第8話 苦惜に寄せて

 白馬はワシントンD.C .に訪れていた。

鋭い眼光、均整の取れた身体、少し奇抜な出で立ち、

護衛官に呼び止められるのは当たり前だった。


「ココデ何ヲシテイル?」

 白馬が内ポケットに手を突っ込むと、護衛官は銃を取る構えを見せた。

白馬が取り出した手帳を見せると屈強な男の表情が凍りついた。

「ウッ!」

 護衛官が二人、顔を見合わせている。

「通ッテ良シ・・・!」


「プレジデントはどこにおいでかな」

白馬はバックヤードまで歩いていった。


 木洩こもの射すのどかな庭園で、

小さなこどもたちがにこやかな表情を浮かべ、思い思いの遊びで戯れていた。

白人・黒人・アジア人、国籍も年齢も一様ではない。


「よぉ、パパやママはどこにいるんだい?」

 白馬は一番近くにいた、ブロック工作をしている少年に話しかけた。

「パパもママもいないよ。ここの子たちはみんなね」

 子供は一瞬キョトンとしたが愛想よく答えた。


 白馬は後悔の念を浮かべたが、その二秒後には子どもたちに混じって遊びの相手を務めた。手慣れたものである。


「日本の内調は保育士も始めたのか?」

 白馬の後ろから、バリトンボイスの咎言が聞こえた。


「お邪魔してますよ、ボウスハイト・ロックフォーゲル大統領」









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