067.威無
十人、七人、七人、六人だ。
「よーし、分かれたなー」
ダインがグループ分けは終了だと手をたたく。
どう見ても人数がアンバランスなのだが。
「別に均等に割れとは言ってないからな」
こちらの疑問に答えるようにダインが補足する。
確かに。
改めてグループ分けを確認すると、極端なことに七人のグループの一つは男子だけ、もう一つは女子だけで構成されていた。どちらも一人のリーダー的存在からからまとまっているようでに見える。そして、ちょうどその両方から強い視線を感じる。
「なんとなく、あの男子グループ、特に一番奥のやつから睨まれている気がするんだが」
すらっとした体型にサラサラの金髪、顔もいい。どこかの国の王子と言われたら、やっぱりねと返してしまいそうなほどである。
「ん?あぁ、クリスのことか?そりゃそうだろうな。次期学生代表候補の一人とも言われてたからな。ちなみにあいつの親父はこの都市ガリオンの議会の中心人物だ」
ふむ、王子とは言わないまでも有権者の家柄か。とするとその周りも取り巻きだったりして。
「ついでに言えばあの女子グループの中心にいる子––––ダリアがもう一人の次期学生代表候補と言われてたんだぜ」
今度はどこかの王女と言われたら(略)なダリアからは、敵対心というよりは興味の視線を感じた。どちらかと言えばその周りの女子達から睨まれている気がしてきた。
なぜだ。いや、理由は明白か。次期学生代表候補の座を奪ってしまったからに他ならないだろう。こちらとしてはそんなつもりは毛頭なく不可抗力と言っても過言ではないのだが。
「なるほど、それにしても詳しいな」
「なに、推薦組は入学が決まったとき、説明会のために一度集められたからな」
そうだとしても、ガウスのコミュニケーション能力は高さは感心に値すると思う。
ちなみにハルの情報によると残りの十人のグループはハルやフェリィと同じか、それよりも上の先輩達で構成されているようだ。確かに全体的に落ち着いた雰囲気がある。
しかし、ざっと半分以上が新入生という状況のようだ。新入生のレベルが高いともとれるし、残った先輩たちは選りすぐられた実力者と言ってもいい。面白い勝負になるかもしれないな。
ダインに連れられて学校の奥の訓練場へと移動する。
広大な訓練場は全体を柵で囲まれていた。柵の内側は木々が生い茂り、廃墟のような建物の残骸が散らばっていて、すぐに奥行きが見通せない無法地帯のような場所だった。サバイバルゲームにもってこいのような場所と言ったら分かりやすいだろうか。
「ルールは簡単だ。この訓練場の四隅には旗が立てられている。二時間後に多くの旗を持っていたチームが勝ちだ。別に途中で旗が奪われても取り返しに行っていいし、最終的に持っていればいい」
なるほど戦闘不能はないということか。
「この訓練場内では使える魔力の上限が決まってる。強すぎる魔法はキャンセルされるから注意するように。あと、殺傷能力の高い武器も禁止だ」
使える魔力の上限が決められるとは、こう見えてなかなか高度な施設のようだ。魔道具の一種だろうか。
「説明はだいたいこんなところかな。よーし、じゃあ十五分後から開始するから、それぞれの位置に移動してくれ。到着したチームは作戦を練るもよし、罠を仕掛けるもよしだ」
ダインがニヤリと笑う。
「では……散開!」
ダインの合図でチームごとにそれぞれ四隅に走って移動を開始した。しばらく走ると生い茂った木々と構造物でもう他のチームの様子は見えなくなる。
自分たちが向かっているのは左奥のポイントだった。道中、訓練場の様子が分かるのはメリットだが、到着してからゆっくりと作戦を立てる時間はあまりない。必然的に道中で作戦を立てることにする。
「とりあえずリーダーなんだが…」
「ソウ以外に誰がいるんだ?」
愚問だとばかりにガウスに即答された。
「いや、別にガウスがやってもいいんだぞ?」
「考えるのは性に合ってない」
「…アタルはどうだ?」
「いやいや、さっき僕が一人でいたところ見たよね?ありえないでしょ」
一蹴される。
念のためカスミ達の方を確認するが、案の定、立候補者が出ることもない。先日は部隊長を務めてはいたが、ハルもフェリィも自らリーダーシップをとりたいというタイプではないようだ。
「はぁ、わかった。とりあえず今回は俺が仕切ろう」
「これが今回ではなく、今後ずっとになることをこのときの俺はまだ知る由もなかった」
「こら、そこ、不安なナレーションを勝手にいれるんじゃない」
言うまでもなくカスミである。
ずっとなんてことはないだろう。そのうち、リーダーキャラが出てくるのが定石というものだ。いや、もう既にクリスなんて、いかにもなキャラが出てきたか。ありがちな展開ならクラスリーダーの座を争って競うのかもしれないが、そんなことになったら俺は即座に譲り渡したいとさえ思う。なんなら学生代表の座もセットにしてもいい。
「それが到底甘い考えだということ思い知らされるのはもう少し後になってのことだった」
やめぃ!
威厳皆無のリーダーが決まったところで、模擬戦がはじまるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます