3 死の影
死の影
誰かを思い出すことはありますか? どうしてあんな場所にいたのですか? 霧の森の中に家があるのは、危険ではありませんか?
君は、もしかして死にたがっているの? ……なんだか、そんな風に僕には見えるよ。
嵐の食卓
二人の食事の時間が始まった。
それはとてもささやかな食卓だったけど、ずっと空腹だった二人にとって、それは、とても幸せな時間だった。
煮込んだ豆のスープ。固いパン(カビのある部分は綺麗に取り除いた)蒸したじゃがいも。それから、貴重な水。そして、とっておきのミルク(ミルクを見るとリリィはとても喜んでくれた。いいのですか? と言って遠慮をするリリィにランはどうぞと言ってミルクを進めた)
リリィはその首にペンダントを下げていた。
それはリリィの『ある大切な人の思い出のペンダント』だった。
小さな飾りのついている、赤い宝石のはめ込まれている黄金のとても高価そうなペンダントだった。(あるいはそれはアミュレット、つまりお守りだったのかもしれない)
そのペンダントを時折見て、リリィはなぜかとても悲しそうな顔をした。
「どうして、こんな危ない場所に住んでいるのですか?」そんな顔をランに見られて、その感情を隠すようにして(リリィはペンダントを実際に軽装の鎧の下にある胸の中に隠した)リリィは言った。
ランは無言。ただ悲しそうな顔をするだけだった。
「すみません。とても失礼なことを聞いてしまいました。許してください」リリィは言う。(ランはリリィに向かって、大丈夫ですという意味を込めて小さく笑った)
二人は少しの間無言になる。(静かな雨の音だけが聞こえている)
「騎士様こそ、どうしてこんな危ない森の中に一人で足を踏み入れたのですか? 騎士様がお強いかたであるということは、先ほど助けていただいて、わかってはいるのですけれど……」少しして、沈黙に耐えられなくなってランは言った。
リリィは悲しそうな表情をして、天井をじっと見つめると、「……ある人を追いかけているんです」とそれから少しして、視線をランに戻してから、にっこりと笑ってそういった。(そんな騎士様はなんだかちょっとだけ泣いているようにも見えた)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます