8 夏の日。出会い。

 夏の日。出会い。


 青空と白い雲。

 そして、アスファルトの道路を焼くように照りつける、空の中に輝き続ける真夏の太陽。

 ……その日は、本当に暑い夏の日だった。


 私が直くんと初めて出会ったのは、真夏の太陽がアスファルトの道路に照りつける、とても暑い夏の日のことだった。


 まだ本当に楽しそうな顔をして、いつも笑っていた直くん。


 ……それは今ではもう、見ることのできない失われてしまった、夏の日の風景だった。


 小学校時代


 清が直くんに恋をしたのは小学生のころだった。


 二人がまだ、十歳の小学五年生のとき。


 清は初めて恋をした。


 恋の相手は同じ教室の男の子。朝丘直くん。すごくかっこいい男の子だった。少なくとも、小学生時代の清にとっては、直くんは世界で一番かっこいい男の子だと思えていた。


 直くんはめがねをかけた、小柄のすごくおとなしい子だった。(今は背もすごく高くなって、めがねもコンタクトにしたみたいだけど、直くんは当時、ずっとめがねをかけていた)本が大好きで、ずっと図書室で本や図鑑を読んでいた。みんなと一緒に外に遊びに行くようなことはしない、……とても孤独な子だった。

 直くんは勉強がとてもよくできた。

 なので、清も頑張って勉強をした。


 そのおかげで清の成績も随分とよくなった。


 清は直くんと一緒に、(もちろん、五月も一緒だ)小学校を卒業して、一緒の中学校に入学した。

 そして、直くんと一緒の高校に進学するつもりで、勉強を頑張った。


 でも結局、清は直くんと同じ高校には進学できなかった。

 

 なぜなら、直くんは中学校に入学してすぐのころから中学校にこなくなってしまったからだった。


 最後にきちんと、清が直くんと二人だけで時間を過ごしたのは、小学校の卒業式の日のことだった。


 あの日、最後に直くんは清になにかを言おうとしていた。なにかを確かに伝えようとしていた。(きっと、とても大切なことだと思う)

 でも結局、直くんはなにも清には言ってくれなかった。

 だから直くんが言いたかったこと、清に伝えたかったことは、今も清にはなにもわからないままだった。(だって、しょうがないじゃない。言葉にしてくれなければ伝わらない。人の心なんて、ただ見つめ合っているだけでは、わかるわけないのだ。……たぶん)


 ある日突然、直くんは学校にこなくなった。理由はわからない。清と直くんはそれっきりあったことはない。

 そんな昔の(甘い初恋の)思い出だった。


 清は背の高くなった直くんのことを見つけて、……すごくどきどきした。なぜなら清は小学校の初恋の日から、今も、直くんのことがずっと大好きだったからだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る