第3話 仮説

「これがお前の姿だよ、んでもって軽くお前について教えて欲し…」

「はかせを…みなかったか」

「…ここにはお前一人だったぞ?」

「ん…」


伝え方が悪かったか。

唯一残っていた写真立てを指さす。


「ん?あぁ、あれ博士なのか。」


だいぶこの体にも慣れた、直ぐにここを離れるか。

と、思った矢先。


「待て、お前は魔獣だったのか?」

「そうだ」

「そこからその姿に?」

「だとりかいしているが。」

「何言ってるか分からないかもしれないが、姿を得た魔獣から人になるなんて普通はねえ事なんだ、考えられるのは2つ、本当に奇跡が起こって人間になれたか、人間の形を記憶したかだ」

「なにを」

「魔獣は、魔物とは違う。捕食対象の姿を得てようやく形が出来る。俺がここへ来た時は、あらゆる魔物が合わさったハイブリッドだった。」

「やめろ」ききたくない「そんなことはない」あってはいけない

「…酷だが言わせてもらう、あくまで過程だがお前達は襲撃を受けたんじゃないか?そこで瀕死になった博士、丸一日を要する眠りにつく程、力を使わなければならなかったお前さん。おそらくその時に。」


嫌だ。


「博士を喰らった」


私は嗚咽とともに咽び泣いていた。

博士、会いたいよ。

二度と叶わない願い、自分が“その人”。


魔獣は心を持たない、故に捕食対象を模倣する。

…人の心なんて要らない…こんなに悲しい気持ちになるならいらない…要らない…


「お前は自慢の“家族”だよ…だからお前は生きろ…私を喰らって…人として…」


最期の瞬間の言葉が脳裏を過った。


「わたし、いきるよ」

「あぁ、その意気だ」





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一匹の魔獣と孤独な博士 @sakuteru

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