第11話 ピュトレファクシオンからの復活

「白馬よ、藤原メシヤという少年についてなのだが」

 衆議院議員・鷹山巌一郎たかやまげんいちろうの元に、白馬は訪れている。

「なんです? 旦那もメシヤについて調べているんですかい?」


「ほう、話が早いな。さすが元内閣調査員といったところだ」

 鷹山は両手を組んで答える。

「ヨーコがメシヤについてあらかた洗ってくれていました」

「らしいな。彼女のことは本当に残念だった」

「この仕事をしていたら危険はつきものです。覚悟は出来ていますよ」

「うむ」

 鷹山は目を細めてうなずく。


「こちらが、藤原メシヤに関するレベルEの調査ファイルです」

そう言うと白馬は鷹山にその極秘ファイルを手渡した。

鷹山がファイルを受け取ると、神妙な面持ちでページをめくった。


「驚いた。わずか15歳で、このような経験はなかなか出来ない。私は実際にメシヤくんに会ってはいるが、普段の彼からは想像も出来なかった」

鷹山はやや声を詰まらせている。


「これからの世界の重責を担っていくわけですから、苦労は早いほうが良かったとも言えますよ。エリートコースを邁進するだけではイレギュラーには脆いですし」


「年に似合わない彼の落ち着きぶりは、こうしたところから来ているのかもな」

「ですね。そして、明るく振る舞っている人間にも、触れられたくない過去のひとつやふたつあるものです」

 白馬は何かを思い出すように吐露した。


 その白馬を見て鷹山は声を掛ける。

「白馬よ、お前もマリアくんには逢えたのか?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る