013.防衛

 

 ガリオンに近づいていくと次第にその様子が鮮明になってきた。

 

 周囲は高い防壁で囲まれていて、近くまでくると終わりが見えない。防壁の中には近代的な高い建物が並んでいることもあってこれもまた奥行きが見えない。


 さすが世界五大都市。その圧倒的な迫力と壮大なスケールは全米が震撼しそうなレベルだ。



 門は開かれているが有事の際には堅牢で巨大な柵が降ろせるようになっている。入口には人々が長い列を作っていて守衛の衛兵たちが都市に入る人々を検問している。


「とりあえず、並ぶしかないか」


「そうね」


 列の進み方をみると一時間ぐらいかかることになりそうだ。夢の国のアトラクション待ちに比べたらマシだろうか。


「ところで検問って何を調べられるんだ?」


「基準はそれぞれだけど、ガリオンは中立の都市だから、種族間で差別されることはないわね。過去に重大な犯罪歴がないかどうか、魔物が化けて侵入しようとしてないかってところじゃないかしら」


「そんなことが分かるのか」


「ええ、評価スキルとかその類ね」


「それって、持っているスキルとかも分かるのか?」


「細かいところまでわかるかどうかは魔力量によるけど、検問する衛兵も全員に全力でスキルを使うわけにはいかないから、そこまでは分からないと思うわよ」

 

「なるほど」


 それなら一安心か。


「ちなみに犯罪歴があるかどうかは?」


「一度捕まったことがある犯罪者はマーキングされるのよ。まだ捕まってない場合は指名手配の情報と一致するかどうかね」


 なるほど、魔法って便利だな。それに逆に言えば魔力を費やせば相手のステータスがわかるってことだ。是非とも欲しいスキルだ。機会があればコツを教えてもらいたいものだ。


 カスミの講義を聞きながら、もうすぐ自分の順番が数えられそうになってきた頃だ。



ウィーーーーン!



 大音量のサイレンが鳴り響いた。


「柵を降ろせ!魔物の襲来だ!」


 衛兵のリーダーと思われる人物から指示が飛ぶ。


 検問は中断され、列を作っていた人達が避難を促される。


 「流石にどさくさに入れてくれるわけはないか…どうする?」


 「ここはお手並み拝見といきましょうか」


 そう言ってカスミの目線の先を追うと、四十匹ほどのフレアウルフの群れが街に迫ってきていた。フレアウルフというと口から炎を吹き出すBランクの魔物だ。


 「吹雪ブリザード隊、構えぇぇ!!」


 と、そのとき上から声が降ってきた。


 見上げると防壁の上に二十人ほどが並んでいた。吹雪ブリザード隊というからにはおそらく氷魔法に長けた魔法使いたちだろうか。


 「放てぇ!!」


 一人の指示を合図に多くのアイスランスが顕現したかと思うと、そのままフレアウルフに向かって勢いよく真っ直ぐに飛んでいく。

 

 フレアウルフは勢いを止めずに駆け抜けようとするが、続け様に放たれるアイスランスを全て躱すことはできず、一匹、また一匹と倒れていく。地面を抉るような威力があって次第に砂煙が立ち込める。


 「やるわね」


 「ああ、そうだな。防壁の上という高低差もうまく利用している」


 アイスランスの砲撃がしばらく続いたが、フレアウルフの動きがなくなったのを見てアイスランスの乱れ打ちが止まった。誰もが全滅させたかと思った。


 「任せたわ」


 「あまり目立ちたくないんだけど」


 矢先、生き残っていた一匹が砂煙から飛び出した。


 「ま、まだ生きてるぞ?!」


 声を上げたのは列の最後尾に並んでいた一人だ。


 皆がその声に驚きフレアウルフを視界に捉えた瞬間、その脳天を氷の矢が貫いた。


 あまりの一瞬の出来事に大半の人は何が起こっているか理解できていなかった。


 「ふーん、本当に風以外も使えるんだ」


 「まあな」


 「熱い視線を受けて羨ましいわ」


 そう言ってチラリと防壁の上を見る。

 

 多くの人達が状況を飲み込めていないなかで、防壁の上から指示を飛ばしていた一人の女性は事態を正確に把握していた。


 「狙い、スピード、威力全て申し分ない、あの青年は一体…?」

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