第2章―戦いの砲火―3

 

「何ッ!? 地球本部のあいつらは、一体こんな時に何をやっているんだ!?」


 冴嶋は眉間にシワを寄せながら、苦悶の表情を浮かべた。


「今からゼノア宇宙連合の奴らに救助の要請と、急いで援軍を回すように手配しろ。この際どんな手段を使っても構わん、なんとしてもこの基地は大軍事帝国の奴らには渡してはならない!」


 冴嶋は気迫の籠った言葉を動揺し続ける本部の部下達に強く言い放った。彼の緊迫した言葉に、彼らはそこで改めて気を引き締めると、それぞれが自分達の持ち場でベストを尽くそうとした。


 そこにいた全員は最後までアザゼルとの戦いを諦めずにいた。彼は映し出された大型のモニター画面の前で外の激しい戦場の光景を見ると一段と険しい表情を浮かべて睨んだ。そんな彼の元に、1人の男が近づいた。その男は長身で知性的で凛々しい顔立ちをした小さな鼻眼鏡をかけた銀髪の青年だった。


彼はゼノア地球連合第7拠点基地エデンの少年兵を全て束ねる少年兵副総揮官でもあり。最新型の精鋭艦エヴァリアの艦長でもある男、グラギウスという名前の青年だった。彼は耳元で話した。


「冴嶋総司令官。もしこの宇宙コロニーが、敵に奪取された場合わかっていますよね?」


 冴嶋は彼の質問に一言『ああ』と返事をした。


「ソロモンのシステムを起動して、ここもろとも破壊してやるまでだ。だが、ただてはやらせん。あいつらアザゼルを1人でも多く道連れにして、塵となってやるまでだ…――!」


 冴嶋のその表情は険しさと鋭さが増していた。


「わかりました。それが貴方の出した答えですね――」


冴嶋はその言葉に無言で押し通した。グラギウスは彼に一礼するとその場を去って行った。冴嶋は彼がいなくなると椅子から無言で立ち上がった。そして直ぐに後を追って指令室から出て行った。慌ただしく走ると、少し離れた廊下で一人歩いていた彼を見つけた。そこで後ろから声をかけた。


「待て、グラギウス…――!」


 冴嶋の呼びかけに彼は後ろを振り向いた。


「冴嶋総司令官、何ですか……?」


彼は沈痛気味の表情でグラギウスの右手を黙って掴んだ。


「もし本当にソロモンのシステムを起動する事態になったら、例の機体をお前の戦艦エヴァリアに乗せてここの基地から今すぐ脱出しろ! これはラケシス宇宙基地の代表としての命令でもあり、総司令官としての命令でもあるが。これは個人の頼みでもある……!」


 冴嶋はそう言うと、グラギウスの瞳を黙って見つめた。

 

「ええ、わかってます。あの機体は私がこの命に変えても必ず守って見せます! あの機体は我々にとっての最後の希望の光ですから…――!」


 そう言うと険しい表情を見せた。冴嶋も、彼の覚悟を黙って悟った。


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