第18話 小宇宙への旅 ~Olam Katon~
メシヤとマリアの功績により、ハイパーループで北アメリカ大陸とヨーロッパ大陸が結ばれた。南アメリカ大陸とアフリカ大陸も同様に、ループで繋がれるまでに至った。
その二本の大動脈と4つの大陸に囲まれる大西洋のど真ん中に、オブライエン博士が隔離されている孤島があった。
白馬はジェットボートを操り、孤島の海岸に乗り上げた。
島流しというモノは、島内から出なければある程度自由に行動できるものだが、オブライエン博士は塔の最上階に幽閉され、外に出ることを許されていない。
電気ももちろん通っておらず、かろうじて許されているのは、一日一冊までの書籍を、どんな珍品・インキュナビュラでも取り寄せてもらえるということだった。
女性好みのハンドメイドデスクとチェアが用意されている。あとは、ありったけの紙とペン、そしてオブライエン博士の頭脳さえあれば、PCが無くともいくらでも研究は出来る。白馬がボスから聞かされていたのは、以上のことだった。
「さしものオブライエン博士でも、ここからは脱出出来ないか」
白馬は塔を見上げる。
「誰が脱出できないですって?」
うら若き女性の声が聞こえた。
白馬がぎょっとして振り向くと、そこに立っていたのはまがうことなき、ジェニー・オブライエン博士その人であった。
(鉄扉を解錠するくらい、造作も無いってことか・・・)
「あなた、内調のアヅミ・ハクバね」
「話が早いですな。オブライエン博士、あなたをここから連れ出しに来ました」
「ミスター白馬。どうも話が行き違っているようですが、私は何も、誰かに拘束されてこの島にいる訳ではありません。自分の意志でここにいるのです」
「こんなところでは、思うような研究もできないのではありませんか?」
白馬は意見する。
「私も甘く見られたものですね。都会の喧噪の中では、何かと邪魔が入ります。スマートフォン、PC、突然の来客。煩わしいことばかりです。研究の一番の天敵は、脂の乗り始めた時に妨害が入ることなのです」
白馬は力が抜けたのか、話題を変えることにした。
「オブライエン博士、いまは何を研究しているのですか?」
それを聞くと、ジェニーは表情を明るくした。
「0lam Katonよ」
「それは面白そうですね」
白馬はお世辞では無く本心だった。
「私たちは年を取るにつれて自分のカラダをいたわらなくなるけれど、それは大きな間違いなの。自分の肉体・精神・小宇宙を探求すれば、おのずと大宇宙への知恵が開示される、とこういうわけね」
「肉体を鍛えれば頭が冴えてくるという個人レベルでの実感もありますね」
白馬は日々の鍛錬を怠らないのでこういう答えがすぐ返ってくる。
「そうね。お酒は飲み放題、好きなモノを食べ放題、ボディラインが乱れてきても気にしない。そうするとね、貴重なインスピレーションを失いやすいの」
「言えてますね」
「それからね、ミスター白馬」
「はい、なんでしょう」
白馬は、オブライエンとのやりとりを楽しんでいる。
「藤原メシヤを起点とする、相互連関。
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