第19話 なんでも屋のコーラー
「ボス、話が違いますぜ」
ふてくされた声を出す白馬。
「いや、私は何も間違ったことは伝えていないぞ」
ボスは平然としている。
「オブライエン博士は、自分の意志であそこにいると言っていましたよ」
白馬は確認する。
「結果的にはな。だが、コトの発端はダイバー・ザインが目を付けたことに変わりはない。やつらがオブライエン博士の頭脳を独占しようと彼女の言うとおりにしたまでだ」
ボスは丁寧に説明する。
「ってことはあれですかい? どうにかその独占状態を解禁させようと俺を送り込んだって訳ですね」
白馬の問いに静かにうなずくボス。
「白馬よ。お前にあらためて言うまでも無いことだが、現代社会に生きる人間が、なぜかくもあくせく働かなければいけないのか、分からない訳ではあるまい?」
その言葉を聞いて押し黙る白馬。
「旧社会の体制では、いかに金を搾り取って人類をコントロールするか、ということに力点が置かれている。多くの家庭が莫大なローンを抱え、毎日を楽しむ余裕などこれっぽっちも無い。人々は常にイライラし、諍いが絶えない」
「そんな時にオブライエン博士の発明は、ダイバー・ザイン』にとって邪魔でしかない訳ですね」
白馬がボスの言葉にリレーする。
「そういうことだ」
ボスのシルエットがなで肩になる。
「だだ、書籍を毎日一冊提供してもらえるという決まりもよく分かりませんでしたね。彼女ならもっと要求しそうなものですが」
白馬はぼそっと疑問を呈した。
「彼女の読むような本は、速読するようなものではないからな。それに彼女は熱中型だから、読み散らかすようなはしたない真似はしない」
ボスはよく見知ったような言い方をした。
それを聞いて白馬も納得がいったようだ。
「ところで、オブライエン博士の世話をしているのはどこのどいつなんですかね。俺が行った時は誰も見当たりませんでしたが」
白馬は左手の親指であごをこすった。
「お前もよく知っている男だぞ」
ボスの言葉に白馬はハテと考える。
「なんでも屋のコーラーだよ」
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