第5話 これから

 カフェの中で話す二人。


 現実を知った私は少し戸惑っていた。

 不意に運ばれてきた食後のコーヒーと紅茶。彼女には季節のケーキもついていた。


 コーヒーを一口飲み冷静に考える。


 「死を選ぶ人」は確実な方法をとる。でも、生きてると言う事は…

 私「飛び降りたって建物の何階から飛んだの?」

彼女「2階です。」


 2階。頭かから落ちたらわからないが…。多分…

私「2階ってあの位の高さ?」


 カフェの窓から見える一軒家。私は2階の窓を指差しし尋ねる。

彼女「そうです!」

  私の直感は次の質問を見つけた。

私「どんな理由でどこから落ちたの?』

彼女「父と口論になり死んでやる!ってなりまして。落ちた時は足から落ちました。」


 私は中で確信した。「本当は死を望んでいない。」


 人間誰しも死を考える事はある。私だってそうだ。 

 包丁を見つめては「痛みを想像」してまたしまう。でも朝起きると「死にたい」と思っていた時期があった。 


 確実に死を選んだのか、そうでないのかでこの先の人生は変わる物だと私は信じてる。

---

 となると懺悔は私の番。私だって沢山の過ちがある…


「私は離婚していますが」と今度は私が打ち明ける。

彼女「お子さんはいらっしゃったのですか?」

私「はい!二人です」

 空白の時間。私は一瞬の間なのに長く感じ次の言葉を切り出す。

私「どう思います?子供が他にいる男性は?」

 彼女は少し考えてから

彼女「わからないですよねー!結婚したことないので。」


 我ながら当たり前のことを聞いて恥ずかしくなった。 

 私に線維筋痛症の症状を聞くのと同じ。 


 なったこともないのに、感想を求められても返す言葉がない。

 私は会話が途切れた所でお会計をお願いする。店員さんに「また来ます!」と伝え店を後にした。


 夕暮れ時、帰宅の学生やサラリーマンも家路に向かう。 

---

 私と彼女はゆっくり歩きながら駅に向かう。駅前の交差点で彼女が「私はこちらなので」と自宅の方向を指差す。 


私「これ 昨日買ったんですが、よろしかったら。」とショルダーバックの中から「健康祈願」のお守りを出し彼女に渡す。

彼女「ありがとうございます!」


 お守りを受け取る彼女。茜色の夕日に照らされた、その笑顔を見つめながら

『彼女のこれから』『私のこれから』について考えていた。


              つづく



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