第9話 死闘
「ぬうっ!!」
俺は閃光の如き乱撃を受け続けていた。
耐久力は俺、力と速度は魔物が上だ。
久々の命がけの戦いに笑みがこぼれる。
やはり戦いとはこうでなくては!
惜しむらくは敵の攻撃がワンパターンなことだろう。
先ほどまでは受けるだけで精一杯だった。
だがすでに見切った。
確かにパワーもスピードも精確さもすさまじいが、この魔物には欠点がある。
攻撃が単調でフェイントを一切使ってこない点だ。
強すぎる殺意と目線でどこを狙っているのかバレバレなのだ。
いかに素早い攻撃でもそこに来ると分かっていれば対処できる。
俺は斬撃の嵐をすべて捌き、一歩ずつ進んでいく。
間合いに入ったら一撃で終わらせてくれる!
だが俺が近づいた瞬間、それは起こった。
魔物の背中から第3、第4のカマが飛び出てきたのだ。
「なんと!?」
敵の手数が二倍になり、俺は再び防戦一方になる。
だが問題ない。
目が慣れればすぐ対処できる。少しの辛抱だ。
僅かに気を緩めたのがいけなかったのだろう。
魔物は俺を抱きしめるように突進し、両手両足を捕んできたのだ。
「むぅっ!?」
魔物は両手両足を封じられた俺を引き寄せると、鋭い牙の生えた口を大きく広げた。
このまま食い殺すつもりか!?
俺は慌てて振りほどこうとするが、がっしりと捕まれ動けない。
慌てる俺の視界に頼りがいのある仲間の姿が映った。
ルクスだ。
魔物の死角から近づいたルクスが剣を魔物の首へと一閃させる。
直前で危険を察知した魔物は紙一重でそれを躱し、俺の足から手を放してルクスを迎撃しようとした。
そのスキを俺は逃さなかった。
俺は渾身の蹴りを放つ。
音を置き去りにしたその一撃は魔物のカマを粉々に砕く。
それに怯んだカマキリの両腕をルクスの斬撃が切り落とす。
魔物の腕は残り1本。
自由の身になった俺はルクスと魔物を挟撃しようとするが距離を取られてしまう。
中々に素早い。
じりじりと距離を詰める俺たちの後ろで巨大な火柱が立つ。
薄暗くなった空を紅蓮に染め上げるそれは俺たちにとって馴染み深いものだった。
マナの極大魔法『フレアランス』だ。
岩すら瞬時に蒸発させるほどの熱量に思わず魔物は後ずさる。
瞬時に反転して羽を広げると、凄まじい速度で低空飛行していく。
「まずい! 逃げる気だぞ!」
そう叫ぶルクスと共に追いかけるが、魔物の方が速い。
逃げられる!
そう思った瞬間だった。
逃げようとする魔物の前に逃亡を遮る人影が現れた。
剣聖のザンだ。
逃亡を予期して回りこんでいたのだろう。
さすがに無茶だ!
出血でザンの足元はふらついている。
「ダメだ! ザン、無理をするな!」
ザンの身を案じて叫ぶ俺だが、ザンは怒ったように叫び返した。
「俺を誰だと思ってる!? 剣聖ザンだぞ! 俺を、仲間を信じろや!!」
迫る魔物に一歩も引かずにザンは構える。
直後、ザンへと閃光が走った。
「ギギギィ!?」
魔物は驚愕の叫びを漏らす。
ザンが振り下ろされたカマへとカウンターを合わせたのだ。
硬い甲殻の隙間を縫うような斬撃で、敵の最後の腕と羽を切断。
まさに神業といえる。
羽を失い、倒れこんだ魔物に俺は一瞬で近づく。
そして魔物に組みつくと、俺は全力で空へと放り投げた。
「マナ!! あとは頼んだぞ!!」
「任せなさい! 筋肉ダルマ!!」
逃げ場のない空中でもがく魔物をマナの『フレアランス』が包み込む。
熱量と衝撃で粉々になった魔物は肉片一つ残ることなくこの世から消え去ったのだった。
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