第十六章:アルマ救出作戦
「よし! アルマはどこかしら?」
「王族殺害の容疑でつかまってるなら、ありきたりな牢屋にはいないだろうな」
一足先に中庭へ降り立ったリッカとメア。その後にマーニ、ソール、サンデーが続く。
「人がいないねっ」
「ほんとね」「なんで?」
「……君達にはあれが見えないのか?」
メアの視線の先、そこには身体の至る所が砕け散った兵隊達が倒れていた。その光景に表情を硬くする面々。誰もがその惨状に言葉を失っていたが――不意にメアが叫んだ。
「伏せろ!」
「「「っ!?」」」
「うわっ!?」
言われるままに伏せるメンバー。その頭上を炎が飛びすぎ、前方の死体を焼き尽くした。
「こ、この炎」
「すっごくいや~~~~な予感がするんだけど」
「わぁ、すごいよ、あれ」
口々に目の前で起きた炎に表情を硬くする魔女達にその声は嘲笑と共に答えた。
「虫けらどもが。一体貴様らはどこから沸いてくるのだ?」
ダニエル・フォン・カスパール。以前『夜汰烏の羽毛』を盗みに行った時にアルマと対峙した紅蓮の騎士だ。たしか、手品道具は煙で、前方で灰と化した遺体を今も包み込む炎はもくもくと煙を生み出していて――これはヤバいのではないかな?
「いきなり騎士か。これは面倒だな」
苦虫を噛み潰したような顔で呻くメアにダニエルは爆発を利用し着地しながら嗤った。
「虫けら風情が何をしにきた? まさか、あの反逆者を助けに来たとか言うんじゃないだろうな? ――反吐が出る」
煙草を咥えたまま器用に話すダニエルにサンデーが猛講義。
「アルマはね、なんにもしてないよっ! ほんとだよっ!」
「虫が。これはあやつに罪状を増やさねばならんようだな。――性犯罪が妥当か?」
「それはぼくも同意見だけどね」
メアがダニエルに視線を向ける。メアの手品道具は眼鏡。……だとアルマは推測していたけど、とにかくメアの手品は相手の記憶や精神面から幻覚をもたらす《
ちょっと待って。ダニエルにとって一番屈辱的な記憶って? そもそも、そんなのを見せたら――や、ヤバい!
「ちょっ、ストップ! だめーっ!」
「なっ!?」
慌ててメアに飛びつき制止するマーニ。するとメアの顔は見る見るうちに紅く染まり、ぱくぱくと窒息しそうになっている。そういえば、メアって女の子に免疫がないのだろうか?
「と、とにかくダニエルはだめ! あれに幻覚見せたら火に油を注ぐもんだって!」
「わ、わわわかったから、は、はは、離れたまえ!」
すかさずメアから離れると彼は「助かった」と言わんばかりに……ってちょっと? 助かったってなに? 失礼じゃない?
「だからここは私達が」「やったる!」
「「《マジック・アワー》!」」
ストローに息を吹きかければ双子魔女の手品は完了する。ふわふわと漂うシャボン玉は炸裂すれば閃光弾に早変わりするフラッシュシャボンだ。
「このまま―─」「―─弾けろ!」
そして魔女達がフラッシュシャボンを弾けさせようとした、まさにその瞬間、灼熱の焔がシャボン玉を飲み込んだ。
「あ、あ~~~!」「ちょっ、何やってんのよ!?」
「バカか、虫けらが。シャボン玉など、貴様ら戦場を舐めているのか? つくづく反吐が出る」
「それじゃあ、あたしの番かな~ん?」
そこに袋を携えたリッカがダニエルにウィンクしながら袋を構えた。
「――《メリー・クリスマス》!」
陽気な口調とは裏腹の、極寒の突風が吹き荒れ炎をかき消し、煙を吹き飛ばした。
「やった!」
「ふふん♪ おねーさん、熱いのって好きじゃないんだよねー」
一瞬にしてダニエルの手品を無力化してみせたリッカが誇らしげに笑った。
「あとは氷で分身作って時間を稼ごうかな」
「――甘い。これしきでワタシを打破したつもりか? 反吐が出る」
「ありゃりゃ」
怒気を孕んだ声とその怒りを象徴するかのように爆風が吹き荒れる。爆発を生んではその煙でさらに爆発。その爆発がある程度広まったところで炎は一点に凝縮され、騎士を吹雪から守った。
「さぁ、次はどうする?」
凝縮された炎はとどまる気配がない。超高温の炎を纏ったダニエルがゆっくりと、だが確実に近寄ってきた。
「あー、ヤバいはね、これ」
「ちょっと!? なんとかしなさいよサンタっ娘!」
「なによ? あんた達なんて呆気なく終了しちゃったじゃない。おちびちゃん」
「なんですって!?」「なによ?」と言い争いを始めたマーニとリッカをやれやれと言った様子で見つめるとメアが再び炎の化身と化したダニエルに対峙した。
「やはり、ぼくが行かせてもらうよ」
「? きさま、どこかであったことがあるか?」
メアの顔を見た瞬間、ダニエルの顔が不機嫌そうに歪んだ。しかしそれに対してメアは軽く肩を竦めただけで
「さぁ。ぼくは初対面だと信じたいけどね。騎士に敵視されるいわれはないからね」
「ほぉ。いい心がけだが、それは遅いだろうな。ここにいるということがすでに罪だ」
「だね。まぁ、仕方ないさ。――《幻世界》!」
メアの宣言と同時、その目が妖しく輝いた。その目を直視してしまったダニエルが一瞬、ぐらりと揺らぐ。しかし、精神的な強さなのか、ぎりっと奥歯を噛み締めながらメアを睨んでいた。
「幻覚、か。忌々しい」
「幻だからって舐めてたら、死ぬよ」
それだけ言い捨ててメアがこちらを振り向いた。そしてにこやかな笑みを浮かべながら
「長くは持たない。早く行く――」
轟!と細長い炎がその顔を掠めた。ちりちりと音を立てて焦げる髪に目を見張りながらメアがゆっくりと振り向いた。
「――ぞ?」
うん、メアの心境はマーニが思うにきっと、「なんだこれは」じゃないかしら。
と言うのも、幻覚で何かを見せられているらしいダニエルの顔だ。
「貴様、怪盗……どうやって逃げた? いや、これは幻、か? まぁ、良い。気休めでも良い。虫けら、幻である貴様を焼き滅ぼしてくれる」
鬼のような――いや、もう鬼の形相を浮かべて嗤うダニエル。こ、怖い!
それは誰もが思ったことらしく、リッカが真っ先に走り出した。
「に、逃げるが勝ち!」
「ぼくも君に賛成だ!」
「ま、待ってよ!」
「ほら、サンデー行くわよ」
「う、うん!」
一目散にダニエルから離れた直後、撃つわ撃つわ、熱波の光線、爆破、もうあんた逆に反逆罪で捕まるんじゃないの!? って言いたくなるほど周りの物質という物質を溶解させながら暴れ狂うダニエルに私達は城内へと命からがら踏み込むのだった。
***
暴れ狂う彼が止まったのは尋常ならざる水を浴びてからだった。
「ぷはっ!?」
あのリッカの吹雪すらも蒸発させた炎を、こうも呆気なく消して退けた同士にダニエルが額に張り付く髪を手品で乾かしながら呼んだ。
「何の真似だ、カルメン」
「何を、ですか。それはわたしの言葉ですよ。騎士ともあろう方が守るべき城を壊すとは何事ですか」
「むっ」
さすがのダニエルも一理あると思ったのか、黙りこくってしまった。
「貴方がしたことはカルディア姫様を無理やり剥いでええじゃないかと言ってるようなものですよ。……どうしました?」
「いや、なんでもない。貴様のようなマニアと話していると調子が狂いそうなのだが。まったく、反吐が出る」
「嫌よ嫌よも好きのうちといいますが?」
「……消し炭になりたいか?」
「まさか。ごーかんは犯罪ですよ、ダニエル」
「言葉が違うな。貴様はよほど消し炭になりたいようだな?」
「ならばまた貴方を濡れネズミにするまでです。殿方のヌレヌレなんてみたくはありませんけど」
「もういい」
メラメラと燃える炎を従えてダニエルは水を纏った騎士に背を向けた。
「虫けらの仲間が居たぞ。恐らく城内だろう」
「えぇ、分かってます」
「まだ遠くへは行ってないはずだ――なんだと?」
「だから、分かってますと。わたしを舐めないで頂きましょうか。これでも騎士なので」
「……水、か」
「えぇ」
カルメンは水を操る手品師だ。無論、空気中には水分が存在するため、彼女は何時、如何なる時でも手品を発揮できる。
「網に掛かったのです」
「ならば話は早い。追うぞ」
「いえ」
ダニエルの目が鋭くなる。その目に気圧される事もなく、カルメンは淡々と告げる。
「あれならいつでも捕縛できます。ただし、問題は他にあります」
「問題?」
「えぇ。わたしの網に掛からない者、が五名」
「五名? いや、待て。把握できているなら、それは掛かってることだろう?」
「これは報告を受けただけです」
「じゃあ、今も?」
「えぇ。どこにいるのか分かりません」
「なんだと……」
くどいようだが彼女の手品道具は水だ。つまり、彼女の包囲網に掛からないのが異常すぎるのだ。しかもそれは現在進行形でカルメンの包囲を潜り抜けているらしい。
「何者だ? いや、聞くだけ無駄か。――奴らか」
「恐らく」
ダニエルの問いにカルメンが返す。だとすれば、危ないのは――
「カルメン、貴様は国王陛下の下へ。ワタシはあの詐欺師の元に向かう」
「了解いたしました」
素早く交わしながらダニエル達は二手に分かれた。
***
そしてその頃、メア達はと言うと――
「だからメアの手品は火に油を注ぐって言ったのに」
「具体的に説明しない君が悪い。ああなると分かっていればぼくだって無闇に力を使いはしなかった!」
ぎゃあぎゃあと騒いでいるのはメアとマーニだった。内容は勿論、ダニエル暴走の引き金について、だ。
「第一、幻覚見てても被害が出ないようにならないわけ!?」
「なるわけないだろう!? それほど手品は便利ではない!」
「ほんっと役に立たないのね! アルマの方がすっごいし」
「ぼくが彼よりも劣ってる? はっ、ありえない。あんな性犯罪者がぼくに勝ってるわけないだろう?」
「じゃあダニエルぐらいぶっ飛ばしてみたら?」
「無茶を言うな」
「ほらだめじゃん!」
「それを君が言うかね!?」
しかもこの言い合い、かれこれ一時間は経つ。
真っ先に呆れたのはサンタルックのリッカである。
「はぁ、イケメンなのに小者なのねー」
「なんだと!? ぼくが小者だと!?」
すかさずメアが反応する。その反応が面白かったのか、リッカがくすくすと笑った。
「そう言う時はね、無理やり黙らせるのよね。勿論、口で口をね♪」
「そ、そうなの……か?」
「そうよ?」
「そう、なのか」
メアが思案深げにこちらを見上げるや、「うっ」となにやら顔を赤らめマーニの肩をがっと――へ?
「あ、アルマにできて、ぼくに出来ないものがあるわけ……っ!」
すごい顔を真っ赤にして顔を近付けてくるメアに何故か胸が高鳴って――ってそんなわけない絶対ない。いやでもよく見ればアルマよりもかっこいい?いやそんな顔じゃなくて!でもアルマよりもしっかりしてるような気も?ってそうじゃない!
「やっ! 離して!」
「き、きき、君を黙らせるにはこれしか……!」
「分かった! 黙るから! もう喋らないから!」
「……そ、そうか」
ようやく納得したのか、メアは肩から手を離し「こほん」と咳払いした。まだ顔が赤いところを見るに、恥ずかしいのだろう。
「よかったわね、マーニ。もしキスとかしてたら浮気になるもんね」
「ふぇ!?」
「なっ!? それはつまり、アルマがこの娘と? やはりあいつは死んだ方が良さそうだな。こんな娘に情を抱くなんて」
「う、うるさいわね!? あんたなんか私の唇奪おうとしたくせに!?」
「あ、あれは仕方なくだ。そもそも、やってないし」
「未遂だけどねー」
すかさず呟くソール。そうよ言ってやってソール。
「ま、私としてはアルマとメアとマーニでどっろどろの三角関係サンピーでもいいんだけどね?」
「ちょっ!?」
軽く込み上げてくる怒りにわなわなと震えていると、不意にサンデーがぴくり、と動いた。
「?」
「どしたのよ、サンデー」
「う、ん? あの、ね? アルマの声が、聞こえた気が、する?」
「なぜに疑問系? って、ちょっと待って、それ本当?」
「んぅー。下の方から、聞こえる。……気がするよ?」
「あー、サンデー、獣人だから耳がいいのかも?」
「そういえば、ぼくの情報が正しければ第一級犯罪者は地下牢獄に投獄されるという話だな。意外とその娘の勘は当たってるかもしれないぞ」
メアが眼鏡をくいくいとしながら答える。と言うならば、試してみる価値はある……のかな?
「で、どうするのだ?」
「もちろん」
「行くわよ」
メアの問いにマーニとソールはニヤリと笑みを浮かべて答えるのだった。
***
「お前……っ!」
「よぉ、久しぶりじゃないか、アルマゲスト」
ニヤニヤとこちらを見つめ、笑うのは〝ミイラ男〟。変な物音に顔を上げた時にはいつの間にか監視の兵士をなぎ倒した彼が立っていた。しかも彼の後にぞろぞろと同じ服装の人間がなだれ込んできたじゃないか。
「っ! マジで生きてたのか」
「イーヒッヒッヒ。そォーだぜェ。そォーしてェー、ここでェあったが百年目だぁああああ! 覚悟しろォおおおお、アルマァアアア」
ごそり、と僧服の間から鋼鉄の腕を突き出してくるジャック。ヤバい。身動きの取れないこの状態でレーザーなんて放たれた日には一巻の終わりだ。
「止めるんだ、ジャック」
「……ラァアアアグエェエエル。邪魔ァあああ、するなァ!」
危険な輝きを放っていた右腕がほっそりとした男へと向けられた。しかしそれに男――ラグエルは動じず、粛々と語った。
「忘れるな。教祖様の前であることを」
「っ! ちっ」
ジャックが舌打ちしながら腕を引き戻した。なんだ? まるで自分の向かい側にいる男には逆らえないみたいな雰囲気は。
「教祖様。お迎えに参りました」
返事はない。当然だ。猿ぐつわで口を塞がれているのだから。それを指摘する者はなく、ただほっそりとしたラグエルの行動を待った。
「う、うぅ……」
「ん? 生きてるのか」
「手加減はしてねーけどな。止めを刺そうか?」
「いい。僕がやる」
ラグエルが〝ミイラ男〟を制しながら踏み出した。兵士の傍に何かを投げ捨てる。一瞬、光を反射して――弾けた。
「!?」
直後漆黒が視界を塗りつぶした。すさまじい突風にアルマの体を束縛する鎖が引き寄せられ千切れそうになる。
「な、なんだ!?」
闇に塗りつぶした向こう側で何かがバキバキと音を立てて砕ける気配がする。
「さて。掃除が終わりました。しばしお待ちを」
漆黒が晴れた先、あの兵士の姿がどこにもなかった。ただ僧服に身を包んだ連中が教祖とかを見ているだけ。
「ではジャック。頼むよ」
「あぁ」
スッと横へ退くラグエルに頷きながらジャックが腕を伸ばした。数瞬後、解けていく檻。
まぁ、人間兵器みたいなもんだから驚かないけど。
「次は〝ミイラ男〟。頼むよ」
「任せろ」
スッと〝ミイラ男〟が檻の中へ踏み込み、布に包まれた得物を解き放った。それにアルマは直感的に不吉なものを感じて目を逸らした。
「良い判断だ、アルマゲスト」
わざわざ確認したらしい〝ミイラ男〟が嗤う。しかしそれに重なる怨嗟の叫びはなんだ?
本能の知らせる警鐘に首を動かせずにいるアルマ。その視界の外で風を斬る音と共にガシャン、と金属が両断される音が響いた。
「では、行きましょう、教祖様」
解放された教祖が牢屋から出て行く気配がする。それと同時に例の怨嗟が消えた。
「お前ら、それが目的だったんだな」
「勿論さ」
アルマの視線を真っ向から受け止めながら“ミイラ男”がケラケラと笑い飛ばした。
「おっ。そうだった」
「っ!」
目にも止まらない速さで〝ミイラ男〟の得物がアルマの頬を掠めた。顔のすぐ横の石が穿たれているところを見るに、あの手品か。
「今度会ったら殺す。覚えてるよな?」
「……」
覚えている。それを視線に込めて突き返せば「いいねぇ」と楽しむ声が返ってきた。
「だが、それは今度だ。教祖様の御前で手品師を殺すわけにゃいかねぇ。〝帽子の男〟が脱出経路を確保してるだろうから、先に逃がしてもらうぜ。――ん? どした、ルージュ?」
「この人に。一言」
「あ? 勝手にしろよ」
「はい」
ルージュ……以前〝ミイラ男〟に用事で今すぐ帰れと言っていた少女らしき人物が相変わらず顔の見えない状態でぽつりと
「貴方の仲間が。来てる」
「マジか!?」
そんなことを呟いた。まさか、マーニ達が?
それだけだったのか、彼らは教祖を連れて出て行ってしまった。
「はぁ。マジか」
アルマはもう一度そう呟きながら、自然と零れてくる笑みに気付かず言った。
「それじゃ、待ってるぜ」
***
「こっち!」
「ほんとに!?」
「うんっ!」
帽子を脱ぎ城の中を駆け巡るサンデーを追って走る事早十分弱。マーニ達の前にはぽっかりと黒い穴が開いていた。……どうみても入り口って感じじゃないんですけど。
「地下に建築したものだから脆かったのか?」
「違うっぽいけどね」
「どういうことだね?」
「[教団]よ」
「まさか、教祖が目的?」
「でしょうね」
リッカがぽつりと答える。なんだか先程と違ってぴりぴりしてる気がするけど……
「この下にアルマがいるのよね!?」
「あ、ちょっと! 待ちたまえ!」
サンデーと共に魔女達が地下へと飛び込んだ。それを追ってメア達が続く。
***
「アルマ!」
「よ、久しぶり」
「相変わらず害虫並みの生命力だな、君は」
「メア。それにリッカ?」
「おひさ」
「あぁ、ほんと久しぶり。――ってそうじゃない! メア、早くここから出してくれ! さっき、[教団]が教祖を連れてった!」
「分かってる」
「それじゃみんな、退いて!」
「へ? いや待てマーニ! 爆弾シャボンはヤバ――うぎゃあああ!」
大量のシャボンの爆発に巻き込まれ、アルマの体が鎖ごと吹き飛んだ。――いや、ちゃんと生きてはいる。
「げほっ。お前、もうちょい優しくできねー?」
「そんなの出来るわけないでしょ!」
「でももうちょい量は加減しろよ!?」
「そ、それは……なによ! もう知らない!」
「なんだそりゃ」
何故かむくれてしまったマーニに呆れているとメアが頭を蹴っ飛ばしてきた。
「いってえ! 何すんだメア!」
「お取り込み中悪いが、性犯罪者。お客さんだよ。鈴は? あるなら何か構えてろ」
「お、おう。――
言われるままに《キャンサー》を発動すると、どこからともなく爆発が起こった。
おもわず魔女に顔を向けたがマーニも訳が分からないのか、肩をすくめただけ。
じゃあ、今の爆発は――
「ふん。詐欺師の方は手遅れだったか。しかし、貴様らを逃がすつもりは毛頭ないぞ、虫けら。今ならその豚小屋よりも上等な牢に放り込まれるだけで済むぞ」
――ダニエル・フォン・カスパール。炎の騎士の、再度の襲撃だった。
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