、オブライエン博士の身の回りの世話をしているとのことだ。


「また何を企んでるんだ?」

白馬は口元を緩める。


「何も企んでなんかいないね! 純粋にジェニーの発明に興味があるのさ」

白馬の読心術でも、嘘をついているようには見えなかった。


「あらあら、なにやら賑やかですね」

オブライエン博士が、塔から降りてきた。


「オブライエン博士、やつに妙な真似はされませんでしたか?」

「失礼な男だな、君は!」

そのやりとりを聞いて、口元に握り拳を当てて微笑むジェニー。


「いえいえ、彼はとても紳士的ですよ。どんなことでも面倒がらずにこなしてくれます。なにより、わたしのなにげない思いつきを興味深く聞いてくれるんです」


「藤原メシヤ。接触しようにも近づけないけど、あの少年の言葉は我々のところにも届いてくる。ジェニーはそれをいかに形にするか思索を練ってるからね」


「わたしも以前からメシヤくんのことを知らされていたけど、ヨーコ・ナルミのおかげよね、コーラー」

その言葉を聞いて白馬はざわついた。


「ふたりとも、ヨーコを知っているのか?」

問い詰める白馬。


「おいおい、落ち着けよ。何をそんなに興奮しているんだ」

コーラーがなだめる。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「ヨーコ、本当に大丈夫なのか。今回のヤマはかなりやばいぞ」


「平気よ。必ず戻ってくるから、心配しないで」


これが、白馬が耳にした、ヨーコの最期の言葉であった。

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