間奏 ①

 ここいらで余談を少々。

 魔力持ちとは何なのか、それについて説明したいと存じます。

 付け加えますとコレットが一人旅をしている理由にも繋がる話にございます。


 魔力持ちとは、その字面通り魔力を持った人族の通称でございます。

 魔力と言えば、自然に漂う魔力の源となる概念的物質を、体内で循環させることで発生される熱量からくるものでして。

 その特性上、魔族や精霊族に多く見られる能力。

 異種混合とした現代においても珍しく。

 種族が対立するこの時代でありましても、決して人族に魔力持ちが現れることが起こり得ないわけではございませんが、先天的に魔力を持つものは非常に稀なこと。

 コレットはこの時代においては珍しいことで、人族でありながら体内に魔力を宿して生を享けたのでございます。

 

  異民であるというだけで厭忌されていた時代でございますので、同じ人族の間でありましても、異端は忌避の対象に晒されて。

 当時よりも更に過去に遡りまして。

 その時代は魔力持ちが人族からも誕生することが殆ど知られていなかったころにございます。


 人族の虹彩というのは大抵黒色か茶色が常の中。

 コレットの様に虹彩が深紅に変色している子供が誕生したのでございます。

 出生当初は珍しい瞳の色の子が生まれた程度の認識でございまして。

 その子供は、他の人族と何ら変わりのない生活を送っておりました。

 しかし、その子供はある日魔力を暴走させて周辺の土地に多大な被害をもたらしてしまったのでございます。

 暴走の切欠が如何様な理由であったかは不明でございますが、元来魔力を持って生まれてこないとされる人族が簡単に扱えるようなものではございません。

 どんな些細なことでありましても、一度放出されてしまった魔力を人として普通に過ごしてきた少年が制御できるはずもなく。

 結果として、その瞳の色と魔力暴発で異民と疑いを掛けられまして。

 悲しいことに一族全てが処刑されたという逸話があるほどでございます。

 流石にこの時代においては、一族全てが処刑などという人道から外れるようなことは行われることはございませんが。


 紆余曲折ありましたが、体内に魔力を宿している人族は、例外なくこの子供やコレットのように虹彩が深紅に変色すること。

 魔力と向き合い、訓練することで制御可能であることが判明されまして。 

 コレットが生きる時代においては、魔力持ちであろうと人族に変わりなしという認識がひとまず広まったのでございます。


 とは言うものの、一方で相容れないと白眼視するものが一定数いるのは否定できず。

 身体的特徴から、魔力持ちかは視覚的に容易に判断できます故。

 もしも、コレットの深紅の瞳が白日の下に晒されようものなら、彼女の身に降り注ぐ悪意は容易に想像がつきましょう。


 それ故に、コレットの両親が例え我が子を大切に思っていたとしても、隠して育てることはとても困難な道のりで。

 結果として両親は娘である彼女を町から連れ出しますと、遠く離れたその手の子供に理解のある孤児院へと預けたのでございます。


 さてこちらの孤児院。実際のところは訳ありの子供が無事成人に成長するまで軟禁状態にする施設にございまして。

 と申しましても虐待を行っているというわけではなく、むしろ実際はその逆で。

 先に申したように、魔力持ちといった子供たちが普通の生活を送るのは困難である故に、理解のない人々から子供たちを守る目的がございます。


 そしてコレットも同様に成人を迎える十五年の歳月を、その施設で一人でも生きていける術や魔力制御の方法を学びながら生活をしてきたのでございます。


 結果としてコレットは一人でも生きるすべのある冒険者になりまして。

 一人で外の世界へと旅に出たのでございます。

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