第2章―戦いの砲火―10

 僕はその話を聞いたら、不安と恐怖心が一気に襲ってきた。足下が震えてしまい、地面に立っているのに、まるで底無しの地面に立ってるような感覚に襲われてしまった。そして、不安と恐怖心が募ると彼の背中で小さく呟いた。


「怖いよ、美岬っ……!」


 そう言って震える僕の手を美岬は黙って、後ろから握ってくれた。


「キミ達はアビスのパイロット達だろ?」


 整備士の質問に隼人は正直に答えた。


「自分達はゼノア地球連合の第7拠点基地エデンの所属部隊。ウィクトリア部隊およびパイロットであり、ここの宇宙基地ラケシスの隊員でもパイロットでもありません! 僕達は上官にここで、待機せよとの命令が出ています!」

 

「え? ウィクトリアってまさか……!? 君達があの有名な精鋭部隊のパイロット達か!?」


整備士はその場で彼らを目の前に驚いた。


「君達の噂はかねがね聞いてるよ、ルーダンでの防衛戦は敵を見事に撃退させたそうじゃないか! まさかこんな所でスーパールーキーのパイロット達に出逢えるなんて俺はついてるぞ…――!」


整備士は3人の前で興奮した様子で話すと、その場で考え込むような仕草で何か独り言を呟いた。そして何かを思いつくと再び彼らに話しかけた。


「で、きみ達の上官は今どこにいるんだ?」


 隼人はその質問に首を横に振って答えた。


「――いえ、それがさっきから見当たりません。上官からは、ここで待機せよとの命令しか聞いておりませんので詳しくは……」


彼がそう答えると整備士は両手を彼の肩に乗せて話した。


「よし、わかった! 君達の上官には、私が後で事情を説明する。だから今はとりあえずアビスに乗ってくれ!」


急ぐ整備士に向かって隼人はキッパリと断った。


「あの、失礼ですが命令違反は軍法で罰則との規則があります! 上官からの命令は絶対と、軍の第7条にも記されています。よってその命令には自分達は従えません!」


 隼人は眉もひそめずにその事を堂々と話した。整備士は焦っているのか、その場で感情を剥き出した言葉をぶつけた。


『ッ…――!? 今はそんな悠長な事を言ってる場合じゃないだろ!? 君にはわからないのか、この現状が!』


 整備士が怒鳴ると隼人はそれでも上官の命令は絶対だと言い切った。


「もういい! 君達には呆れたよ、ウィクトリア精鋭部隊の名が聞いて呆れる!」


 整備士はそう言って深いため息をついた。


「ああ、駄目だ。乗れるパイロットがいなきゃ、もうここは終わりだな…――」


  彼はそう呟くと天井を虚しく見上げた。

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