第十四夜:アルマと殺し屋
騎士ポワロとジョヴァンニ王子の死は王国中に広まり、それと同時に怪盗アルマゲストの捕縛の意思を王室が表明した。
「なんだって、王室がおれを狙ってるんだよ」
どうも、アルマが二人を殺したと王室は思っているらしいが……
「おれが殺すわけねえだろ。ったく」
「ねえ。ひっどい話よね」「でも大丈夫。私達は信じてるから」
「ぼ、ボクも信じてるよっ」
「あぁ、ありがとな」
「「「っ!」」」
唯一あの場で美術館の崩壊を目の当たりにしていた魔女達が唯一の味方だ。
「で、これからどうするの?」
「王室に話しても無駄だろうからなぁ」
あの炎の騎士は問答無用で斬ってきそうだし、へらへらしてた騎士は別の意味で話が通じそうにない。となると、やはり答えは一つしかない。
「真犯人を捕まえないといけねーな」
「やっぱり、[教団]?」
「だろうな」
崩壊した美術館から姿を現した男。帽子を被っていて顔は見えなかったが、僧服に黒塗りの十字架は見間違えようがない。
「なんで[教団]がおれの行く先に現れるのか不思議でならないんだけど、さすがにおれ目当てじゃないよな」
「だねー」「だねー」「だねー」
三連続の「だねー」にため息を吐きながらアルマは窓の外を見やった。眼下では今なお自分の捜索が続けられている。
「アルマ、窓にいたら見つかるんじゃない?」
「ん。そうだな。……でも、どうすっかな。あの時の男を見つけないと話にならないし……」
「――もしや某のことか? ならば都合が良い。こちらも貴殿と話をしようと思ったところだ。つまり、大人しく利用されるがよい」
「「「「っ!?」」」」
聞き覚えのない声に四人が振り向いた先、そこには今まで話題になっていた男が立っていた。帽子で顔を隠した[教団]のメンバーにアルマ達は臨戦態勢を取った。
「
「「《爆弾シャボン》!」」
「おっと、そう急くな。押してばかりだと損をするのは貴殿だぞ?」
くつくつと笑いながら指をくいくいと動かす男。その途端、魔女達のシャボン玉が普通に弾けた。
「なっ!」「爆発しない!? なんで!?」
「某は〝帽子の男〟と呼ばれている。まぁ、貴殿達は好きに呼ぶが良い」
「お前も、手品師なんだよな? 今までの奴らは全員手品師だった」
「ご名答。貴殿の推測通り、某ら[教団]は手品師の集団だ。だが、正確には手品師ではなく、超越者、だが」
「超越者?」
「そう。某達は神の寵愛を受けし者。それはつまり、神の織り成す新世界へ招待されたのに他ならない。それが、某らが〝神の子〟と崇めるお方のお考えだ」
「他の奴より随分信者っぽいな」
「よく言われる。昔はこれでも人殺しを生業にしていたのだがな。某も貴殿と同じ、犯罪者だ」
「同じにすんな。胸糞悪い」
「それは失礼。それで、話を戻すが、某らに協力してくれ」
「やだね。鼻からお断りだ」
「そうか。簡単なことだ。王室に捕らえられてくれ」
「ますますやだね。で、どうする? 四対一、お前が圧倒的に不利なんだけど」
「数は問題にならない。貴殿は蟻が百集まれば獅子を殺せると思っているのか?」
「蟻、か。よっぽど自信があるんだな」
「如何にも。だが、某はまだ若輩者。司教達に比べればまだ非力なものだ」
「じゃあ大人しく帰れよ。司教って確か、この前戦った機械人間だとかミイラ男だとかだろ」
「ジャック殿に〝ミイラ男〟殿のことか。これは苦戦しそうだ」
「じゃあ、大人しく帰れ!」
くつくつと笑う〝帽子の男〟の懐へと飛び込むアルマ。剣の鋭さを棒切れ程度に調整してその胸を突く――が手応えはない。なぜなら。
なぜなら、〝帽子の男〟の体がしゅるしゅると解けたからだ。
「なっ!?」
「某の手品は《ネットサーフィン》。なに、糸の物質の強度を上げ、自在に伸縮することが出来る程度の、しがない力だ」
どこからともなく響いてくる〝帽子の男〟の声にアルマは周囲に視線を巡らせる。
「ほんと、伸縮自在で強度が上がるぐらいなら、そんなに危険じゃないかもな」
だが気になることもある。魔女の爆弾シャボンを無力化した力はなんだったのか。もしや手品を無力化する力でも備えているのだろうか?
「さぁ、まずは腕試しと行こうか? 殺さないことが絶対条件だからな、両手足の切断で済めばいいが」
「よくねぇ」
《キャンサー》を構えながら敵の攻撃に備えるアルマ。魔女&サンデーと背中合わせになりながら――
「――って、サンデー、さすがに今回は戦わない方が良いと思うぞ。素手じゃ不利だろ」
「?」
こくん、と首を傾げるサンデー。だめだ、分かってない。
「えっとな、敵の糸は手品で強化されてて素手じゃやばいんだ」
「? でも糸は糸だよ?」
「あぁ、だから―」
「随分と余裕なのだな?」
「しまっ―」
サンデーに説明しようとした所を突かれた。いつの間にか足元まで迫っていた糸がアルマ達をぐるぐる巻きにした。
「まさか某が捕らえることが出来るとは。司教殿達は油断していたと見える。でなければ某が貴殿に勝てるはずはないだろうからな」
「う、うっせえ!」
またもや音もなく姿を現した〝帽子の男〟に怒鳴り返しながらアルマは手首を動かして糸を断ち切ろうと試みる。
「くそ。硬すぎる。《キャンサー》は動かせねえし……」
「? 糸だよ?」
きょとんとした表情で首を傾げるサンデー。手品を理解していない彼女にアルマはため息混じりに愚痴を零しかけて――その体を拘束する糸がするりと解けていくのに気付いた。
「やはり、一筋縄ではいかないか」
〝帽子の男〟が切断された糸を引き戻しながら一人頷く。
「ほら、やっぱり糸だよ?」
手品で強化された糸を容易く千切ってみせたのはサンデーだった。やはり猫耳帽子をふわりと揺らしながら手に握りしめた糸をアルマに突き出してきた。
「ね?」
屈託ない笑みと共に賛同を求めてくるサンデーに「あ、あぁ」と頷きながらアルマはあることに気付いた。
「そうか。サンデーは獣人だから、手品を無力化できるのか」
「?」
「獣人? なるほど、だから司教殿達は敗北を喫したのか。貴殿に相応しいお嬢さんだ」
「ふ、相応しい!?」「あ、アルマに!?」
なにやら魔女達がショックを受けたようにストローを落とすが今はそれどころじゃない。
「それじゃ、サンデーはあの糸で怪我することがないのか?」
「わかんないけど、多分」
こくこくと頷くサンデー。そうか、ならば素手でも大丈夫か?
「首、絞められないように気をつけろよ」
「うん♪」
「これは……些か不利のようだ」
しゅるると解けていく〝帽子の男〟。しかし撤退したわけじゃないだろう。自身の手品が効かないとなれば、それ以外の方法を取るはずだ。
「お前ら、気を付け――ろ!?」
「にゃっ!?」「きゃっ!」「わっ!」
直後、窓ガラスが割れ、外から伸びてきたらしい糸に足を縛られたアルマ達は外へと放り出されてしまう。
ちなみに、ここはホテルの最上階。その高さ、悠に百メートル。
「なんだか最近」
「落ちること、多くない?」「トラウマなのに!?」「楽しいよねっ!」
スパーンッと宙へ放り投げられるアルマ達。その体は地上へと落下して――中途で停止した。
「ようこそ。某の巣へ」
「網?」
アルマの言うとおり、そこは周囲のホテルを支えにして作った網状のような空間だった。
まるで蜘蛛の巣のようなその中央に敵は居た。
「さぁ、某の舞台へようこそ。ここでなら某は貴殿らを楽しませられると自負している。――《ネットサーフィン》」
しゅる、しゅるるるるるるる……と無数の糸が律動する音。それらは徐々に〝帽子の男〝の体を繭のように包みこみ、束ねられた八つの足を生み出していく。
八つの鋭い足、丁寧にも形作られる頭部。その姿は、そう。ある意味でこの場に一番相応しい存在の姿だった。
「蜘蛛、か」
「如何にも。貴殿は目立つのは好きか? 目立たなければいけないからこうしたが、下を見るがいい」
「下?」
言われるままに下を見たアルマはそこで異常事態に気付いた兵隊達がアルマの姿を認めこちらへと発砲してくるのを見た。
「下には兵隊が待っている。だが……邪魔だな。こうしよう」
スッと巨大な頭部が眼下の兵隊達へと向けられ――無数の糸を吐き出した。それら糸の濁流は兵隊はおろか、野次馬達をも飲み込み、引き寄せ――この蜘蛛の巣の下につるし上げた。幸い、首を吊るされている者はいないが、誰もが逆さ吊りにされ、高所への恐怖に叫んでいた。
「先に言っておこう。某から逃げようとすれば人質を落とす。救うか? 如何にして? 糸を断ち切っても地上へ叩き落されるだけで結果は変わらん」
「残念ながら」「そうでもないのよね」
〝帽子の男〟の注意がアルマに向けられている間に魔女達が浮遊シャボンで足場を築きながら人質の下へと向かっていた。
「アルマ!」「人質は任せて!」
「ああ!」
だいぶ自分の怪盗としてのポリシーを分かってくれている魔女達に人質を任せ、アルマは鈴を鳴らした。
「
頭部からひょこっと、腰からぴょこり、と生える銀色の耳と尾。身体強化の《レオ》に身を包みながらアルマは〝帽子の男〟目掛けて走り出した。
「アルマっ! ボクはどうすればいいの?」
「サンデーは……あいつの足場を壊してくれ!」
「分かったっ!」
アルマが指差した蜘蛛の足元へ疾駆するサンデー。いくらこの場が〝帽子の男〟の舞台であっても足場を崩されればたまったもんじゃないだろう。
今は巨大蜘蛛の維持でうまく立ち回れないはずだ。
「貴殿は考えを改めねばいけまい。某は別にこれに限られたことではない」
ぐわっと足場が蠢く。うねり、律動し、蜂起し。そして糸の濁流を作り出しアルマを飲み込むべく波打たせる。
「くそっ!」
飲み込まれるのを避け上空へと跳躍するアルマ。ホテルから突き出した棒に立ち、糸をやり過ごす。
「やっぱきついか。それより、サンデーは!? ……よかった、あっちは大丈夫そうだな。さすがに足場を利用するわけにはいかないか」
サンデーはアルマに言われた通り〝帽子の男〟のバランスを崩そうと足場を引き裂こうとしていたが身体中から放たれる糸に苦戦を強いられているようだ。
「《サジタリウス》じゃ火力不足だし、やっぱ《キャンサー》なんだろうけど……どうやって近付くかが問題だよな」
足場は相手の支配地だし、うかつに足を踏み入れればまた飲み込もうとするはずだ。
「せめて、糸をやりすごす武器があればいいんだけど……」
足場を兼ねている糸を切っては落ちかねない。そもそも、《レオ》を発動していない状態じゃ掠っただけでもやばそうだ。
「……」
そこでアルマは自分がなんの上に立っているのかを思い出した。これなら、身を守る程度には使えるんじゃないだろうか?
***
「貴殿は面倒ではあるな。某もまだ未熟ということか」
「このっ! はうっ!? ふぅー」
次々に伸びてくる糸を苦戦しつつもかわしていくサンデーを〝帽子の男〟は冷静に対処しながら真下で行われている救出活動への対策を練る。
(あの二人には某の糸による牽制で十分。あのシャボン玉が左様な力を持つものか知らないが、某の力で補強されたピアノ線は爆発にも耐える)
あの一室で異様な雰囲気を感じた〝帽子の男〟は自身の手品道具として使用している紐、ピアノ線でシャボン玉を包み込むようにして破壊した。人質を傷付けない為に強力な手品の使用は禁じえないであろうから、糸を溶かす程度の力に抑えているのではないだろうか。
(しかし、某の目的は三人ではない。某の狙いはただ一つ)
〝帽子の男〟の動きに合わせて形成された蜘蛛の頭が建物の一角に立ち尽くす怪盗を見据える。怪盗は必死に何かをへし折ろうとしているようだ。
(しかし、ただの刃物では某の糸は断ち切れない。如何なる手を打つ、怪盗よ)
〝帽子の男〟は己の敗北が近付いている事を、知らない。
***
「よしっ! 出来た!」
どういうわけか、まったく襲い掛かってくる気配のなかった〝帽子の男〟を見据えながらアルマは手を加えたそれの出来に一人頷いた。
「これなら大丈夫だろ」
念のためぐいぐいと引っ張って強度を確かめる。よし、いける。
「それじゃ行くぜ!」
蜘蛛の巣へ足を踏み入れる。案の定、周囲の糸が盛り上がりアルマを飲み込もうと壁を作り上げる。
「これは予想してた。だから超えさせてもらうぜ!」
アルマはその手に握り締めた棒をおもいっきり振りかぶり、迫り来る壁へと突き刺した。
すかさずその棒に飛び乗り、それを踏み台に壁を乗り越える。
「よっ……と!」
身を捻り腕に巻きついたゴム製のロープを引っ張る。この間美術館から『鋼鉄の戦死者』を盗むときに使ったバンジー用のゴムだ。アルマは手元へ引き寄せた棒を掴むと身を捻った力を殺さず、前方の〝帽子の男〟目掛けて投げ飛ばす。
びーん、と伸びきったゴムが縮む。その半端ない勢いに耐えながらアルマは〝帽子の男〟が閉じこもる蜘蛛の頭へと着地した。
「ここまで来ればおれのものだ。――蟹座の軌跡!」
銀色の騎士剣を生み出す。月明かりに映える銀は見えているだろうに、〝帽子の男〟は無反応だった。
「お前の敗因は三つ」
指の代わりに蜘蛛の頭部に一太刀浴びせながらアルマは勝利を宣言していく。
「一つは、おれを相手に人質を取ったこと! だからおれは怒ってるぞ!」
「やはり、某では貴殿を止める事は不可能、か」
さらに一太刀。蜘蛛の頭部を形成する糸がほつれ、崩れ落ちる。視界に〝帽子の男〟が閉じこもる繭が見えた。
「二つ。おれにはそんな人質を救ってくれる仲間がいること!」
「ま、当たり前よね~」「乙女の大切な時間を邪魔したんだし?」
下方から「ふふん♪」と鼻歌混じりに答えるソールとマーニ。
その声を聞きながらアルマは繭を破壊すべく最後の一太刀を浴びせようとする。
「某とて、静観しているつもりはない」
〝帽子の男〟が頭部の残骸から即席の盾を作ろうと糸を束ねだす。
しかしアルマは見ていた。視界の隅で猫耳帽子と短すぎるスカートを翻しながらその盾を切り裂く少女の姿を。無意識に込み上げてくる微笑を消そうともせず、アルマは最後の勝利宣言と共に繭を切り裂いた。
「三つ目は――そんなおれ達は最強だってことだ!」
音もなく繭が真っ二つに切り裂かれる。アルマはすかさずそこで沈黙を保つ〝帽子の男〟へと《キャンサー》の切っ先を突きつける。
「お前はおれを王室に引き渡すって言ってたけど、真犯人なんだろ、お前?」
「如何にも。しかし、よいのか?」
「なにが?」
不可解な問いに眉をしかめるアルマに〝帽子の男〟はただ口元を歪めるだけ。
「某とて、静観しているつもりはない、と言ったのだ」
「っ!?」
声は背後から。振り返ったアルマの視線に映ったのは――
「〝帽子の男〟!?」
「如何にも。そちらは某が糸で作った分身だ。某こそが、〝帽子の男〟と呼ばれておる」
《キャンサー》を突きつけた〝帽子の男〟――否、その分身がしゅるしゅると解け、アルマの両腕に巻きつく。それは留まる事を知らず、アルマの首へと。
「くっ」
「某の勝ちだ。貴殿を王室に引き渡す」
抵抗することも許さず、〝帽子の男〟が操る糸が幾重にもアルマの体を包み込んでいく。
「アルマを――はにゃせっ!」
「おっと」
サンデーの奇襲を〝帽子の男〟は指に纏わりつかせた糸で防ぎ、間髪入れずサンデーの腹へと糸の奔流を叩き付けた。
「サン、デー!」
塞がれつつある口から必死に突き飛ばされた少女の名を叫ぶ。
「安心するがよい。某の目的は貴殿であって、彼女らの命ではない。そこは運が良かったと言わざるを得まい。もしこれが司教殿達であれば彼女らも、人質も、皆殺しにされていた」
「なっ!?」
「司教殿達が何を謳歌しているか、貴殿は知っているか? 超越者以外は排除せよ。それが神の望みだ」
「ふざっけんな!」
「本気だ。司教殿達は――[教団]に属する某ら手品師は新世界を担うのは手品師達だと信じている」
その声は諦念と狂気が宿っていた。そこでアルマは自分を襲ってきた二人の司教のことを思い返した。
ジャック。圧倒的な破壊力と頑丈さを誇った大男。どちらかというと人を殺すことこそを楽しんでいたが、どこか自身の力を妄信してる節があった。
〝ミイラ男〟。驚異的な速度と殺人術を持つ男。気まぐれな感じで自分の力を便利な道具程度にしか考えていない節があったが、[教団]に属してることに誇りを感じている節があった。
そういうことか。とアルマはすでに塞がれてしまった口で毒づいた。
「あ!? アルマがぐるぐる巻きにされてる!?」
「ぐるぐる巻きにされるのは乙女の特権なのに!?」
「……某はふと疑問を感じたのだが、貴殿にとって彼女らはなんだ? ……と口が塞がっていたか。……が、某にも分かる事がある」
「?」
「大事なのだな」
「?」
なんだ? なにが言いたい? 〝帽子の男〟の訳の分からない言葉に混乱するアルマ。そんな彼を気にする事もなく、〝帽子の男〟は高らかに宣言した。
「怪盗アルマゲストは捕まった。助けたいのならば、救いにこい。場は王室。急がねば死ぬぞ」
そして〝帽子の男〟とアルマは消えていった。
***
翌朝、〝帽子の男〟の襲撃を受けたホテルの一室に三人は座っていた。
「アルマが、負けちゃった」
「どころか、攫われちゃったわね」
「どうなるのかな?」
いつものんびりなサンデーまでもがうな垂れ、一枚の紙片を見つめていた。
『怪盗アルマゲスト、ついに逮捕。王室はアルマゲスト確保に協力したキュルテン氏に、勲章を授与』
「なにが勲章よ。バッカみたい!」
「キュルテンってのも、ぜったい偽名だし」
「偽名?」
首を傾げるサンデー。少しばかりいつもらしくはなった気がする。
「それで、どうするよ、マーニ?」
「もちろん、助ける」
「うんうん!」
こくこくと首を縦に振って賛同するサンデー。しかし、問題は
「騎士、なのよね」
「私達だけじゃ絶対無理」
紙片にはアルマへの受刑会議の際、仲間による救出を警戒し各地から騎士を招集したと書かれている。
一枚には紅蓮の騎士服に身を包み鋭い眼光をカメラへ投げつける炎の騎士。
一枚には純白の騎士服に身を包み、へらへらとした笑顔で姫に話しかける風の騎士。
絶対、勝てない。
「どう、しようか?」
悩みは、尽きない。
***
紙片を見ていたものは国内各地にいた。
「あの怪盗が、殺人? これは、おかしい」
ある貴族は傍らに保管されてある『硝子の仮面』の表面を撫でながら。
「へぇ、あのお人好しが? うーん、どうしよっかな~」
季節外れにも程があるサンタ服に身を包んだ少女が紙片を袋の中に突っ込んで考え。
「アルマが? 性犯罪で捕まるならおかしくはないが、彼が殺人?」
女性達の視線を物ともせず、眼鏡をかけた怪盗は口をへの字にして。
「お姫様、これ、どう思います?」
「どうって……その通りなんじゃない? なんで、ニコル?」
「いや。ただお姫様の可愛い声が聞きたかっただけです」
「も、もうっ!」
純白の衣服に身を包んだ姫と騎士は周りの目を気にもせず。
アルマと関わった誰かが、アルマの逮捕に何かを感じながら、動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます