第53話:再開のからくり
「これからすべきことは決まっているように思います。だからこそ、リオンもここへきたんですよね」
セイラが微笑む。
「山岳の民に、会うことか。しかし、俺は彼らの仲間を何人殺してきたか。いまさら俺が姿を現したところで、なおさら彼らを傷つけるだけじゃないか」
「それでも、リオンは会わなければなりません」
セイラが、まるで別人のようにみえる。強い意志を感じた。
しばらくして、ようやく、リオンは小さく頷いた。自分でも、そうすることしかないことは分かっていた。分かっていながら、こんなところで数日間も無為に過ごしていた。
自分の罪に向き合うことのできない、リオンの弱さでしか無い。
しかしセイラが現れて、背中を押され、前へ踏み出すことを決意した。
「セイラは、俺の行動を読んで、ここを見つけ出したのか?」
先ほどから疑問に思っていたことをたずねる。
タリル山岳も裾野は広い。リオンが北に向かうことを読んだとしても、簡単に見つけられるとは思わない。もしそう簡単にいくとしたら、帝国軍も同じようにここへ来られることになる。
セイラが黙って、リオンの首元を指差す。
その意図することに気づいて、リオンは首から下げて服の内側に入っていたペンダントを取り出した。ペンダントは白く輝きを放っている。
「これを追ってきました」
「ペンダントにそんな効果が?」
「いえ。普通は無理ですよ。お話しした通り、魔力を込めて人それぞれ違った光を放つ、装飾用のものです」
「ではどうして……」
「ここにこもっているのは私の魔力ですよ。それに私の魔道具があれば、離れていても見つけるのは造作もないことです」
セイラが勝ち誇ったように笑う。
セイラがリオンにこのペンダントを渡したのには、そういった意図があったのだと、はじめて知る。完全にしてやられた。しかしそのおかげで、二人はまた合流できた。
「さあ、そろそろ何があったのか教えてください」
セイラが説明をうながす。
リオンは、国立書庫で見たことをすべて話した。そしてタリル旅団の名簿をセイラに手渡した。セイラは驚く様子もなく冷静に話を聞き、名簿を興味深そうに読みふけった。
「あまり驚かないんだな」
「帝国軍に違和感は覚えていましたからね。確信はありませんでしたけど」
「もしかしてセイラは、帝国を探るために潜入していたのか……?」
「さあどうでしょうねぇ」
セイラがはぐらかす。その表情をみても、何を考えているのか伺い知ることはできなかった。思いの外、底知れない女だ。
真実を知って数日間も打ちひしがれていた自分が、ちっぽけなものに思えてくる。リオンは、情けなさを覚えてため息をついた。
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