第67話 πコントローラー
「100円だよ」
「あーしがお金払うの!?」
「とりあえず腰持ってるから一回ジャンプしてみ」
綺羅星がアクセルレバーを回すと、ガンニョムは水平にジャンプする。
数秒してズシンと着地の衝撃がコクピット内を揺らす。
「う……ぐ……」
どうやらダメだったようで、ハンドルから手を離して胸を抑えている。
「先輩、もうちょっと上お願いします」
「えー、お腹? 200円だよ」
「だからあーしが払うんスか!?」
俺はフットペダルを踏み込むと、再び機体が上昇してから着地した。
「痛ぃったいよぉ~」
再び胸をおさえてもがいている。確かに綺羅星の胸は立派なもので、今後の成長に大いに期待したくなるサイズだ。きっとその胸の重みが痛みを増幅させているのだろう。
「先輩、もう少し」
「断る! これ以上いくと胸を触ってしまう」
ってか君ブラジャー壊れてノーブラ―伯爵なんだろう。
「先輩もう男らしくがばっといって下さいよ。あーしも今回のことは事故だった、毒を持ったキモい野良犬に襲われたと思うんで」
俺はアニマルゾンビか。
「というより、俺は嫌いな男におっぱい触られながらも、ゲームを続行する君の根性がわからん」
「はぁ!? 何言ってんスか、このままだと負けるんスよ! あーしは戦って負けるのはいいけど、何もせずに負けるなんてまっぴらごめんなの!」
「やだカッコイイ」
おっぱい両手でおさえながら、涙目だけど。
俺がちょいと脇を突っつくと綺羅星はヘナヘナと崩れた。
「あのぉ先輩、マジいい加減にしてもらっていいッスか?」
バキバキと指を鳴らす綺羅星。そろそろ泣き笑いみたいになってきたからやめよう。
「大丈夫、後で慰謝料請求されない?」
「しませんよ!」
「終わった後、この人痴漢です! って言ったりしない?」
「しませんよ!」
「終わった後、500円払う?」
「払いますよ!」
「しゃーなしだよ」
「って、何であーしが払う側なんスか!」
俺はそっと綺羅星のおっぱいをすくいあげた。できる限り上半身に負担がかからないよう胸の重量を0にする。
「はっうっ……」
さっきのうめき声ではなく艶かしい声が聞こえる。
本当ならブラウスの薄い生地越しの生乳の感触に、照れたり恥ずかしくなったりするものだが、俺は彼女の事を意識していないのでなんとも思わない。不思議!
「はい、ジャンプ」
「んっ……」
綺羅星はアクセルレバーを回すと、機体がジャンプして着地した。
さっきと同様にコクピットが振動する。
「まだ痛い?」
「いや、全然大丈夫ッス。これで戦えます」
「マジでこれでやるの?」
「当たり前っすよ。戦って勝つんで」
どうやら負けず嫌い>羞恥らしい。
俺のサポート(物理手ブラ)状態で、綺羅星は機体を前に進める。
洞窟を抜けて、ズンズンと軍事基地方面に向けて走るガンニョム。
「先輩ほんとにこっちでいいんスか? 敵がグミキャノン倒したなら、砂漠に潜んでるんじゃないッスか?」
「いやぁ、多分雷火ちゃんは格闘機だと思うから移動してるよ」
「んっく……はぁっ……。どうして……そう思うんですか?」
「遠距離ならあの砂丘吹っ飛ばせるんだよ。いくら視界が悪くても砂を吹っ飛ばしてりゃグミキャノンは倒せる。でも僚機撃破って出たのは、結構経ってからだった」
「つまり?」
「雷火ちゃんのは被弾しているグミキャノンを倒しにマップを移動。ザヌスナは俺たちの作戦を読んで洞窟に。チーム内で分かれたんだよ」
「んっ……くっ……。何でザヌスナはグミを狙わなかったんですか?」
「グミはダメージを受けてたから、あとは
最悪狩れなくても、待っていればグミキャノンを倒した雷火ちゃんと合流。洞窟内で俺たちを挟撃するつもりだったのだろう。
「それに見事返り討ちと、っへーん。あーし激強っスね」
「調子にのるんじゃない」
俺は綺羅星の胸を一揉みした。
「うひゃあぁ!」
ガンニョムはその場でグルグル回る奇怪な動きをとった。
「先輩マジありえないんですけど! 支えるのはオッケーって言ったけど揉むのはダメ!」
「すまない」
もにゅんともう一揉みする。
「わひゃあぁ!」
ガンニョムがグルグル回って気持ち悪くなってきた。
「もういいっす、あーしが黙る」
「賢明だ。ちなみに明君は本当にただの友達なの? 俺、後で刺されたり路地裏に呼ばれたりしない?」
よくも俺の女の乳触ってくれたな、このオタク野郎が。落とし前を――
的な展開になりそう。
「大丈夫っスよ。明はあーしの追っかけの一人っスから。あーしのやることに口出しできないんで」
「追っかけ? アイドルなの君?」
「違いますよ。あーし金持ちなんで、何もしなくても男が寄ってくるんです」
「金持ちステータスいいなぁ」
「そのかわり女にはめちゃめちゃ嫌われてますけどね」
「だろうね…………わかるよ」
「そんなしみじみ言わないでくれます!? あーしだってちょっとは傷つくんだから!」
「てか、そこはお金って言うんだね。私が可愛いからとか言うと思ったんだけど」
「あぁ、あーし自分が曲がってることぐらい自覚してるんで。人間ちやほやされまくると勘違いしますよ」
「そうだね、君はザッ勘違いって感じの子だもんね……」
「ほんと気の毒そうに言うのやめてもらっていいですか! 金の力で先輩消しますよ!」
その時は伊達と水咲間で、血で血を洗う激しい戦いがおきそうだ。
「つか先輩はあーしの胸触って、なんでそんなに冷静なんですか?」
「ははっ、これが雷火ちゃんだったら最高だったんだけどね」
「人の乳揉みながら他の女惚気るのやめてください!」
「ごめんね」
俺は持ち上げるように支えていたおっぱいを離した。
「痛い痛い痛いッス! お願い離さないで!」
急激に重力を取り戻した乳に、クーパー靭帯が悲鳴をあげたのか涙声の綺羅星。
俺はすくい上げるように彼女のおっぱいを持ち上げた。
「ハハ、綺羅星は面白いね」
「すっげーバカにしてますよね!?」
コクピット内でわちゃわちゃしていると、その時警報音が鳴った。
「右っ! バック!」
俺は即座に敵の位置を確認して叫ぶと、綺羅星は機体をバックジャンプさせる。
その瞬間今さっきまでいた位置に、真っ赤な剣が降ってきた。
「ヒートブレイド。ガフカスタムか! 接近戦はまずい後退だ!」
距離をとって対峙した敵の機体は、頭に一本角が伸びた指揮官機仕様。
右手に赤熱する巨大な剣、左手にはシールドとバズーカが一体化したシールドキャノンを装備。
立っているだけで威圧感があり、アニメ原作でも強敵として立ちはだかる名悪役機。ガフカスタム。
「あれ強いんですか?」
「君はガンニョマーを名乗るくらいなら、ガフカスぐらい覚えた方がいい。格闘だけなら余裕でガンニョムにも勝てる近接最強機。さすが雷火ちゃん、機体選びもセンスあるな」
「あーしが強機体使ったら、それはないわ~とか言ってたくせにぃ!」
それはそれ、これはこれ。
機体越しに睨み合っていると、通信ウインドウが開き雷火ちゃんの顔が画面に映った。
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