13.東の魔女
冒険者組合から依頼されたレイと師匠は東の大陸に渡っていた。この地はレイにとって因縁の土地でもあった。
「師匠! 東の大陸の魔女伝説…本当なんでしょうか」
「さあな、一言で言うなら”うさんくさい”な」
「でしょうね」
東の大陸は魔法道具が盛んで直に魔法を使うものはほとんどいない不思議な大陸だ。そんなとこで魔女が現れたと聞いたのは古文書でいう1000年以来だ。
「緊急の依頼だって聞いたもんですから急いできてみれば…」
「案の定だな」
師匠はタバコをふかしている。
五キロ先に魔女が歩いているのを見かけたからだ。距離を取り、監視をしているさなか、魔女討伐のために派遣された帝国の兵士たちが魔女を確保するために準備している場面に遭遇していた。
「どうします師匠」
「このまま見ていてはつまらないだろうな」
フーと煙を吐いた。
「…では行きますか」
「そうするしかないだろうな」
二人は急行した。五キロぐらいならスキップするだけで二分で着く。一流の魔法使いになればこんなのは朝飯前だ。
あと一キロとなったとき、師匠はレイの肩を掴みストップをかけた。
「――! どうしたんです」
「レイ! あいつ見覚えがあるか?」
師匠が指さした。魔女の容姿が誰かに似ている。
思考を絞り込み、過去の記憶を洗いざらい流し、そしてつかみ取る。
「…! リディ」
「やはりか」
「どうしてリディさんがここに? だってロストと一緒にいるはずじゃ…」
「わからない。ただいえるのは暴走状態だっていうことだ」
リディの容姿に似た魔女は取り囲む帝国の兵士たちをものともせず追い払う。まるでお掃除しているみたいだ。
「帝国の奴ら歯が立たないもんですから、根を上げていますね」
「奴らも所詮は道具頼りだかな。素で戦う奴とは経験ないんだろうな」
一番偉そうな兵士を投げ捨てた。素手で掴み、相手の道具を全く受け付けないかのように壊すしぐさはもはや人間ではない。化け物の業だ。
「レイ、奴を足止めできるか?」
「騙せるだけ騙して見せます!」
「頼りにしているぞ」
レイは「はい」と元気よく返事をし、先に仕掛けた。師匠も煙人形を召喚し、レイのサポートに取り掛かった。
いつの時代になっても時は残酷だ。どんなにどんな状況でも笑顔で答えなくてはならない。そんな生活に嫌になったとき、世界が変わったような気がした。
必死のあまり落ち着いた顔を忘れた師匠の面を見る度に自分の力が未熟と思ってしまう。ナイフを握る力が増しても魔女を相手にして隙を見せても師匠はいつもと変わらない顔をしてくれない。
命とやり取りをする時の顔だ。
師匠がこんな真剣な顔をするのはいつ以来だろうか…ふと昔のことを思い出していた。
ナイフを握る力が弱まる。どんなに騙(見)せても、魔女は軽々に避ける。しかも騙すために用いた技も交わしてしまう。その鋭い判断力と洞察力はレイの力では及ばない。
「ぐはっ…」
視界が揺らいだ。腹に蹴りを入れられ五メートルほど吹き飛んだ。背中から地面へ倒れこみ師匠の「レイっ!」という言葉が消えそうなほど音が遠くに聞こえた。
「……っ」
頭が痛い。どうやら倒れたときに頭部にダメージを負ってしまったようだ。
「レイ! クソが」
魔女と師匠が戦っている最中、鏃が飛んでくる。帝国の兵士も負けじと戦っている。遠くからの援護だが、明らかに二人共ども打ち殺す気で攻撃してきているのが目に見える。
「……しぃ…そ…」
師匠…そう呼んだのを最後にきっちりと視界が真っ暗になった。
ゆらゆらと揺れるように川の流れに沿って体が移動している。まるでボートの上でぼーとしているような気分だった。真っ暗な空、真っ黒な川を見つめている自分がひとりぼっちでいる。
なにかすることもなければどうにかする気もない。ただ川の先にある出口に向かってただ何も考えずに待っていた。
「…ぃ……」
誰かに呼ばれたような気がした。けど、こんな真っ暗闇な世界で誰が呼ぶというのか。
「…レ……ィ…」
はっきりと聞こえた。知っている人の声だ。
川の水が深淵の闇に染まっていく。このまま船に乗っていたら危険だ。そう悟った時には川に飛び込んでいた。平泳ぎでもと来た道を戻る。この先に誰かが自分の名前を呼んでいる。誰かが自分に助けを呼んでいる。「レイ!」そうはっきりと聞こえたときレイは手を伸ばし、誰かに引っ張られ光の世界に包み込んだ。
「レイ! しっかりしろ」
師匠に抱きかかえられていた。
師匠が涙を浮かべながら心配そうな顔をしていた。
周囲を見渡すと景色が若干変わっていた。
郊外にいたはずが建物の壁が見える。
「し…しょう…?」
「このバカ。心配したんだぞ」
師匠は魔法道具で手当てをしていた。レイがいつも身に着けている治癒包帯だった。傷ついた個所に巻いていれば数日で治る不思議な治療用具だ。傷跡は残ってしまうが普通の包帯と比べれば治りが早い。
師匠に尋ねられた時「傷は早く治すべきです」と答えていた。
そんな記憶を思い出したながら師匠が必死で頭に包帯を巻いていた。
「……」
まだ喋れない。話したいことがあるのにはっきりと口にできない。声も力が入らない。
「今すぐ病院に連れて行くからな」
師匠に抱きかかえその場を後にしようとする。
レイは師匠の腕を強く握り退却することを反対した。
「レイ…?」
「……」
喋れないがレイの睨みつける瞳に炎が宿っているのが見えた。任務を放棄して逃げるのは魔法使いの恥だと昔、師匠が言っていたのを自分自身で悟っていた。
「わ、悪かった。すまん、動揺していたみたいだ」
師匠はレイを下ろし、魔女に向かってパイプを口にくわえた。
「仕事は最後までしなくちゃな。そのあと病院に連れていく。だから、それまで待ってろ!」
師匠はレイを置いて魔女の下へ向かった。
レイは師匠の心配しつつ無事で戻ってくるよう祈りながら眠りについた。
***
魔女がいる場所までおよそ19キロ離れている。魔女の威嚇が脅威でレイを遠くに離したのが正解だった。
現場に戻ってくる魔女は帝国の兵士たちを一人残らす殺してしまっていた。手足や頭がもぎれた兵士たちの欠片があたりを散らかし、地面が真っ赤に染まっていた。
「なんということだ」
魔女は両目を包帯で隠しながら誰かを探しているようだった。容姿はリディそっくりだ。髪色も髪型も輪郭も服装も体格もすべて瓜二つ。
あのリディがどうしてこんな離れた場所にいて、なおかつロストと別行動しているのか気がかりだった。
「本当はあんたとやりたくなかったんですがね。これも縁でしょうか。いや、縁でしたらこんな不条理なことは起きないですよね」
パイプの煙を大きく吸い、吐いた。
〈赤色の煙(ピース・ワン)〉
赤い煙を吐いた。数体の人形体が形成し、魔女を囲んだ。赤い煙の人形たちは両手から炎が噴き出た。
「これはですね〈赤色の煙(ピース・ワン)〉という技なんでさ。魔法とは違い、あなたが知る魔法の辞書にはないでしょう。魔法道具であるこのパイプで吹いた煙はみな、色を持つ性質がある。色に応じて属性をもち、そして攻撃する。あんたの弱点…洗いざらいに見せましょうか」
煙人形たちは一斉に魔女を火炎放射のように焼き払った。熱する炎の熱さは想像以上です。アスファルトがチョコレートのように溶け、倒れた兵士たちの血や肉が一気に溶けてしまうほど高温。こんなの普通の人間では一瞬にしてお陀仏だ。
スラっと赤い煙人形たちが胴体を真っ二つにされた。
「やはりあんたは強いな」
囲んでいた煙人形たちが消滅させられ、パイプからさらに煙人形を召喚した。
「隙を与えてはいけない。これがあんたに勝つか負けるかの勝敗なんでさ」
〈青色の煙(ピース・ツー)〉、〈黄色の煙(ピース・スリー)〉。どちらも〈赤色の煙(ピース・ワン)〉と同じ能力を持った相手だ。
青色は氷属性を司り、黄色は雷属性を司る。青色は触れれば凍結、黄色は感電。どれも触れれば命取りだ。
「あんたの本気を見ずに倒さなくちゃいけない。なにせ、俺の切り札はもう使い切っちまったからな」
遠くに倒れているレイを尻目で見守る。レイが師匠にとって最後の切り札。今はもう動けないからさっさと病院に連れて行かないといけない。だから、さっさと片付けるほかない。
「――!?」
またもや攻撃中に真っ二つにされてしまう。
「あんたズルいよ。そんなすごい魔法を持っていながらも拳で倒してきたのかよ。ハッ…そういうのを出し惜しみっていうんですよ」
師匠は前のめりで倒れこんだ。予想以上に強い相手だった。やはり、魔女は捕獲するこそ無理な話だった――。
「!!?」
視界から師匠が消え、死体も消えた。
まるで今起きていたことが幻だったみたいだ。
「ドコニイル? バカナ…キエタ、ダト?」
リディとは思えない枯れた声だ。いったい何が起きたのかさっぱりわからない。
建物の影に隠れながら師匠とレイは様子を見ていた。レイも師匠も傷一つ負っていなかった。
「やりましたね師匠」
「ああ、間一髪だったがな」
あのとき、ナイフですでに初手の攻撃で幻覚魔法を与えていた。倒れこんだ奴は帝国の兵士でそのあと煙人形も帝国の兵士を化かしたものだった。
魔法と言っておけば、魔女はこう信じる。帝国の兵士と人形が同じなわけないと。帝国の兵士の残骸も幻覚に応じて作られたもの。暑くて溶けそうになったのもすべて魔女に与えた精神的ダメージに過ぎなかったこと。
すべては魔女の想像世界で体験していたことだけだ。
「帝国のみなさん…お大事に」
「彼らのおかげでどうにかできたんだ。それに、幻覚が起きているとはいえ、奴らは容赦なく仲間にも攻撃していたから。正直、敵味方を区別していなかったようだな」
鉄砲や鏃で攻撃した際彼らは躊躇しなかった。初めから仲間を見捨てる気で攻撃してきていた。先手を打って攻撃した以降は帝国の兵士を身代わりとして姿を変えて得ていたが、やはり噂は噂だけだったようだ。
「それでどうします? この後は――」
「リディを覚める方法でいこう」
意外な提案にレイは返した。
「と、いうと」
「ロストのことを思い出させるんだ。あれは何かしらの催眠術に掛けられたようだ。しきりに誰かを探しているが、肝心な相手を覚えてもいないだろう。それに、あの両目を縛った包帯が気になる」
こういう時の師匠はまるで探偵のようだ。洞察力が鋭くなる。
「わかりましたよ師匠。ぼくが創りますから、その間に揺さぶりをかけてください」
「おうセリフは十八番だからな」
幻覚に包まれたリディの目の前にロストが姿を現した。レイが幻影で作った偽物だが本物そっくりであることは間違いはない。
レイの魔法はナイフそのものに宿してある。〈精神系〉の魔法道具だ。ナイフに魔力を注ぐことで道具は本来の力を開眼する。
ナイフで切った相手を精神世界へ誘うことができる。無機物では効かないが、有機物や意思を乗っ取った相手の精神を奪うなど多様な力を発揮する。
一度でも切った相手が近く(最大20キロメートル)に降りレイが眠っていなかった場合、効果は継続される。本人が一度でも寝てしまうとリセットされる。
切られた相手は幻覚を見るようになり、本人の意思で幻覚を解くことはできない。レイが指導権を握り相手を翻弄することができる。実質無敵に近い業である。
ただ、対象者が最大三人までであることと複数体に分裂するタイプには効かないため複数人と戦う際はどうしても不向きになる。
レイは相手と戦う際は複数体揃わないよう距離を取り、相手の位置を把握してから操作するよう心がけている。
「ロ…スト…?」
気づいたようだ。ロストの姿を模せた師匠が立っている。リディにとってロストに見えるが、レイから見れば師匠が立っているに過ぎない。師匠はロストが言うであろうセリフを吐く。
「リディ、ここにいたの? すごく探したよ」
「ワタシハ…イッタイ…ナニヲ…?」
「リディ、ここは夢の世界なんだ。言っていること意味が分からない事かもしれない。けれど俺は本当はここにいないんだ」
師匠…何を言って…?
「ナニヲイッテイルンダ?」
「リディ。俺は今も迷っている。もし、聞こえていたら返事してほしい。俺は本当に君のことを気にかけてもいいのだろうか? いま見えていることが本当なのかどうか怪しいんだ。リディ、本当に一緒についていってもいいのか」
当の本人も相当悩んでいた。
一緒についていっていいのかをキーワードにして揺さぶりをかけてみる。本人は言っていないかもしれないけど、ここではっきりさせてしまったほうが当人たちはいい機会かもしれん。
「イッショニキテホシイ。ダッテ…ワタシヲカイホウシテクレタ。ワタシヲコノバショニ、ヨンデクレタ。ワタシニトッテ、ハジメテデキタ”アイボウ”ダカラ」
リディは涙を流した。ぺらりと包帯が解け、目の前に現れたのが師匠であることを目の当たりにし悲鳴をあげた。
師匠は両耳を押さえることなくリディに飛び込み、現状を耳元で報告した。
”東の魔女が暴れている。それが君自身だ。ロストはどうなったのかはわからない。ただいえることは、君らはだれかに嵌められたということだ”と、師匠は話していた。
建物の影から姿を現し、もう大丈夫だと判断した。
師匠がこっちへこいと合図を送ったのを見計らい、急いで師匠の下へ駆けつけた。
到着すると師匠はリディから剥がれ落ちた包帯を眺めていた。
「師匠ォ!」
「やはりか…」
師匠は意味深に唇を摘まんだ。
「リディを魔女に仕立て上げ、ここに放置した輩がいる。しかもこんな行動な術式は初めて見る。おそらくここに魔女の放置させることで得する奴がいる。しかも、魔女相手に洗脳するとは…敵は恐ろしい相手かもしれん」
パチパチと誰かが拍手をした。
ハッと振り返るとそこに立っていたのは20代の男だった。青い逆立つ髪が特徴だ。服装からして帝国のものだが、そこら辺にいる一般の兵士よりはさらに上の階級と思わしき紋章を胸に刻まれていた。
「ご苦労様。”冒険者組合”のお仲間たち」
嫌味な顔を浮かべていた。
「お前はフォルン! どうしてここに…!?」
師匠は知っていた。以前の仕事の関係で一緒になったことがある若くチャラい男がいたと。そいつの名はフォルン。帝国のエリートの所属する人物で、”冒険者組合”に所属した理由は「暇つぶし」と答えていた人物だ。
「久しぶり元気だったー?」
「”冒険者組合”からは応援要請はなかったはずだが…」
「そうだねー表向きはね。実はね裏ではすでに動いていたんだよ。1000年前の魔女が生きていたと、”冒険者組合”から直接依頼があったんだ。それを調べて冒険者組合に依頼して君らを呼んだってわけさ」
すべては糸を張り巡らされていたということだ。
「じゃあ、リディを洗脳したのも」
「オレッチじゃないよ。ルーリックの奴だ。あいつは俺よりも機敏で器用だからね。魔女を”上書きで書き換える”のは簡単だったよって言っていたよ。けど、来てみれば洗脳は浅かった。仲間が皆殺しになっただけで成果はなにひとつなかったよ」
フォルンは偉そうに喋ってくるが、師匠は動こうとはしない。こんな奴、師匠なら一発KOするのに。
「なにが目的なんだ!?」
「…魔女を捕獲に成功したことも加えてみっつ教えてやるよ」
「みっつ?」
「そう。ひとつは”戦争を仕掛ける事”。北東に位置する帝国はさっさと二つの島を制圧したいのさ。古臭い魔法を主軸とした北の大陸と魔法道具を主軸とした東の大陸をまとめ上げ、大きな国を作るのが我ら次期王の考えなのさ」
「そんなバカな話があるのか…?」
フォルンは顔を近づけこう続けた。
「あるんだよ。現にこの作戦のためにすでに三人の魔女を捕獲済みだ。その子をせて四人目だけどね」
カカカと笑った。
「ふたつめは”魔女が1000年の眠りから覚めた”ことだ。そこにいる魔女は1000年前の魔女そっくりだ。瓜二つじゃない。魔力もこの大地の荒ぐらいを見ても辻褄があう」
「みっつめは?」
「せっかちだね。ぼくはね嫌いなんだよねそういうタイプは!」
師匠を蹴り飛ばした。
「師匠!」
「レイくんだっけ。そいつ止めた方がいいよ。なにせ”元死刑囚”だからね」
「なにをいって…」
「総入れ替えだ。みっつめは”そいつ(師匠)の正体”だ」
倒れた師匠が「聞くな」とか弱い声で吠える。
「10年前ぐらいだっけ。まだ”冒険者組合”が大規模だったときの話だ。まだ組員が1000人を超えていたとき、そいつは”腕試し”ならぬ”道場破り”で各地の冒険者組合を潰していたんだ」
「…やめろ」
「それで怒った冒険者組合は人を呼んで、討伐に向かうも――全滅」
「やめろって」
「力も信頼もなくした冒険者組合はすっかり小規模となってしまった。いまじゃ、金に困ったやつか昔からの古参しか残っていないほど落ちこぼれてしまった」
「やめろって言っているだろ!!」
師匠が叫んだ。
「うるせーな。まあ、そういうことだ。そいつ(師匠)についていくっということはレイくんも”罪人の棺桶”を背負っているもんだぞ」
フォルンはそう語るなりカカカっと高笑いした。
悔しそうにする師匠を前にレイはそっと尋ねた。
「嘘ですよね、師匠…?」
師匠ははっきりと答えてくれた。
「嘘じゃない。事実だ」
「……」
信じていたのに。裏切られた気持ちだ。こんな慕っていた奴が犯罪者だったなんて…こんなのうそつきだ。
フォルンに睨むなり、ナイフを片手に振り回した。
「うおっ」と反射的に避け、フォルンは宙を舞った。
「もし、居場所がなくなったら来てね。大歓迎だからー」
そう言って煙のように消えてしまった。
残されたリディは力なく正座したままで、レイは師匠を睨みつけていた。
「師匠…俺はどうすれば…」
師匠は頭を上げた。
「ついてこいと言いたいが、俺の真実を知ったらお前は幻滅するだろうな。笑えない話だな。昔の好がまさか裏切るとは思いもしなかったなー」
師匠は顔を半分抑えて半笑いしていた。
「…師匠。俺はあんたがどんな人間だろうと関係ねぇ。だが、これだけは言える。あいつが何を知ろうと俺は知ったことじゃない。ましてや、師匠の中身を知れた。俺は嬉しいんだ。師匠がいつもなにかを隠していた。それがなになのかわからなくて不安だった。フォルンとかいう奴のおかげで心のトゲが落ちた気分だ」
師匠は笑いを止め、レイに寄り添った。師匠はレイの肩を軽く叩きながらこう答えた。
「この先もっとつらくなるぞ。それでもいいのか?」
この問いにレイは答える。
「もちろんさ。俺の師匠はあんたしかいないからな」
互いに抱きかかえあう二人を差し置いてリディは「ロストと会いに行く」と言い残し、転送魔法で移動してしまった。
ロストがどこにいるのか見当ついているのかリディが向かったのはここから南に下った先にあるゴロツキの集落だった。
レイたちは、”冒険者組合”から脱退したのはそれから一週間後だった。レイたちは西の大陸に一足先に向かった。おせっかいなフォルンから教えてもらった”戦争”の情報を西大陸の王に伝えるために。
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