第二十三夜:悪夢の怪盗と鏡の国
「アルマは女に手を出さないかもしれない。まぁ、ぼくもなるべく手は出さないんだけどね。ただし、犯罪者を別にして、の話だ」
「……そう」
ぽつり、と零す司教に彼、メアは眼鏡を調整しながら言った。
「[教団]は手品師で構成された小規模な犯罪組織だが、司教と呼ばれている輩が騎士並みの実力を持つために恐れられている。それはそうだな、とぼくは思うね。騎士と互角に渡りあえて、なおかつ手にする武装も魔道具。どこまで騎士と渡り合う気だい?」
「そんなつもりは、ない」
それに司教ルージュは答えた。あいかわらずフードに顔を隠した状態ではあるが、見えているのだろうか?
「まぁ、いい。ぼくは君に負けるつもりなんてないからね。じゃあ」
そういいながらメアは真っ直ぐにルージュを見つめた。フードからわずかに覗いた顔も、長い前髪で覆われて見えない。しかし、相手が自分を見ているのなら問題はない。
「――罪を暴きにきた」
メアの目に幾何学の紋様が浮かび上がる。それは彼の手品、相手に幻覚症状を与える
「っ!?」
それを直視してしまったルージュがわずかにたじろぐ。しかし、それに対しメアの反応はいまいちだった。
(何も、見えない?)
彼の《幻世界》を受けた相手が見る光景は、彼の目に映る。
それが反応なし。何も見えず、視界は鋼鉄製の[教団]移動要塞内のままだ。
――と、不意に。
「……こっち」
どこからともなくその呟きが聞こえ、爆発的な光がメアの視界に炸裂した。
「っ!?」
突然のことにそれを直視してしまったメアは体勢を崩した。その直後、頬を何かが伝い堕ちる。
(……血?)
回復した視界、袖で拭ったそれは紛れも無くメアの血だった。一体、いつの間に……そう思う間もなくルージュの声が投げかけられる。
「どうしたの?」
「白々しいな」
ルージュは依然としてメアの目の前に立っていた。小首を傾げて問う仕草には愛らしさがあったが、それどころじゃない。彼女の手品は危険すぎる。メアの直感がそう告げていた。
「……もう、終わり?」
「違うさ」
そう言ってメアは懐からハンカチを取り出した。
「さて、よく見ておくんだな。じゃないと後悔するよ」
「……見る」
緊張した様子もなく、ルージュはメアが取り出したハンカチを見つめた。それに対しメアは
「それじゃ――ふっ」
ハンカチに息を吹きかける。たったそれだけのことでハンカチは真っ二つに裂けた。
「……すごい」
「今のは、俗にいうカマイタチというやつさ」
「カマ、いたち?」
小首を傾げるルージュにメアは「そう」と頷く。
「まぁ、簡単に言えば見えない刃物かな」
「刃物?」
「そう。えっと、騎士剣みたいなやつさ」
「騎士、剣?」
パッと思い浮かばないのか、また首を傾げるルージュにメアは右腕を振ってジェスチャーマ混じりに伝えようとする。
「こう、前に突き出したりするのさ」
「……分かった。……あっ」
「ご協力ありがとう、お嬢さん」
メアが意地悪く笑う。その右手にはルージュが思い描いたものと同じ騎士剣が握りしめられていた。
彼の《幻世界》の応用、相手が想像したものなどを創造する手品。
詳しいことを話すと、それは実体化したわけではなく、相手の目に剣があるように見えているだけ。だがそれに斬られた、と思えば斬られた痛みを感じる。
つまり、相手に幻視・幻触覚を与える手品だ。
「さて、じゃあ遠慮なく。安心していいよ。峰打ちにしとくから」
そう言ってメアは疾走。アルマにも負けない運動能力でたちまちのうちにルージュとの間合いを詰める。
「――はっ!」
気合一閃、ルージュの腹部に剣を叩き込むメアだったが、それは霧散するルージュの体を貫通して空ぶった。
「なっ!?」
そして次の瞬間、ルージュだったものが光を放ち、またもやメアの視界を奪った!
「くっ! 同じ手を!?」
ならば、また正体不明の手品が飛んでくるはず。メアは聴覚を最大限に生かして音を探った。しかし。
「くぅ、あ!?」
電撃にも似た痛みが左足を襲う。そこから血が流れていくのを感じる。
(なん、だ?)
手品による幻覚を自分に施してその場を凌ぐメア。その背後にいつの間にかルージュが立っていた。
「んっ。うまくいってる」
この結果に満足しているのか、ルージュは一人頷く。しかし納得がいかないのはメアだ。
「どういう、ことだ?」
「知らなくても、いい」
そうつき返すルージュにメアは眉を吊り上げる。
「なら、自分の手で暴くまでさ」
「……じょーとー」
上等、と言ったつもりなのだろうか? 踏み込もうとしたメアはしかし、ルージュの背後で瞬くそれに気付き足を止めた。
「わたしの、手品」
ルージュの背に瞬くのは流星。いや、違う。
(光?)
とんでもない速度で光が飛び交っている。それが流星の如く疾走してルージュを取り巻いているのだ。
「光を媒介にしてる? ふざけすぎだろう」
確かに、中には鉄や建築物を媒介にする手品師もいるが、光は反則だろう。
光なんて奪うことはできない。そう思うメアの眼前では今も光がさらに速度を上げて飛び交う。それが耳障りな音を立てていく。
「さよなら」
その言葉を合図に、光がさらに速度を上げた。もはや遅れてやってくる爆音は音の凶器だ。その真っ只中にいてルージュの声は掻き消えもしない。
「っ!?」
突然光が軌道を逸らし、まっすぐにメアへと飛びかかってきた。それをメアはかろうじて飛んでかわす。
「はっ!?」
しかし、そこに音の追撃が襲い掛かる。凶器と化した音の爆音はメアの耳をつんざき、聴力を奪い取る。体がびりびりと振るえろくに力が入らない。
「くっそ」
しかしそこで転がっている暇も無い。大きな放物線を描いて引き返してくる光からメアは逃れようとする。
「油断、大敵」
「しまっ」
さらにルージュが放った二つ目の光がメアの右腕を貫いた。
「くっ」
それでも一つ目の光は死ぬ気でかわす。音の凶器にきりもみ状に吹き飛ばされながらも命があったのは奇跡としか言いようがない。
「……残念」
虚空で光が停止する。まるで帯電しているかのように周囲にばちばちと火花を散らしながらその標準をメアへと向けなおしている。
「ちっ」
再度幻覚で貫かれた右腕の痛みを誤魔化すメア。まだ一分にも満たない時間でメアは瀕死といってもいい状態にまで追い詰められていた。
「楽に、してあげる」
「けっこう!」
メアが叫び返すと同時、二つの光が飛び掛ってくる。それをメアはしゃがんで回避する。
「くっ」
背を押す爆音に押しつぶされそうになる。しかし、背後から再び襲い掛かってくるであろう光をかわさないと。そう思い視線を背後に向けたメアはそこで二つの光が霧散するのを目にした。
(どういう、ことだ?)
直後、空間が歪み、何かが吹き飛ばされた。その正体は僧服を纏った司教ルージュ。
「……あちゃちゃ」
ゆったりと身を起こすルージュにメアはハッと我に戻った。
「なるほど」
口元に不敵な笑みを浮かべてメアは立ち上がった。本当なら手と足から血が流れ続けているのだろうが、幻覚による応急処置でそれも今は気にしない。
「分かったよ」
「……バレた?」
抑揚のない声にはかすかな困惑が混じっている。それにメアは眼鏡を直しながら言及した。
「光じゃないんだな、君の手品道具」
「……うん」
「あっさりと白状するんだな」
「だって、隠しても意味はない。……〝ミイラ男〟は自分だけの
「そうか」
〝ミイラ男〟、それは恐らく、あの時包帯で体を覆っていた男のことだろうな、と検討をつけながらメアは考えた。
光が手品道具でないのなら、一体何が手品道具なのか。
それが分からなければ対策も練れないのだが、メアはある確信を手に入れた。
「今、自分の手品を誇れ、そう言ったな。じゃあ、それも誇ったらどうだ?」
「……うん」
ルージュはこくり、と頷くと自分の手品を白状した。
「わたしの手品道具。……それは、水」
「水?」
メアの問いにルージュはこくりと頷く。水。それもまた光と同じぐらいに漠然としている。しかし、水なんてどこにある?
「……空気中には、水分が含まれてる。一応、水……といえる」
「本当に、ふざけた道具だな」
「よく、言われる」
何がおかしいのか、くすりと微笑うルージュにメアは周囲に警戒した。いつ、あの光の攻撃がきてもいいように。
「水は、鏡のようなもの。だから、わたしは、光を反射したり、屈折させたり、収束させたり、拡散させたり、できる」
「それが、種か」
「……そう」
反射させて光を武器に。屈折させて追跡を。収束させて停止。拡散させて目潰しを。
それが、ルージュという手品師の手品だという。
「同じように、光を屈折させて、姿を消したり、幻を作ったり、した」
「そりゃ厄介だな」
「……うん」
「でも、負けられない」
「……そう」
うつむくルージュ。その周囲に無数の光が収束していく。それに対し、メアも眼鏡を調える。そして、一言。
「――《幻世界》!」
「――《涙のプール》」
***
メアは思いのほか苦戦していた。
自分の身を隠す必要がなくなったからか、ルージュが攻撃に回してくる光ははるかに数が増し、現在七つ。しかも必ずルージュの手元から放たないといけない、というわけじゃないため、幾度と無く目の前で光が炸裂したり、という事態があった。
(数が増えた分、威力は下がったか)
数を増やし、操作性を増す為か、音の凶器はなくなっていた。しかし、三百六十度、全方角からの光の攻撃は中々に辛い。
「なんとか幻覚を見せられれば」
何度も《幻世界》を試しているのだが効果はない。
もしかしたら光を屈折させて別方向から自分を見ているのかもしれない。とにかく、相手が見ないといけない限り、こちらは無力に等しいのだ。
「っと!」
目の前で光が瞬くのを見てメアは横飛びにかわした。直後、すぐ横を通過する光線。
「……かかった」
「っ」
そんな声が耳元で囁かれた。慌てて振り返った先には当然の如くルージュの姿はない。
「音まで反響させられるわけか」
しかし、「かかった」とはなんだ?
メアがその言葉の意味について考えあぐねていると、自分の周囲で異変が起こった。
周囲を無数の光が囲む。完全に光に包囲されたメアが何事かと警戒しているそこへ、光の光線が放たれる。
「これでぼくを捕まえたつもりか?」
飛来する光線をかわすメア。しかし光は垂直に反射しながら再び飛んできた。
「何度やっても」
かわす。
「同じ、だと」
かわす。
「言ってるだろ」
かわ――そうとして不意に足元の感覚がなくなった。ぬめる床に足を取られたメアの頭上を光が通過していく。
(血、か)
自分で見えなくしている血。それに足を取られたようだった。そして、一度血を意識してしまうと何もなかった床にぼんやりと赤い色が浮かび上がってくる。
自分が意識したから、幻視させていた血が見え始めているようだ。
「これが狙いか?」
おもわず呟くメアに光の壁の先に佇むルージュがこくりと頷く。どうやらこちらの声も反射させているらしい。
「それじゃ、甘いね」
血でぬめる床をおもいっきり踏みしめながらメアは立ち上がった。背後で不穏な音を響かせながら反射された光が戻ってくる。
「血で足が滑れば、かわせない。まぁ、あの性犯罪者ならそうなんだろうけど」
脳裏に浮かぶ友でありライバルである少年の間抜けな顔を思い浮かべながらメアは笑った。ルージュが首を傾げる。
「なにが、おかしいの?」
「おかしいね。あぁ、おかしい」
そう言ってメアは殺傷能力を高めていってる光を見つめながら腕を掲げた。
――掲げるのは三つの指と三つの勝利宣言。
「一つ。ぼくにとってこんなのはピンチでもなんでもないってこと!」
そう言って滑らかな動作で足を滑らせる。その頬を数瞬遅れて光が霞める。
メアは自分の血で滑る床をまるで氷上を駆けるようにバランスよく舞う。
「二つ。君の目的は分かってる」
「……目的?」
「あぁ。分からない方がどうかしてる」
そう言ってメアは反射されていく光を見つめながら、自分を包囲する光の壁を眺め回した。その光の壁を越してルージュが前髪で隠された目で何かを見守っていた。
「この壁、徐々に狭まっている。光線に注意させて壁による攻撃を意識させないようにしていたみたいだね」
でも助かった、とメアは続ける。そうしながら飛んできた光線を呆気なくかわしていく。
そうしながら思いっきり足を振り上げた。靴底に着いた血が綺麗なアーチを描く。
「今、アーチに見えたかな?」
「っ!」
直後、血が固まり真っ赤なアーチを作り出した。そしてそのアーチを使って滑走、迫り来る光の壁を飛び越えた。
「三つ。これでネタ切れなら、君はもう勝てない」
「っ」
軽やかに着地するメア。その目の前でルージュが息を飲むのが分かった。
そんな彼女にメアは「あぁ」と付け加える。
「アルマも三つの勝利宣言をしてるみたいだけど、これはぼくと性犯罪者が尊敬する、命の恩人の口癖だ。覚えておくがいい」
あいつのパクリと思われたら杓だからな。そう付け加えるとメアは肩をすくめた。
「さぁ、おとなしく降伏するんだ」
「……やだ」
「なっ」
直後、一閃の光線が弾けた。それを危ういところでかわしたメアだったが、その勢いで眼鏡が飛ばされた。「あっ」と小さく呟くメアの目の前で一切の容赦もなく光の束が眼鏡に殺到する。
「……これで、形勢逆転」
呟きながらメアを振り向くルージュ。そしてメアの身動きを封じるために光の束をメアの周囲に展開させる。先程の光の壁をさらに小さくした、鳥かごとも言える壁。
「参ったな」
カゴの中でちいさく愚痴るメアにルージュは頷きながら
「わたしも、困ってる」
と零した。どういうことだ、と問おうとしたメアを、必殺の光線が襲った。
***
「……終わり」
そう呟くルージュの眼前には身体中をずたずたに引き裂かれた少年の遺体が転がっていた。それから視線を逸らすルージュの瞳にはわずかに涙が浮かんでいる。
「……ジャック」
何を思ったのか、虚空へと声をかけるルージュだが、返事はなかった。
それに疑問を感じ首を傾げたルージュは再度ジャックへと話し掛けた。
「ジャック? 死体、お願い」
なるべく背後の遺体を意識しないよう、素っ気無く懇願するルージュにそれでもジャックの下卑た笑い声は響かなかった。
「ジャック?」
「――彼は今、忙しいみたいだよ」
「えっ」
バッと振り向いたルージュの瞳がカッと見開く。振り返った先、そこには床一面を赤く染めた、無残な遺体が転がっているはずなのだが――どういったわけか、それは二本の足でしっかりと立ち上がっていた。
「誰が死体だって?」
「うそ。なんで?」
驚愕に声が震えるルージュ。そんな彼女へとゆっくり、ゆっくりと身体中に風穴を開けた少年が近付いていく。空洞と化した胸からは血が泉のように噴き出しているが、それでも歩みは止まらない。
「いや」
一歩後ずさりながらルージュが両手を突き出す。その手から拒絶の光線が瞬き、眼前の動く遺体を貫いていくが、傷口はみるみるうちに塞がっていく。
「いや。いや!」
光線の数は天井知らずに増えていき、数十の光線が豪雨のように吹き荒れる。
腕が千切れとび、足が砕け散り、顔面が砕けてもメアの歩みは止まらない。
「いやっ!」
動く遺体は留まる事を知らず、身体中の傷を癒しながら、ゆっくりと口を開いた。
その口から血が零れるが、声は恐ろしいほどに澄んでいた。
「知らないかい? ぼくはナイトメアと呼ばれている怪盗なんだよ」
「いや!」
自身を〝悪夢〟と名乗りながら少年は右手をゆっくりと上げた。ありえない方向に捻れた指が、吹き飛んだ指が再生しながら、その上に三つの宣言を突きつける。
「〝悪夢〟という由来は、ぼくの《幻世界》に由来している。それがまず一つ」
手品道具である眼鏡をかけていないにも関わらず、その双眸に《幻世界》発露時の紋様が浮かび上がっている。手品道具無しでの手品はまさしく悪夢。
「そしてもう一つの由来。それは悪人の夢(野望)を壊すから」
声が徐々に力強くなる。ルージュは自分でも気付かないうちに《涙のプール》の発動を止めてしまっていた。行動しないといけないのに、できない。
「あぁ、一つ言い忘れてたかな。ぼくの手品道具なんだけどね」
不意に立ち止まり、ニッとほくそ笑むメア。そして血まみれの口がゆっくりと開いていき―
「――ぼくの手品道具は、眼鏡じゃない!」
「――――っ」
声は真後ろから。ルージュが振り返ると同時、空間に亀裂が走り、砕け散っていく。
そして砕け散った世界から広がるのは――さきほどまでの戦場。
***
「きゃっ」
両目に紋様を浮かべたメアはそのままルージュを組み伏せると身動きを封じた。
その表情は苦痛に満ちている。戦闘による痛みが限界を迎えそうになっているのだ。
「いいか、ぼくの手品道具は〈レンズ〉。だからアルマも、そして君も〈眼鏡〉が手品道具だと思ったんだろう? 甘い。あれはフェイク。本命を隠すための道具さ」
「どう、ぐ?」
「そう。あれは伊達で本命の道具じゃない。ぼくの道具はコンタクトレンズ。これなら簡単には奪われないからね。さぁ、それじゃ、おとな――し――く……」
「?」
小首を傾げるルージュ。その前方では何故か顔を真っ赤にしたメアの姿。
そう言えば、視界がいつもより開けてるような? そう思ったルージュはその原因に気付き、ぽつりと
「髪」
そう。顔を覆い隠すように伸びた前髪は押し倒された拍子にかきあげられ、ルージュの幼さの残る可愛らしい顔を露わにしていた。そして、もう一つ。
「むね、苦しい……」
「っ―――」
メアの手が押さえつけているのはルージュの胸。しかもこちらは顔に似合わずでかい。
アンバランスでいて何故か不思議な魅力を生み出しているルージュは今、どういう状況かというと――
まず、メアに押し倒されている。
そして、胸を押さえつけられている。
そして、大きな瞳は涙で潤んでいる。
きわめつけに、超がつくほどの美少女。
「あ―――――」
そして最後に加えるなら。
メアは女性への免疫力がまったくない。それもソールとマーニにすら赤面するほどに。
「……あれ?」
そして気付けばメアは意識を失っていて、ルージュは一人ぽかんとした様子で倒れこんだ少年の顔を覗きこんだ。
「……手加減、してくれた?」
ぺちぺちと頬を叩く。反応無し。
「ジャック」
対応について尋ねたが、反応はなかった。
ルージュは意識を失った少年をしばらくみつめたまま、こくりと頷いた。
「どろー」
つまり、引き分け。勝負はまたいつか、と。
それも、こんな殺し合いじみたことじゃない勝負で、と願いながら。
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