第27話 連合会議

竜王暦360年3月22日

カリフール王国 連合会議場


1ヶ月が経ち、ついにこの日がやって来た。

各国の代表が集う、ここカリフール王国は物々しい警備状況だ。


俺たち紅蓮隊もその警備の一員として、カリフール王国を訪れていた。


「みな、よく来てくれた。久しぶりに見る顔もいるな。カイト、レグラム、エリーゼ元気そうだな。」


「久しぶりですぜ、姫様。」


紅蓮隊第2番隊隊長カイト・フォン・ラスク。ラスク伯爵家の次男だが、武に長けており、若くして2番隊を任されている豪傑だ。


「お久しぶりです。姫様。」


紅蓮隊第3番隊隊長レグラム・アームストロング。平民出身ながら、冴え渡る才気で3番隊の隊長を勤める天才だ。


「お久しぶりですわ。姫様。」


紅蓮隊4番隊隊長エリーゼ・セウス・ファンダム。ファンダム男爵家の三女。美しい要望と淑やかな外見から婚約を申し込む者が絶えないが、本人は男に興味はない。今は姫様にぞっこん。


そして俺が1番隊隊長のアークス・レイ・ドラゴンロード。数ヶ月ぶりに紅蓮隊の隊長格が揃ったことになる。


「アークスも久しぶりですね。まさか私のいない間に姫様に手を出してないでしょうね?」


エリーゼがアークスの事を睨み付ける。

毎度の事だから慣れているが、正直扱いが面倒だ。


「何を疑っているのかしらんが、お前が心配する事は起きてない。安心しろ。」


「ふん!信じられませんわ。」


「ねぇ、姫様。この男に手を出されたら直ぐに私に言って下さいまし。私自ら天誅を下してやりますわ。」


姫様の手を取りながら、うるうるとした瞳で訴えかけている。


「は、はは。そうね、その時はお願いするわね。」


「おいおい、エリーザよい。姫様が迷惑してるだろうが、その手を離してこっちに戻って来い。」


「うるさいわね、カイト。あんたが私に指図するんじゃないわよ。」


「ああぁん?」


今度はカイトとエリーゼが喧嘩する寸前だ。

お互い睨みあって、火花が散っている。


「やれやれ、あなた方は久々にあっても何も変わりませんね。少しは成長したらどうですか?」


レグラムがあきれた顔で2人を仲裁しようとする。

が火に油を注いだだけの様だ。


「うるさいわね、クソメガネ。」


「だまってろ、アホメガネ。」


「くっ、あなた方は言ってはならない事を言ってしまいましたね。よーく分かりました。」


レグラムはメガネ姿をバカにされるのが大嫌いだ。彼のアイデンティティらしく、メガネに関する事だけは彼の沸点はとても低い。


そろそろ殴り会いに発展しそうなので、止めた方が良いんだろうな。


「はいはいはい、あなた達も変わらないわね。そろそろ本題に入りたいのだけど?」


姫様の一言で喧嘩がピタッと止まった。

なんだかんだこの部隊にいる奴らは、みんな姫様が好きなのだ。


「さて明日から会議が始まるわ。それでアークス隊長とどうも部隊員のフィーを副官として連れて行きます。3人には会議場周辺の警備をお願いするわ。」


「えぇ、、姫様。私を連れていっては下さらないのですか?」


「ごめんなさいエリーゼ。今回はアークスに譲ってくれる?次の機会は貴女にお願いするから。」


「本当ですか!分かりました。このエリーゼにお任せください!」


現金な奴だなと思ったのは俺だけじゃない筈だ。

カイトもレグラムも同じ様な表情をしている。


「後、今日は皆に紹介したい人物がいるわ。」


「さ、入って頂戴。」


隣室から扉を開けて女性が入ってくる。

見た目は、ショートカットにピンク色の髪色。線が細くあまり戦闘向きでない印象だ。特徴的なのはメイド服を着ている事だろうか。


「皆様はじめまして。姫様から紹介に預かりましたナイアと申します。以後お見知りおきを。」


「ナイアは、アストン兄様から直々の紹介です。紅蓮隊に以後所属する事になるわ。所属は情報部。私直属の部隊ね。戦闘も凄腕らしいから、今回から合流して貰いました。」


このタイミングで新入隊員?

しかもアストン様から?何か含むところがありそうではある。姫様も直前まで聞かされてなかった様だ。


「うふふ、専門は情報収集ですが、戦闘の方も得意ですので、皆さん頼って下さいね。」


「おう、俺はカイトだ。よろしく頼むわ!」


「レグラムだ。」


「エリーゼよ。貴女も可愛いわね、、」


「アークスだ。姫様の事宜しく頼むぞ。」


「まぁ貴方がアークス様ですか。お噂はかねがね。仲良くしてくださいね!」


ナイアがスカートの両端を摘まんで華麗に挨拶をする。


タイミングといい、派遣元といい、少し様子を見た方が良さそうだな。そう思いながらも表情には出さない。


「ああ、明日から宜しくな。」



*************************************

お読み頂きありがとうございました。

感想やご意見など頂けると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る