第2章―戦いの砲火―11

 

「――パイロットなら此処にいる!」


彼はそう言うと整備士の方を真っ直ぐ見て返事をした。結人は思わず袖を掴んだ。


「美岬ダメッ……!」


 そう言って咄嗟に、彼の背中で小声で話した。美岬は結人の方を見るなり黙って掴んだ手を振り払った。


「俺がパイロットです! 俺がアビスに乗ります――!」


 美岬は迷わずに堂々と整備士の方を見て自分の意思を伝えた。結人はその言葉に顔が青ざめた。そして、整備士はその言葉に喜んだ。


「よし、じゃあ俺と一緒についてきてくれ!」


 整備士は急ぐ様子で彼をアビスの格納庫に誘導しようとした。そこで見ていた隼人は美岬の勝手な独断発言に頭がカッとなり、命令違反に背く彼に対して激怒した。


『お前グラギウス艦長の命令に背く気か!?』


 隼人はそう言うと、拳を握って怒りに震えた。美岬は彼の方を見るとストレートに言い返した。


「何もしないで待つくらいなら、やっといた方が何倍もマシですよ!」


『死にたいのかお前っ!?』


 感情的になって咄嗟に腕を掴むと、美岬は言い返した。


「死ぬも何も俺達は最初からとっくに死ぬ運命の存在って決まっているんですよ。隼人隊長、俺は行きます…――!」


その言葉に唖然となり、掴んだ腕を離した。美岬はそう言うと2人の前から背中を向けて、黙って遠ざかった。そして、整備士と共にA―33アビス格納庫に急いで向かった。


呆然となって立ち尽くす隼人の傍で、結人は居ても立っても居られなくなると、何も言わずに部屋から飛び出した。そして、慌てながら美岬の後をすぐに追いかけに行った。

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