08.冒険者組合からの依頼
冒険者組合から三通の手紙が送り届けられた。
伝書鳩の足に括り付けられていたメモリカードから詳しい依頼の内容が記載されていた。やや古臭い方法で依頼指示が送られてくるが、これは冒険者組合ならではの昔からのやり方だ。
リディとユーリと共に依頼書を閲覧するとそれぞれ場所は違うが、ロストたちがいま欲しい情報らしきものが書かれていた。
一通目、東大陸による泉を調べる事。何人かの魔法使いが行方不明になっている。泉の源泉地はかつて”月の瞳”を所有する者が亡くなったとされている。”月の瞳”を探しに来た者たちがその泉で行方不明になっていることから、なにかしらの因果関係があるかもしれない。
二通目、東大陸にて魔女が出現した。魔女は”月の瞳”を探しているようで、人の眼球を摘まんでは呑み込んでいるという。その魔女を討伐・捕獲するため多くの冒険者たちを派遣したが、いまだに対象を発見できていない。
三通目、古の時代にて、五本の指に入る秘宝が発見されたが、何者かの妨害により秘宝を奪われた。その秘宝を奪還せよ。およそ800年前にかの魔女が託したとされる”みっつの鍵”の可能性がある。
とのことだ。
どれも信憑性があり、どれも魅力的な情報源だ。ただ、情報源はすべて東の大陸に示しており、東の大陸へ向かう必要があるということは念に置いておく必要がある。
「東の大陸…か」
ロストは難しそうな顔をした。
「行ったことがあるの?」
ユーリに訊かれ、ロストは答えた。
「一度だけね。父の仕事で一度だけ引っ越ししたことがある。芸術というか、変わった場所だよ。なんというか、北の大陸と比べるとみんな個性的と言うか歴史を尊重しているというか…」
「つまり、北の大陸(ココ)にはないものがある」
「リディはなにかご存じないでしょうか」
「うーん…東の大陸に行ったのは昔のことだし、今とは地形も雰囲気も文化も違う。参考にはならないかなー」
依頼書から見ればどれも魅力あふれる案件だが、危険なことであることは変わらない。もし、この案件のどれかがあたりでどれかが失敗だったら、それだけの苦労と時間が失われるかもしれない。後ろめく考えがちらつく。
「どうします? 私は賛成です。なにせ、師匠曰く”知らない魔法が多い”と聞く国です。噂によれば、”魔法が使えない人でも魔法が使えるようになる”と」
チラリとロストを見つめる。好感持っての発言のようだ。
「…リディはどうかな」
ユーリのことを差し置いて、意見をリディに託すロストにユーリは心の底からいらだちが沸き上がる。
チッと口打ちした。
ロストが慌てて振り返り、ユーリは口を押えていた。
「ごめんなさい」
謝る上で、なぜ舌打ちしてしまったのか自分を悔いた。
思わずだった。普段ならこんなことをしない。プライドが許さない。なぜ自分がそんなことをしてしまったのか胸に手を置く。激しく揺れる鼓動は今までにない感情が沸き上がっていると感じさせるには十分だった。
二人の様子を見ていたリディは間をおいてから、『恋をしている』と発言せず「私はもう決まっている。ロスト、君がしたい方を選ぶべきだ。私は私自身の目的のために行動しているし、ロストも自分がしたいことを目的に行動している。これ以上この大陸で調べることがないのなら、新天地へ目指してもいいと、私は思っている」とユーリにウィンクした。
ユーリはハッとして「リディさんもそう言っていますし、ねえ」と追い打ちをかけた。これ以上ここで話しをしていると普段の自分にいられなくなると焦りを募らせていた。
「二人ともそういうのなら、そうしよう」
リディは謎のガッツポーズをとり、ユーリは謎の笑顔をしていた。
二人の言動が怪しすぎるとロストは不安になることだった。
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