第15話 ニュー・アトランティス計画

 いつもながらのボスと白馬の密談。

メシヤを世界へ旅立たせることに、根回しをほどこしたのは白馬であった。


「うまくいったようだな」

「ま、鷹山の旦那とは昵懇ですからね」


「そうであったな。ところで白馬よ、フリーエネルギーに関してお前に依頼したいことがあるのだが」

ニセ科学と烙印を押されているフリーエネルギー。かいつまんでいうと、入力に要したエネルギーよりも、出力のエネルギーが大きくなる仕組みのことだ。現代科学では不可能とされている。


「それはまた危険なヤマですね。エネルギー関連企業が黙っちゃいないですよ」

「うむ。だがな、世界を繋ぐハイパーループもまだまだエネルギーロスが膨大で、コストの問題をクリアしていない。そこで、封印されたテクノロジーを発掘するというわけだよ」


「ボスの言うことですから従いますがね」

白馬の声はやや退けている。

「トリプルアークという技術を知っているか」

「無論です。あいつを使えば、地球のゴミ問題はもちろんのこと、放射性廃棄物問題も一気に片がつくという夢の技術ですね」


「そうだ。真空中にはふんだんなエネルギー物質が充満している。それを古代の人間はマナ・プラーナ・気、などと呼んでいた訳だ。原子転換・常温核融合・フリーエネルギー、これらは密接に関係しているが、トリプルアークはそれらを可能にするテクノロジーなのだよ」


「東日本の原発事故からまだまだ傷跡が癒えない状況ですが、トリプルアークも使えそうですね」

白馬は小指と薬指を折り曲げて、三本のアークを形作る。

「違いないな。復興五輪と謳っているからには、積極的に活用すべきところだ」

ボスの声がうっすら温かくなる。


「しかし、ロストテクノロジーをハイパーループや放射能汚染問題に使うのはまったく頭になかったですよ。さすがボスですね」

白馬はあまりしない賛辞を送る。が、ボスの影像はかぶらを振った。


「メシヤ殿のご発案だよ」





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