三度の飯よりクラシック

脳髄ぱんち。

第3話 シューマン『ピアノ・ソナタ第2番』

 今日は6月8日、ロベルト・シューマンの誕生日だ。ということで今回は、去年2019年11月9日にザ・シンフォニーホールで行われたラファウ・ブレハッチのピアノリサイタルと、シューマン『ピアノ・ソナタ2番』について書こうと思う。


 ラファウ・ブレハッチはマズルカ賞、ポロネーズ賞、コンツェルト賞、ソナタ賞、オーディエンス賞と全てを同時受賞した上で2005年第15回ショパン コンクールで優勝した、最高のショパン弾きと称されるピアニストである。

 彼のレパートリーはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン 、リスト、ブラームス 、ドビュッシー、シマノフスキと拡大を続け、その中からドイツ・グラモフォンより6枚のアルバムがリリースされている。この活動が高く評価され2014年には、「ピアノのノーベル賞」とも称されるギルモア賞を受賞している。


 リサイタルのプログラムが凄く個人的に嬉しいものだった。

 モーツァルト『ロンド イ短調 K.511』

 モーツァルト『ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K.310/K.300d』

 ベートーヴェン 『ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101』

 シューマン『ピアノ・ソナタ第2番 ト短調 Op.22』

 ショパン『4つのマズルカ Op.24』

 ショパン「ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」 Op.53』

アンコール

 バッハ『主よ、人の望みを喜びよ』

どれも素晴らしかったが、今回はこの中からシューマン『ピアノ・ソナタ第2番』について掘り下げていこう。


 ドイツ・ロマン派の作曲家シューマンは、同時はピアニストを目指したが、無理な練習が災いして指を傷めてしまったが、ピアノへの想いを作曲の筆で表すこととして、20歳代の間はピアノ曲の創作に集中的に取り組んでいる。この曲は1835年に完成され、シューマンは終楽章を書き直し、1829年に現在さる形で出版しているためソナタ第3番より遅い作品番号になっている。このソナタは4つの楽章からなっている。

 第一楽章は「できるだけ速く」から始まりコーダに入ると、「さらに速く」「もっと速く」との指示があるシューマン独特の加速性を帯びた拍子感が打ち出されながら進む曲である。

 第二楽章は夢幻的な曲である。恐らくあまりクラシックを聴かない方から1小節で寝られる安眠の友になりうると思うのだ。

 第三楽章は非常に短いながらも魅力的で、二楽章での眠気が吹き飛ぶ曲になっている。

 第四楽章は第一楽章での加速性が、さらに激しくなり、また、16部音符の連続により、無窮動的な音楽にもなっている。しかし、こらと対照的に、ゆったりとした夢見心地の世界を垣間見させる楽想も現れる。そしてコーダに入ると、「プレスティッシモ:カデンツァ風に」と指示され、追い立てられるように加速しながら、全曲を結ぶ。


 シューマンには、ソナタのような形式的な枠組には中々当てはまらない幻想的な作品が多いが、このピアノソナタ第2番はコンパクトにまとまったソナタらしい曲に仕上がっている。それだけに、第1番や第3番のソナタに比べてシューマンらしさに欠けるとも言われるが、シューマンの劇的なエネルギーが一気に爆発した明快な曲である。

 

 私は作曲家の中で1番シューマンが好きなのだが、その中でもこの曲が1番好きだと言っても過言ではない。第一・三・四楽章はいずれも急速なテンポで落ち着かず激しく進んで行く音楽だが、その中で第二楽章はシューマンらしい魅惑的な叙情が静かに溢れ出て対比を成す。いつもと違うシューマンを楽しめつつ、しっかりと彼らしさのあるところがこの曲の個人的なオススメポイントである。

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