02.少年と魔女
少年は小さいころから魔法の才能はなかった。
学校でもひとりぼっちで、周りの子はひとつは魔法が使えていた。
(ぼくにもできるかな…)
そんな不安を抱えながら学校を過ごしていた。
あるとき、医者から診察しないかどうか紹介され、魔力検査をしてみたところ、魔力は普通の人よりも多く、噴水のようにあふれるほどだったという。
しかし、その魔力を使って魔法が使えるほど柔な体ではないことを伝えられる。少年の身体は生まれながら魔力は人並み以上持ち、その魔力の貯蓄は大人の三倍の量を誇る。
魔力も泉の如く湧き続け、衰える気配さえもない。
「先生! この子は魔法が使えるのようになるんですか!?」
親が先生に問うと、先生は頭を左右に振った。
絶望というべきか、世の中を支配しているのは魔法だ。その魔法が使えないのなら、この世界で生きていくのはあまりにも過酷で辛い人生であることは子供ながら少年は理解できた。
少年は己に課せられた人生という地獄を変えるため、一流の教師から塾、特別支援学校に通ったが、結局使えた試しはなかった。
ある日、街の中心核の酒場に寄った。
12才だった少年は、酒を飲むことはできないが、酒場でしか手に入らないフルーツエキスや子供用のエールなどは飲むことができたので、胡散晴らしでここに来るようになっていた。
酒場で偶然にも聞いた話だ。
「1000年前、突如と消えたとされる城が発見されたんだと」
「ほう、世紀の大発見じゃねーか」
冒険家と思われる男二人が対話していた。
男はガラが悪そうで相手にしないほうが得策。だが、少年は自信が魔法が使えないことに苦痛に感じていた。
男らの会話の中で、”魔女”と単語を聞いたとき、いてもたってもいられなくなった。魔女ならこの身体の秘密を知っているかもしれない。魔法のことならなんでも知っているのかもしれない。
「おい!」
自然と声が出ていた。
ガラが悪い男らに向かって少年は尋ねた。
「その場所を教えろ」
――男らの情報を頼りに目的地の場所まで辿り着けたわけじゃなかった。仲介人や城のことに詳しい人、地理や文化などあらゆる面で長けている人などあたり、ようやく半年かけてその城を拝むことができた。
発見されて半年以上は経過しているだけあって、城の中はもぬけの殻。以前は装飾や宝石、家具などがあったのだろうか、物はすでに盗賊や冒険者によって持ち出された後だった。
商人からもらった写真からは黄金のように輝いている城が写っていたが、悪い人たちの手によって当時の面影はもはや失っていた。
それでも、魔女の噂を信じて、少年は城の中へ入った。
中は、鬱蒼としており、人気すらなくあるのは、自分という存在だけだった。
「一人っ子いない…まるで歓迎されているみたいだ」
少年が一歩一歩進むたびに灯りが転倒し、崩れていた床下は何事もなかったかのように復元され、崩壊していた壁はきれいに元通りになっていた。
何者かに案内されている。身の安全を心配してくれている。そんな怪しげで不安な存在が身近にいるような気がしながら奥へ向かった。
結界が張り巡らされていた部屋は指で横に引くだけで簡単に壊れた。糸を引っ張るかのように罠は無造作に崩れ去った。
奥に進み、ようやく隠し通路を発見し、奥へ進むと錠につながれた少女を発見できた。
魔女と初めて出会い、少年は前にも同じように合ったことがあるような気がしていた。けど、思い出すことはできない。それはなぜなのか自分に問いながらその答えを探るがまったく答えが見つからなかった。
魔女が振り返り、左目のことを告げた。
やはりという答えだった。左目がすべての原因。あふれる魔力は左目が常に周りの魔力を吸収しているから。左目は魔力を放出させないためにダムのような役割を果たしているから魔法が使えない。
以前、医者に言われたことだ。
その医者は左目を欲しがっていたが、その日のうちに何者かによって殺されている。少年もそのときに命を狙われている。
魔法が使えない子供が、ただ魔力だけを持っている――と。
そんな怖い記憶がいまも眠っていても思い出すほどだ。左目は呪い。呪われている。少年は左目を隠すようにして、片目だけで過ごすようにした。両親が殺されるまで、ずっと左目を隠し、魔女を見つけるまでは秘密にしていた。
魔女と出会って、左目の秘密を明かされ、少し心が柔いだ。まるで心のトゲを外してもらったかのようだった。
魔女は”魔物を封印するために魔力を失ってしまっている”と、”左目からあふれる体液をもらうことで魔力を回復する”とすべては左目が重要だと示している。
取引後、少年と魔女とつながっているのは”左目”だけである。”左目”が解決次第で、この取引は終了する。つまり、少年と魔女の関係はこの先はなくなるということだ。
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