第4話 ザンドナーイ『フルートと管弦楽のための夜想曲』
2018年5月26日に兵庫芸術文化センター管弦楽団の第106回定期演奏会を聴きに行った。もう2年も経っているのだから驚きである。
その時のプログラム内容を列記したい。
・ザンドナーイ『フルートと管弦楽のための夜想曲』
・モーツァルト『フルート協奏曲 第1番 と長調 K.313』
・ブラームス『交響曲 第2番 ニ長調 op.73』
指揮はユベール・スダーン、フルートはカール=ハインツ・シュッツだった。
今回は上記プログラムから、ザンドナーイ『フルートと管弦楽のための夜想曲』について書いていこうと思う。
まず、リッカルド・ザンドナーイ(1883〜1944)について書こうと思う。
彼はイタリア北部トレンティーノに生まれ、ベーザロで世を去ったイタリア近代の作曲家である。ベーザロの音楽学校ではマスカーにに師事してオペラ作曲の研鑽を積み、その後オペラ作曲家として、大指揮者トスカニーニから高い評価を受けた。第一次世界大戦中、政治活動家としてイタリアの「未回収地回復運動」に参加し、領土問題で微妙な関係にあったオーストリア政府から有罪判決を受けたこともある。第二次大戦中にはベーザロ音楽院の院長を務めていた。
『フルートと管弦楽のための夜想曲』は1932年に作曲された佳曲で、「フルートの夜想曲ーーフルートと小管弦楽のための小さな詩RZ(作品番号)226」と題されている。フルート・ソロを囲んでハープや弦楽器が織りなす神秘的な音色が夜のしじまの美しさを描き出す。中間部は神秘的な色合いがいっそう強くなり、時には嵐のように劇的な起伏を繰り返し、不安な気分を強める。そして再び官能的な最初の部分が戻って来て、夢のような世界が甦るが、その最後はやや謎めいた雰囲気の中に消えていくーー妖しく、あまやかな夜へ……夜の庭に歩み出て、涼やかな風に吹かれながら、恋人と語り合いたいような気持ちを起こさせる夜想曲である。
イタリアの作曲家ザンドナーイの名は、イタリア以外では、あるいはオペラ愛好家以外では、あまり馴染みのない存在かもしれない。オペラの作曲家として高く評価されていた時期もあり、『ジュリエッタとロメオ』(1922年初演)をはじめとする多数のオペラを残していて、代表作「フランチェスカ・ダ・リミニ』(1914年2月初演)は現在でも少なからず上演の機会がある。一方、演奏会用の器楽曲は、今日ではほとんど知られていないーーと言ってもいい。発掘してみれば、この「夜想曲」のように、驚くほど美しい作品も出てくるのだから、世界にはまだ、埋もれた名作がたくさんあるのあもしれない。
この演奏会を聴きに行っていなかったらザンドナーイという作曲家すら知らなかったかもしれないのだ。これからも名曲発掘に勤しみたい。
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