第4話 「抜け殻」

どこへいってしまったのだろう。

あてのない旅をしている。もう、すっかり、ここ数年。

旅をしながら笑ったり、泣いたり汗をかいたり、歯を磨いたりして、

なかなか取り戻せない苛立ちをごまかしている。

戻りたいのに 本当は。

その道を探すことも億劫になっている。

思案に暮れる人々。

褪せた私の瞳は誰をも失望へと導く。

あの、純粋に心震わせていた場所はどこだったのか。

どうしても、そこにたどり着けない。

もう充分に歩いているのに、呆けたまんま私は季節に取り残されてゆく。

どこへいってしまったのだろう。

私という、ちょっとすっぱい芯の部分は。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る