後編 綺羅星はオタを理解できない
第62話 オタカップル
学校終わりの放課後――
『カメラに向かってポーズを撮ってね。10、9、8――』
「悠介さん、早くわたしをお姫様抱っこして下さい!」
「い、行くよ!」
俺は雷火ちゃんの体を担ぎ上げ、プリクラのカメラに向かって引きつった笑みを浮かべる。
『ハイチーズ(パシャッ)』
現在俺と雷火ちゃん、火恋先輩、静さんはアキバにあるゲームセンターへとやって来ていた。
ゲームセンター内にあるプリントクラブにて、俺は一人ずつお姫様抱っこして写真を撮るという
それというのも、
それを見た雷火ちゃんが、一緒にコスプレするなんてズルいとおかしな方向で激おこ。
俺からすると完全に黒歴史流出でしかないのだが、火恋先輩から私達も同じように写真を撮ってくれと頼まれた。
そのせいで今現在腰に負担をかけながらも、彼女たちを順番にお姫様抱っこしながら写真を撮っているというわけだ。
「ゆ、ユウ君大丈夫? お姉さん重いわよ?」
「大丈夫。行くよ」
静さんはゲームセンターの資料がほしいとのことで、ゲームセンターに行くなら一緒に行きたいとついてきた。
なぜ彼女をお姫様だっこしているのかは、俺にもよくわからない。
火恋先輩と雷火ちゃんの写真を撮ったら、静さんも撮る? みたいなよくわかんない流れになった。
「よっと」
「わっ、すご~いユウ君力持ち♪」
なんとか静さんも抱っこできてよかった。恐らく喫茶店で重いものばっかり持たされてたので、それで鍛えられたのだろう。
『写真に落書きしちゃおう。フレームもかえられるよ♪』
撮影を終え画像加工フェーズに入ると、静さんはナチュラルにハート型のフレームを選択するので困る。
出来上がったプリントシールを見て、三人は嬉しそうにスマホのケースに貼り始めた。
お願いだからやめてください。
「これからどうしよっか? 写真撮り終わったけどなんかゲームして遊ぶ?」
「私はコスプレ用のコスチュームを見に行きたいんだ」
「コスプレいいわね。お姉さんも見たいわ~」
「義姉さん一緒に行きましょう!」
「え、えぇ」
食い気味の火恋先輩。
理由はよくわからないが、雷火ちゃんと二人で静さんの好感度上げ競争をしているらしい。
「じゃあ俺たちもコスチュームショップ行こうか?」
「悠介君はダメだ。君が行くと卑猥なコスばかり勧めてくるからね」
バレテーラ。
というか最近火恋先輩が完全にレイヤーとして目覚め始めている。
アニメで気に入ったコスを見つけると、素材を用意して自作を始めるらしい。
彼女がオタサーの姫としてデビューする日も近いかもしれない。
玲愛さんが頭抱えそう。
「じゃあ悠介さんはわたしと一緒にゲーセン回りましょう」
「わかった」
火恋先輩と静さんがゲーセンから出ていくのを見送ってから、俺は雷火ちゃんとともに店内を見て回る。
店内は放課後ということもあって学生が多く、リズムゲームやメダルゲームに人が集まっていた。
「雷火ちゃんはゲームセンターってよく来る?」
「いえ、実は帰国してから数回しか来たことないんです。女一人で入るのってちょっと勇気いるんですよ」
「あー確かに。ゲームセンター一人で来るストイックな女性ってあんまり聞かないしね。大体皆友達連れだ」
「オタクとしてゲーセンはおさえておきたかったんですよ。ただ、この音量はちょっと苦手かもです」
「確かにジャカジャカと体に響くようなゲーム音は、苦手な人いるね」
俺たちはエスカレーターに乗りながら、店内にある巨大スクリーンに映る
『Pの皆~美子たちの新曲聞いてくれた~?』
「大スクリーンで見るミコちゃんはマジ天使ですね」
最近のバーチャルアイドルは、透過スクリーンで三次元に出てくるらしい。日本の技術力の高さ半端ない。
更につい最近では動画サイトでYoutuberみたいに生配信をしていたとか。もしかしたらオタクの野望である、モニターの中に入るというのは無理かもしれないが、2次元のキャラを現実世界に具現化するということは可能になるかもしれない。
「悠介さん美子ちゃんパンツ見えそう!」
「雷火ちゃん、女の子がバーチャルアイドルのパンツではしゃいじゃ――」
「見えた!」
「何っ!?」
二人してスクリーンに釘付けになる。
「いや~美子ちゃん縞々でしたね」
「最近は規制で真っ黒のスパッツが多い中、ちゃんと作り込んでくれるのはK○NAMIの心意気を感じるよね」
そんな話をしながらエスカレーターを降りると【ガンニョム新型
「ん、なんか新しいフロア出来てますね」
「この階全部ガンニョム専用フロアか。昔あったコクピット型筐体のやつあるのかな?」
「戦場の運命ですね。わたし一回だけ乗りましたけど、凄く面白かったです」
「俺は最初やったときは、酔いまくって新手の拷問器具かと思ったよ」
360度モニターマジ半端ない。
まぁ相野が好きだから乗ってるうちに慣れたが。
俺は雷火ちゃんに続いて新フロアに入る。
そこにはガンニョムの格闘ゲームや、カードゲーム筐体が並べられていて、この店のガンニョム推しが伺える。
中には全く関係ないロボットも混じっていたが、そのへんはご愛嬌だろう。
「どうする
「いやー格ゲーはちょっと、皆同じ機体ばっかり使ってるじゃないですか」
画面にはOVAでリリースされている黒い角つきの機体と、くるくる回転しながら二丁のビームピストルを乱射してるガンニョムしか映ってなかった。
「あぁやっぱり、パンジーとマワールしかいないな」
「わたし家庭用しかやったことないんですけど、ネットで凄く強いって言われてますよね。修正はいんないんですかね?」
「入ったけどまだ強いんだよ。一部の店舗では禁止機体に指定されてるくらいだし」
「でしょうね、あの機体1秒間の
「しかも弾道ホーミングついてる上に、
「低コストの機体がお通夜状態じゃないですか」
「雷火ちゃんガンニョムにも結構詳しいんだね」
「オタとしてガンニョムは外せませんよ」
「好きなガンニョムは?」
「00MZ小隊です。後はセンティネルもいいですね、ALIECEシステムが自動で動いて、パイロットを守るシーンが激熱です」
「俺は無性に君を抱きしめたくなった」
「な、なんでですか!? いいですけど」
「00は出るかなと思ったけど、まさかセンティネルまででるとは思わなかった」
雷火ちゃんの手をきゅっと握ると、エヘーっとはにかんでくれた。
守りたいこの笑顔。
二人して格ゲーはパス。ゲーセンでしかできないものをしようということになり、何か珍しいものがないか探していると人だかりができているスペースがあった。
「何だイベントかな?」
二人で覗き込むと、そこには大型のゲーム筐体が四つ並んでいた。
「あっ、あれってパイロットシミュレーターのやつじゃないですか?」
「あー戦場の運命の新筐体か……」
以前あった筐体はガンニョムのコクピットを模した、丸いカプセル型だったが、今回のはエントリー○ラグのような、円筒状の形をしている。
「あっ悠介さん、あれ複座みたいですよ」
雷火ちゃんが近くにあった、説明用の看板を指さす。
「とうとう二人乗りの時代がきたか。どうする? せっかくだからこれやる?」
「はい、やりたいです! 複座型なら悠介さんと出撃できますね!」
「よし行くぞ新兵。俺のことは少佐と呼べ」
「はい、少佐!」
二人で新筐体の前に作られている列に並んだ。
――――――――
水咲編の後編に入り、綺羅星が登場します。
総文量的には3巻目に突入しました。
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