第24話 3日後
(えらい目に遭った、、、)
アークスの放つ竜の魔力を見た途端、トーマス社長は目の色を変えて、様々なデータを取り始めた。様々な機械に繋がれて、1日中魔力を搾り取られたせいで、魔力はすっからかん。軽い魔力欠乏症の症状まで出ており、もう限界とみるや、やっと解放されたのだ。トーマス社長は、それはもう満面の笑みであった。
「いやぁ、素晴らしい!これ程の研究素材、、もとい才能に会えるなんて。この魔力、竜の魔力だったか?これを使えば技術は更に進歩する。感謝致しますぞ!」
笑いながら去っていくトーマス社長の背を睨み付けるが、もう既に何処かに行ってしまった後であった。恐らく開発室に籠って分析を続けるのだろう。社長としての仕事はしなくて良いのだろうか、、
「アークスさん、叔父様がご迷惑を、、ごめんなさい。昔から研究の事になると回りが見えなくなる人で、、、」
開発室の外、アークスの事をずっと待っていたのだろうか。
「フィー、、気にするな。フィーのせいじゃない。それにこの力が役に立つなら、まぁいいさ。それに、神器を起動させる糸口も分かったしな。」
色々と大変だったが、収穫もあった。
神器の起動には、竜族が使う魔力属性が必要であること。まぁ種を明かされてしまえば、竜族が作った武器なのだから当然なのだが。
「搾り取られたみたいね、大丈夫?アークス君。」
フィーの後ろからひょっこりとクリスティナ皇女とリィンフォルトが顔を出す。
「姫様に、リィンフォルトまで、、」
「アークス君が心配だから、、じゃないのよ。ほら、あれよ!私も神器が使えるかもって思ったら気になってのよ。」
クリスティナ皇女の顔が少し赤い。何を恥ずかしがっているのやら。
「あー、姫様、顔が赤くなってる。」
「ちょっとリィン、なに言ってるのよ!もぅ早く帰るわよ!明日から竜属性の魔法を教えて貰わないといけないんだから!」
リィンフォルトとフィーの手を引っ張りながら、姫様が無理やり場を納めて歩き出す。その様子を見て、少し苦笑しながらも姫様に従い、帰路に立つのであった。
*
竜王暦360年2月22日
皇都ハルデイン 紅蓮隊拠点 旧トレイル公爵邸
「シュタイン副隊長、リッドル卿そちらは何か収穫はありましたか?」
会議室に改めて集合した面々に対して、クリスティナ皇女が音頭を取って、この3日間で知り得た事を互いに共有する。
「姫様。私たちは、皇都の図書館や有名な歴史家などにあたりましたが、竜や魔族に関する伝承は具体的で無いものが多く、断片的なものばかりでした。」
「遥か昔に大きな戦いがあったことは分かるのですが、悉く詳細が抜け落ちているのです。ですがただ1つだけ神器と巨人に関する記述がありました。」
《世界は竜と魔に分かたれた。天と魔が争う戦乱の世に、輝く甲冑を纏った巨人あり。大いなる竜族の神器と共に魔より出でし神をここに封ずる。》
「これは、、キリバスの古代遺跡の地下深くで見たレリーフと同じね。魔族の神を封じる鍵となるのは神器。これは間違いなさそう。でもこの巨人というのは、重要な要素な気がするのだけど、何なのかしら?」
クリスティナ皇女の疑問に待ってましたと言わんばかりの笑みで、リッドル卿が立ち上がる。
「それに関しては我々も同じ様に思いましてね、ちょいと調べてみました。」
リッドル卿から渡された地図を見ると幾つか赤い丸印でチェックが入っている。
「調べてみると巨人の伝説ってのが、大陸に幾つもあるんですよ。その地図の印は関連がありそうな場所になります。ここから一番近いのは、サイラス砂漠ですね。」
「2人ともご苦労様でした。引き続き巨人の調査に当たって貰えますか?」
「承知しました。姫様。」
「了解ですぜ!」
「ところで、そちらは如何でしたか?たしかシルヴァン社に行かれた筈ですが。」
「此方も収穫はあったわ。見て貰った方が早いかしら?」
クリスティナ皇女は神器エーテルホライゾンを手に取ると集中して魔力を神器に込め始める。すると先日まで全く反応を示さなかった杖が僅かに光っている。
「ダメ、これ以上は無理だわ。」
相当に消耗するのか僅か十秒程度の魔力放出で息が上がっている。
「姫様、、これは?」
「トーマス社長に神器を調べて頂いてね。その結果、神器は竜族の魔力にしか反応しない事が分かったわ。」
昨日1日中、姫様に竜魔法の手解きをした結果だ。
まさか1日で僅か十秒とはいえ、竜族の魔法を会得するとは、、、驚きである。
「流石ですな、、」
「この力については引き続きアークス君に頼んで師事するつもり。なにか起きた時に使いこなせない様じゃ話にならないしね。」
「アークスよ、頼んだぞ。姫様に粗相のない様にな。」
シュタイン副隊長からの激に対して、無言の頷きでもって応える。
「さて実はこの場で報告があるわ。昨日翡翠宮から使者が来て、同盟国による連合会議の開催が正式に決まったわ。丁度1ヶ月後、東のカリフール王国で行われるわ。」
「カリフール王国といえば、獣人族の国でしたな。して姫様も同行されるのですか?」
「私も副代表として参加するわ。アークス君とフィーには近衛として会議にも同行して貰います。また紅蓮隊も会議の警護にあたってもらいます。各地に散らばったメンバーを一度呼び戻すつもりよ。」
「おお、全員が揃うのは久しぶりですな。」
その後幾つかの細かな議案を協議して、会議は終了に向かう。最後にクリスティナ皇女ら立ち上がり、皆の顔を良く見て、会議を締めくくった。
「じゃあ皆、1ヶ月に向けて準備を始めてちょうだい。」
「イエス。マム!」
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