第2話 「渡り」

雑踏の中で誰かとぶつかった。

よろけた私は地に手をついた。


ざらり。

アスファルトの感触が不快だった。

人々は上手に私をかわしてゆく。

靴音に混じって声が降ってくる。


そびえるビルの壁面にはスクリーン広告のうねり。

大きな瞳のモデルと目が合った。

あの場所からは、私も喧噪の一部にしか映らない。


信号が点滅をはじめた。

私はビルの麓を睨んで立ち上がった。

ざらりを握りしめたまま。

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