第3話 「途中のこと」

おまえの哀しみなんてとるに足らない

たかだか生きているぐらいで 昂ぶるのはまだ早い

おまえの陰で 誰かが傷を負っている

おまえの世界は おまえだけのものじゃない

見えるもの 触れるもの 感じるもの 

たどり着きそうで また巡(めぐ)り 

耽る猶予はもらえない


おまえの苦しみなんて特別じゃない

たかだか生きているぐらいで 泣くことは石ほどある

おまえの背中を 誰かが嫌悪する

おまえの世界は おまえだけのものじゃない

聞こえるもの 遮るもの 軋(きし)むもの

問いかけても 答えは得られず

震える芯をもてあます


おまえの淋しさなんて限りはない

たかだか生きているぐらいで 至上の錯覚は捨てよ

おまえの声に 誰かがを耳ふさぐ

おまえの世界は おまえだけのものじゃない

映るもの すれ違うもの 翳(かげ)るもの

手にした瞬間 またこぼれ

補うものに気づく間もなく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る