第13話 もう飛ぶまいぞ、この蝶々

「よくぞ戻ってきた、白馬よ」

ダイバーザインでの死闘をねぎらうボス。


「まったく、命がいくつあっても足りませんよ」

白馬が身震いしてから答える。


「そのバイオチップなのだが」

「知っていますよ。もう現実はSFを超えていますね」

ボスが話そうとするのを白馬が割って入った。


「SFではバイオチップを搭載したヒューマノイドロボットが登場したり、あるいは学習支援として人体にバイオチップを埋め込むストーリーが出て来るかと思う」


「素晴らしいお話だと思いますが」

白馬は冷酷な表情で応じた。


「だがな、いいところまでは行くんだが、SF世界の手前で終わってしまうんだよ」

「でしょうね」


「人体と機械のケミストリーとでも言うのかな、そこが最後の最後のところで拒絶反応を起こしてしまう」

「ダイバーザインの目的も元々そこには無いですからね」


「そうだ。ダイバーザインが開発した、超小型DNA抽出バタフライ。それらで集めたおびただしい数の人体データから、人類の自由意思をコントロールするバイオチップのひな型を生み出していたのだ」


「学習支援という名目ならバイオチップを付けようとする人も多いでしょうからね」

白馬がいぶかしげな表情で言葉を継いだ。


「そのきゃつらの野望をお前が打ち砕いてくれた。礼を言うよ、ありがとう」

ボスのシルエットが前かがみになるのが見えた。


「ただ、人間の学習能力を飛躍的に伸ばす試みは興味大アリですね」

白馬は片眉をあげて微笑をうかべた。


「それならもう彼がやってくれてるよ」

「ほう、誰です?」


「グランモルナク・メシヤだよ」





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