第十七夜:紅蓮の騎士・再来
「詐欺師は逃がしたか。だが、だからと言って貴様らを逃がすわけにはいかんな、虫けら」
「ヤベエな、こりゃ」
ダニエル・フォン・カスパール。煙を媒介に爆発を引き起こす炎の化身。この場所では不利なんてもんじゃないぞとアルマは悪態を吐いた。
「……メア、お前の手品で」
「それは無理だ、アルマ」
「どういうことだ?」
素っ気無く返したメアを問いただせば彼は肩をすくめながら
「だめだった。むしろ火に油を注ぐようなものだったよ」
「じ、じゃあリッカ」
「彼女の吹雪は完全に対処されてしまった。凝縮した炎でたちまち蒸発だ」
「ま、まじか」
サンデーは徒手空拳だし、マーニ達のシャボン玉で爆発を起こしても逆に利用されるだけだ。おれだって湖があったからダニエルの手品を利用して雨を降らせてやっとだったのに。ここには水がない。そしてアルマの持つ手品は変装したりあらゆる〈物〉を消滅させたり、切れ味を変えられたりはするが……以前、ありとあらゆる物理攻撃が通用しなかったことが思い出される。
「逃げ場はないぞ、虫けらども。投降するなら今のうちだ」
ダニエルの言うとおり、逃げ場はない。ここは地下牢獄で、《サジタリウス》で穴を開けて脱出なんて無理だし、通路は進むか退くかの二択。退いてもいずれは行き止まりだし、ただ一つの出入り口には炎を纏ったダニエルが屹然とした態度で立っている。
「さぁ、どうする?」
それが分かっているのだろう、ダニエルは嘲笑を浮かべながらアルマ達を見据えていた。
その手が不意に持ち上がる。この動作はまさか――っ!
「お前ら、横に逃げろ!」
そう叫びながら先程まで自分がいた牢屋へ飛び込むアルマ。向かい側、教祖が投獄されていた牢屋にはメアとリッカ。こちらにはマーニにソール、サンデーといつもの面々だ。
そして、先程までアルマ達が立っていた場所を灼熱の波が襲った。
「ちっ。避けられたか」
牢屋の外でダニエルが舌を打つのが聞こえた。今の爆発で通路全体に煙が充満した。
「これはヤバいぞ」
煙を吸わないように身を低くするアルマ。その視線の先でリッカが袋を広げたのが目に映る。
「《メリー・クリスマス》!」
直後、凍てつくような風が吹き、たちまち視界を白一色に染めてしまう。おかげで煙は掻き消えたが長くはもたないだろう。
「またか。同じ手は通用しないぞ、虫けら」
ダニエルのいる辺りの熱量が増した。恐らく、メアが言っていたように炎を凝縮して吹雪を蒸発させているのだろう。
「あぁ、そうだ。貴様らには理解できんかもしれんが、大量の水が非常に高い物質と接触する事で何が起きると思う?」
「ま・さ・か」
いやいやいや、さすがに地下牢獄でそれを実行に移すか? いや、移しかねない。
アルマは向かい側の牢屋にいる三人に向かって大声で叫んだ。
「お前ら、早く逃げろ!」
《サジタリウス》を展開して隣の牢屋へと逃げ込む。その向かい側ではリッカの吹雪で脆くなった壁をメアが蹴り倒していたところだった。あの様子だと、メアも何が起こるか理解しているらしい。アルマは立ち止まる事なく奥へ奥へと逃げた。
そして。階下へと続く階段へと飛び込んだ直後、すさまじい爆発にアルマ達は吹き飛ばされた。
「やりやがった! マジでやりやがった!」
「あぁ、ほんと、あいつはふざけてる!」
アルマとメアがぼやく中、他の面々は今の爆発がなんなのか考えあぐねているようだった。
「ねぇ、今の爆発、なに? なんか、あれも手品なんて信じたくないんだけど」
「手品じゃねーよ。あれは水蒸気爆発だ」
「水蒸気って……あたしの手品、逆に利用されたってこと?」
リッカが「最悪」と呻く。あの騎士はリッカの《メリー・クリスマス》を無力化するだけではなく、それを利用して半端じゃない爆発を引き起こしたのだ。これで彼の支配する炎の質量は格段に増したはずだ。いや、増している。階下にいてもその熱さが伝わってきそうほど、すさまじかった。
「絶体絶命だね~」
サンデーがほわほわと答える。実際、絶体絶命だ。この通路も無限に伸びているわけじゃなく、いつかは追い詰められる。進んでも行き止まり、退いても灼熱の騎士。
まじでこれ、どうするよ。
「アルマ、君の手品に便利なものはないのかい?」
「つってもなぁ。なにもねーよ」
「ついでに言うけどね? あたしの氷分身、一瞬で解けちゃったわよ。囮になるかとも思ったけど、だめね」
「とにかく、今は逃げながらなにか打開策を練るしかなさそうだな」
アルマの提案にしかし面々は完全に戦意を失ってしまっている。
「おいおい」
あまりの凄惨さにアルマはため息を吐いてしまった。一刻も早く[教団]の連中を追わないといけないのに、なんでこんなとこを足止めを……
「って、そうか、そうだよな」
「アルマ? どうしたの?」
ぷらぷらと尻尾を振っていたサンデーがこちらを見上げてくる。そんなサンデーにアルマはきっぱりと言ったのである。
「ちょっと交渉してくるわ」
***
「命乞いでもするか? 反吐が出る」
ダニエルが煙草を吐き捨て、新しい煙草に火をつける。それを見てちょっと不思議に思ったんだけど、炎を纏っていて衣服や煙草は焼けないんだな。体は彼の手品だからって説明が付くが、衣服とかは、なぁ?
「命乞いじゃねーよ。お前、誤解してるって」
「ほぉ、命乞いかと思えば狂言か。本当に、反吐が出そうだ」
心から軽蔑した眼差しでそう蔑むダニエルにアルマは「あのな」と前振りしながら
「おれは無実なんだよ。[教団]の連中が教祖を脱獄させるためにおれを利用しただけ。あの帽子被ってた男も[教団]の人間で、多分城内について調べるためのスパイなんだと思う」
「それで?」
「いや、それでって……だから、おれはむ」
「無実、だと? 分かっていないな。たとえそれが事実だとして、貴様が犯した罪があるであろう? 各地での盗難、強いては[王室]の騎士から宝を奪うという国家侮辱罪、さらには性犯罪。きさまのようなゴミ屑、今すぐ消し炭にしてやりたいぐらいだ」
「いや、性犯罪はマジでごか」
「黙れ!」
「どわっ!?」
轟!と唸る炎におもわず身を引いてしまったアルマにダニエルはもう鬼も逃げそうな形相で一歩。
「貴様のような虫けらがはびこるから、犯罪は消えん。ならば、貴様を見せしめにしてやろうじゃないか」
「いや、おい待て。ちょっと待とうか」
一歩。ダニエルが一歩踏み出す度に床が焼け焦がれていく。
「安心しろ、虫けら。殺しはしない。ただ逃げられんように手足を消し炭にするだけだ」
「いや死ぬって! それ死ぬ!」
メラメラと燃える瞳がアルマを真っ直ぐに射抜いた。彼の右腕に凝縮する炎。あ、これはやべーぞ。
「大人しく死ね、劣等」
「おもいっきり死ねっつったな、おい!?」
右腕の炎が一筋の矢となって放たれる。その、恐ろしい速度と熱量の前に身動きの取れないアルマを足元から巻き起こった爆発が襲う。
「ひっぎじゃああ!?」
足元の爆発に巻き込まれ天井に叩きつけられるアルマ。その直下をダニエルの炎が通過していく。
「いでっ!」
そして背中をしたたかに打ちつけたアルマの首をメアが引っ張った。
「まったく、お前は何がしたいんだ」
「お、お前ら、おれを殺す気か?」
「ぼくは君が死んでもどうでもいい」
素っ気無く答えるメアの後ろで先程の爆発を引き起こした張本人、マーニ&ソールが「そもそも慣れてるでしょ」って顔でこちらを見やがる。
「もうちょいソフトに助けられねーのかよ」
「これでもソフトですー」
「爆発以外に何をしろって言うのさ」
「あの足場とかになるシャボンは?」
打ち付けた背中を押さえながら聞けばマーニが「バカ?」と言ってきた。
「あの炎じゃシャボン玉も解けるわよ。それともなに? シャボン玉破裂して落ちた先の炎に体を真っ二つにしてほしかった?」
「……ごめん、助かりました」
「「それでよし」」
得意げに頷くソールとマーニにメアが「それで」と話しかけてくる。
「お取り込み中悪いが、あの騎士、よけい機嫌を悪くしたみたいだぞ」
メアの指差す先、もはやあまりの熱さに溶解してしまった牢屋の壁を踏み砕きながらダニエルが薄ら寒い笑みを浮かべながら近寄ってきていた。
「あぁ、ワタシが甘かったらしい。今度は手加減などしない。――殺す」
「に、逃げるぞ!」
無論、アルマ達は奥へと逃げていった。
***
「くそっ! もう行き止まりかよ」
「さぁ、おとなしくしろ虫けらども」
とうとうアルマ達は追い詰められてしまった。振り返った先には尋常ならざる熱気を纏ったダニエル。その腕に轟々と不吉な音を立てながら炎がまとまっていく。
急激に寒さを取り戻す地下牢。しかしそれは次に襲い掛かるであろう灼熱の波の威力をただ無言に物語っていた。
「仕方ない、か」
「メア?」
「ぼくは君と一緒に死ぬつもりはない、アルマ」
メアが自分達の前に立ちはだかるように踏み出した。そしてそのまま数歩前へ進み、なんでもないように言う。
「せめて君よりも一秒でも早く死んだ方がマシだね」
その目は妖しく輝いていた。彼の《
「まぁ、今のうちに色々考えるといい。一度ぐらいなら騎士の目測をぼくの《幻世界》で狂わせることは出来る。
ダニエルには聞こえないようにメアは淡々と語った。
「じゃ、一思いにやりなよ。騎士なら苦しまないように殺す事ぐらい簡単だろ?」
「潔いな。貴様の名誉に重んじて、その願いぐらい叶えてやろう。――一思いに死ね、虫けら」
ダニエルが腕を振るう。ただそれだけで灼熱の熱波がメアへと踊りかかる。
「っ! 《メリー・クリスマス》!」
焦ったリッカが吹雪を生み出した。それはメアを超え、迫り来る炎へと襲い掛かるが無意味に終わる事は目に見えている。
(だめだ! だめだだめだだめだだめだ!)
アルマの時間が恐ろしいぐらいにゆっくりと流れ出す。この感覚は、あれか? 死ぬ前に感じるとかいう――っ!
(頼む! なんでもいい、現状を打破できる
アルマは誰に乞うでもなく心の内で叫びながら鈴へと手を伸ばした。
頼む、おれのせいで誰かが死ぬなんて、もう嫌なんだ!
「――
***
メアは迫り来る炎を、ただゆるやかに流れる時に身を委ねていた。
まるで時が止まってしまったかのような錯覚の中、まだ幼かった頃の記憶が蘇ってくる。
これが俗に言う走馬灯なのだろうか。
(昔、神父様が話した
確か、名はファウスト。死後、奴隷になることを条件に、望むもの全てを手に入れるようになった男の物語だったはずだ。
メフィストフェレスという悪魔と契約を交わし、その後妻を失い、魔女に目を奪われ、最後には己の墓穴を掘っている悪魔達を民が田畑を耕しているのだと信じながら、この世を謳歌しながら死ぬ話。確か、その時彼が口にした言葉は――
(時よ止まれ。君は誰よりも美しいから、か)
しかし今目の前にいるのは救いを齎す救済の光ではなく、全てを焼き滅ぼす太陽のような業火。
(これで、終わりか)
自分の体を吹雪が拭き抜け、迫り来る炎へと襲い掛かるが、無駄だろう。
そう、メアが自分の時の終わりを予感した、その瞬間
「――天秤座の軌跡!」
聞きなれたライバルの声と鈴の音がやけに響き渡った。そして、そして、だ。
メアの目の前で、灼熱の炎と極寒の吹雪がぶつかり――砕け散った。
「「なっ!」」
その光景にメアだけでなく、己の勝利を確信したダニエルまでが我が目を疑っていた。
しかし、その顔はすぐさま憤怒に染まり、メアの後ろにいる少年へと注がれた。
「貴様、なにを……なにをした!?」
そしてメアも見る。
真円を描く盾のような物を構えたアルマの姿を。
***
「貴様、なにを……なにをした!?」
ダニエルの怒号が響き渡る。赤と白の欠片が降り積もる中、アルマは自分が握り締めている真円の盾を見つめていた。
「《リブラ》……」
天秤座の手品……《リブラ》。盾の中心部に持ち手があって、たくさんの輪が腕を包み込むようになっている盾はどうやらまるごと回転するらしい。前に突きつける感じで使うのが正しいのだろう。それは表が純白で裏が漆黒に染まっていた。
「いける。これならいける!」
周りの人間は誰もがアルマの手に現れた円盾を見ていた。ダニエルもメアも、リッカもクラレッタもサンデーも。そしてこの中でも一番長くアルマと付き合ってきたソールとマーニでさえも。
「リッカ」
「え、えぇ?」
突然話しかけられたリッカがうろたえる。そんな彼女を無視してアルマは右腕を伸ばした。
「氷で剣を作れるか?」
「で、できるけど?」
「じゃあ貸してくれ」
「あ、うん」
訳が分からず言われるままに氷の剣を作り出すリッカ。片刃の剣を受け取ってアルマはダニエルに向き直った。ダニエルはすでに新しい炎を纏いながら右腕を伸ばしていた。
「なにが起きたか知らんが……面白い。これは面白い」
くく、くっくっくっくく。ともう騎士らしくない笑みを浮かべながらダニエルが腕を振りかぶった。アルマが駆け、メアよりもダニエルに近付く。
「――《Der Freischutz》」
爆音と共に炎の矢が襲い掛かる。それを真っ直ぐに見つめながらアルマは左手に握り締めた盾を半回転させる。
「はあああああああああああああ!」
そして迫り来る炎へ氷の剣を一閃。直後、信じられないことが起こった。
「な、に?」
ダニエルが目を見張った。何故なら、彼が放った炎がアルマの剣に切り裂かれたから、だ。
「何が、起こった?」
ダニエルは目の前で起こった現象が理解できず、火を纏う事を忘れていた。
そんな彼の眼前で、アルマはまた盾を回転。アルマの持った氷の剣が水になる。しかしまたすかさず盾を回転。水はまた剣に戻った。
「盾? そうか、それも貴様の手品なのか。《リブラ》……今まで聴いたことがないな」
「そりゃ、今手に入れたばっかだしな」
水の剣を握り締めながらアルマが言い返した。
天秤座の《リブラ》。アルマはこの盾の効果を理解していた。だからこそ、思いっきり、力の限り剣の峰を振り下ろす!
「ちっ!」
それをダニエルは反射的に腕で受け止めた。アルマの大逆転に混乱していたのだろう。
彼なら炎になることが出来るのに。しかし彼はそこで不愉快そうに顔を歪めた。
「何故だ」
「……」
それにアルマは答えない。代わりに距離を置いて飛び離れる。
「何故、炎になれない?」
ダニエルはそう呟いただけだった。どうやら炎に変化できないらしい。その視線はアルマを睨みつける。
「《リブラ》の力さ」
「気に食わん手品だ」
ダニエルが歯を噛み締める中、アルマは自分の新しい
「あいまいなものを白黒ハッキリさせるって、ちゃんと説明になってるか分からないけど、そういう手品なんだ」
本来掴み取ることの出来ない炎を掴める様にする
メアを救ったあれもダニエルの炎とリッカの吹雪に形を与えたからであり、本来炎に化ける事で物理攻撃を物ともしない彼にダメージを与える事が出来るのもこの力のおかげなのだ、と。
「掴めない物を掴む、か」
その理屈を理解したらしいダニエルが両手に纏った炎を細長く、それでいて鋭い物へと伸長させていく。その形は剣。
「……メア」
不意に後ろを振り仰いでメアと視線を合わせるアルマ。そして笑った。
「頼むぜ」
「あ、あぁ」
頷くメアか視線を逸らし、アルマは《リブラ》を回転させた。たちまち実体を得るダニエルの炎。それにダニエルが薄笑いを浮かべながら剣を構えた。
「騎士と剣で張り合う気か? 反吐が出る」
「やるしかねーだろ。
そしてアルマはダニエルと刃を交えた。
***
戦いは続く。二刀流のダニエルはさすが騎士。片手でアルマの剣をいなし、確実にダメージを与えていく。さらに隙あらば炎を使うことまでやってのける。
そしてついに、その時は訪れた。
「これで終わりだ、虫けら」
「しまっ――」
炎の波がアルマを飲み込んだ。焼け落ちる肉体。しかしダニエルの表情は冷めていた。そして歯を噛み締める。
「いつの間に、小細工を?」
焼け落ちたアルマの肉体が霞んでいく。違う、これはアルマじゃない。幻だ。
「まさか」
メアと言ったか、あの男の手品は幻覚をみせるものだったはずだ。アルマが《リブラ》を手に立ち向かってくる前、彼は自分の目測を狂わすつもりだったのか、手品を発動していてはなかったか? もしや、あの怪盗と戦い、勝利する現実を見せられていた?
とにかく、ダニエルはまんまと出し抜かれたのだ。
「――」
地下牢で、一際大きな怒号と共に爆発が巻き起こった。
***
「お前もやれば出来るじゃねーか」
「あたりまえだろう」
「ほんと、かっこよかったよ~~、イケメン君」
「うわっ!? は、離れたまえ!」
「う~~、かわいいなぁ~~」
ぎゅーっとリッカに抱きしめられてメアは今にも死んでしまいそうだ。
アルマとしても自分を助け出す為にやってきてくれた彼を殺すわけにもいかず、リッカを引き剥がした。
「とにかく、ここから早く逃げようぜ」
「ねー」
「れ、礼は言わないからな」
「いらねーし」
「アルマ!」
突如サンデーが飛びついてきた。突然の出来事に一同唖然。リッカなんか「やるぅー」とか口笛を吹いてるし魔女達は「「うわっ! 大胆!!」」と戦慄している。
そんでもってアルマはジャックにずたぼろにされた時のサンデーのいろんなものを思い出してどぎまぎ。魔女達もそれを思い出したのか、びきり、と音が聞こえそうなほどに引きつった笑みを浮かべていた。
「ど、どど、どうしたのかな、サンデーさん」
「しー、だよ。誰かいる」
「だ、誰が?」
「分かんない。でも、風の流れがおかしいよ――ふにゃ!」
「うわ!?」
「な、なんだ!?」「ちょっと!?」「風つよっ!」「と、飛ばされる~!」
突然吹き付けた風にアルマ達は大混乱。そして、その風が止んだとき、アルマ達へと懐かしく、そして次の難関を連想させる声が響き渡った。
「やぁ、久しぶりだね♪」
「ニコル? なんで庭園に――って、貴方達!」
騎士ニコラウスとシンシア姫。その二人の登場にアルマ達はすかさず身構えた。
しかしそれに対しニコルは剣を取ろうともしない。
「困りましたね、お姫様」
「ちょっと、なんで抱きつく必要があるの?」
「大好きだからですよお姫様のことが♪」
「えぇ!? いや、今は、ね? それどころじゃないし」
「そうですね。それじゃ、単刀直入に言うよ」
数秒間、シンシア姫をぎゅーーーと抱きしめ終えたニコルが再びアルマ達に向き直った。
そして、告げる。
「君達の協力を仰ぎたい。これは[王室]の――強いては国の平和を願う僕とお姫様のお願いだ」
と。頭を下げながら、アルマ達にそう言ったのだ。
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