4.天使と自由
天使は言いました。
「私は自由になりたいです。天界にも魔界にも縛られず、空も地をも生き。太陽を愛し。月を慈しみたいのです。」
天界の王様はそんな天使に言いました。
「では自由の代償を渡しなさい。さすればそなたに自由を授けよう。」
天使は困ってしまいました。天使は代償として渡せるものなど何もありませんでした。
天使は両親に聞きました。
「自由の代償には何を渡せばいいのでしょうか?」
両親は答えました。
「あなたの願いは私たちの願い。私たちを代償として渡しなさい、さすれば自由になれるでしょう。」
天使は困ってしまいました。両親を代償に渡してしまえば彼らに会えなくなってしまいます。それはとても寂しく、悲しかったからです。
天使は親友に聞いてみることにしました。
「自由の代償には何を渡せばいいのでしょうか?」
親友は答えました。
「うーん。翼なんかはどうだろう。もし君が飛べなくなったとしたら、僕が君の翼となろう。」
天使は困ってしまいました。自分の翼であちこちへ行けないのは自由とは言えないと思ったからです。
天使は悪魔に聞いてみることにしました。
「自由の代償には何を渡せばいいのでしょうか?」
悪魔は答えました。
「我々のところへ来なさい。そうしたらなんの代償もなしに自由にしてやろう。」
天使は困ってしまいました。天界では代償のいる自由が魔界ではいらないというのは、魅力的である反面大変疑わしかったからです。
天使は長老に聞きました。
「自由の代償には何を渡せばいいのでしょうか?」
長老は天使の問いに聞き返しました。
「なぜ自由になりたいんじゃ?」
天使は答えます。
「私は自由を愛しています。日々を好きな場所で過ごし、親友と語り合い、両親を支えたいのです。」
長老は答えました。
「では安全を代償にしなさい。さすれば自由になれるだろう。」
天使は困ってしまいました。安全を失ってしまうといつ悪魔に襲われてしまうかわからなくなってしまいます。怯えて暮らすことになるのは嫌でした。
天使は王様の元へ帰ると言いました。
「王様、私には渡せるものが一つとしてありませんでした。」
王様は言いました。
「もしそなたが何を引き換えにしても自由を欲しいと思った時に、もう一度来るといい。」
天使はほっとしている自分に気づきました。行きたいところもしたいこともたくさんあるのに、天使は外の世界が恐かったのです。
天使は家へ帰り暖かい布団に包まれるとすやすやと眠り出しました。心地が良く。ずっとこのままであればいいのにと思いました。
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